〜日々是煩悩〜

上の方が日付新しいです。H19年1月1日より。
感想は、思いっきり原作のネタバレなので注意。
更新分は
太字・水色で表記。

H18年4月9日より7月18日までの日記 (注:7月19日から10月22日までの日記はなし)
H18年10月23日より12月31日までの日記 H19年1月1日より2月28日までの日記
H19年3月1日より4月30日までの日記 H19年5月1日より6月30日までの日記
H19年7月1日より8月31日までの日記 H19年9月1日より10月16日までの日記
目次


H19年10月17日

えーと、『夢の守り手』のネタ、ふくらませてるつもりで、
別の影香ネタを妄想してぐふぐふしていた本日です。
あやしい……(汗)

しかし、私、本当に影香好きだよなー。
もっとも、うちにお越しの方なら、
それはもはや『想月楼』的大前提とご理解いただいているかと。
うん。うち、影香サイトだもん。
愛は一筋、愛それは妄想……。

つーわけで『夢の守り手』は進んでません(きっぱり)!
そのかわりと言ってはなんですが、
数日前から言っていたオールキャラ・ハロウィン仮装話を進めてみたいと思います。
いきあたりばったりのくせに、先のことほとんど考えてないのに、
日記で連載しようだなんて、一体どこの考え無しかとも思います。
オチなくても許していただけると嬉しいです。

ちなみに二部作で、第一部貴陽編、第二部琥l編。
ええ。
たとえオールキャラギャグだろうが、力技で最後は影香に持ち込む気、満々です。
影香サイトのオールキャラものなんてそんなものと諦めてください。

そして、思いっきりどうでもいいタイトルつけてしまいました。
「また南瓜?」
はい、また南瓜、まだ南瓜です。
もう南瓜に呪われてるのかもしれません。
各章のタイトルも適当につけます。
あ、琥l編は一応関連してるけど独立した話になるはずですんで、
書き下ろしにしちゃうかもしれません。
何しろ、王都にいるメンバーの方が多いんだもん。
たぶん、かなりこっちに時間食われるかと。
まあ、言うほど先は考えてませんが。

後、注意書きですが。
時期は上治四年の秋。だってハロウィンだから。
メンバーは『白虹は天をめざす』にまで出てくるキャラの予定で、
つまり、タンタンはまだ貴陽にいて御史台にいるということでひとつ。
で、うちの話ですから、燕青は強制的に琥lにおります。


『君知るや南瓜の国』 第一部:貴陽編

序章:星は知っている

「むむっ!この星廻りはよろしくない!このままでは主上の治世に禍いをもたらしますぞ」
 仙洞省令尹、羽羽は夜空を見上げて激しく動揺した。たった今読み取った星の知らせはあまりにも恐ろしいものだったのだ。
「一体どうすればよいものか……。ここは霄殿に相談するのが一番か」
 しばし熟考した羽羽は、もふもふと真っ白な髪と髭をなびかせてかつて宰相であった霄の元へと走り出す。
 満天の昊は人の思惑を知ってか知らずかただ無数の光を瞬かせていた。

第一章:天知る地知る我は知らず

 途中、仙洞省長官に拾われおぶさって、羽羽は霄太師を訪ねた。

「霄殿、どうかお知恵をお貸しくだされ!」
「おや、これは仙洞省の長官と令尹お揃いで」
 振り返った霄はふたりに席を勧める。
「ああ、長官には酒は早いですか。茶は……さて、どこにしまったかな」
「この室で何十年と茶を見たことなぞないぞ」
 手酌で飲み続けている宋太傳の姿もそこにあった。
「いや、俺は羽羽を送ってきただけだから」
 リオウは手を振って一人退出しようとしたが、羽羽の言葉に足を止めた。
「今宵の星によくない卦が出ております。このまま放っておけば主上の御世に翳りがもたらされます!」
「羽羽、今夜の星は……」
 リオウの声はしかし、必死な令尹の声にかき消される。
「一大事にございます!」
「どんな卦が出たか知らんが、劉坊はそんなに柔にゃ鍛えてないぞ」
 宋が口を挟むとすかさず霄が混ぜっ返す。
「身体はともかく、中身はまだまだ柔じゃな」
「それは否定せん。そのあたりはどうせお前が色々ちょっかい出すんだろ」

 三師のうちの二人にここまで言われる劉輝もどうなのだとか思いつつ、リオウはそっと室を去った。
(羽羽は何を読み取ったんだ?)
 自分が仙洞省の長官というのは、あの父の一種の戯れにすぎない。だからあえて余計な口を挟むまいとの考えだったのだが、リオウは後に己の行動を深く悔やむこととなる。

「ともかく、一大事なのですぞ!」
 少しも本気に取った様子のない二人に、焦れた羽羽は再度叫んだ。
「それで、羽羽殿は一体何を読まれたのかな?」
 一見丁重に、しかし付き合いの長い宋から見れば明らかに面倒くさそうに霄は問い返した。
「このまま何も手を打たなければ。今月も終わる頃、世にも怖ろしいものが来襲いたします!」
「そらまた急な話だな。これまでそういった報告はなかったと思うが」
 元来武人とはいえ、政治の中枢に関わってきた宋も情報の大切さは熟知している。ましてや後一月も猶予がないのであれば、報告を怠ったと仙洞省の責任も問われるであろう。
「大変お恥ずかしながら、結果を読み取ったのが今夜なれば」
 しおしおと羽羽がうなだれると、なんだか自分がいじめたようで宋は居心地が悪くなる。傍らの霄をつついて何か言えと合図する。
「羽羽殿。具体的にどのようなものが現れるというんですかな」
 渋々といった様子で霄が訊ねると、羽羽は重々しく告げた。
「このままでは……。我らが彩雲国に恐怖の南瓜大王が降臨いたしまする」

(つづく)



じじいだらけの三者会談(?)はもう少しだけ続きます。
で、次回はもう少し若手(?)が登場予定。
しかし、うっかりこんな風に書き始めたけど、これってものすごく書きにくい(汗)
ちなみに、ギャグですから。
ええ、ギャグのつもりです、本人的には。
ところで。
途中で挫折しても許されるものでしょうか……。
だいたい、連載したことすらないんですよ、私。
しかも、プロットすら立ててないのに!
なんて大胆!なんて行き当たりばったり!
皆様の温かいお心、期待してもよろしいでしょうか……。


昨日の豆本(になるはずだった)、もういっそ、「影香童話集」にしてしまえと、
「ラプンツェル」も「白雪姫」もwordに流し込みました。
もうA6でもいい……。
ついでに他の童話も影香で書いちゃおうか、とかも目論み中。
一体、いつ話をひねり出すつもりだ、自分……。

肩はまだ治っておりません。
というか、これ、肩こりも混じってないか???


拍手ありがとうございます。
この船の行く先は五里霧中。されどおつきあいいただけると幸いです。

H19年10月18日

まず、「おばけかぼちゃのはなし」(今書いてる新作『夢の守り手』の作中童話)が
ようやくクライマックス(?)です。
なんかたくさん書いてる気がするのに進まないなー?
と思って書いた分を見直したら。
途中からどれだけ漢字を使っていいか考えるのがいやになって、
全文ひらがなだけで書いてたせいでした。
そりゃ字数は多いよね、うん。

あんまり時間がない(現在午前4時半)のですが、昨日の続きを少しだけ。


『君知るや南瓜の国』 第一部第一章:天知る地知る我知らず(つづき)

「はあっ!? かぼちゃ? だいおう? なんだそりゃ!?」
 宋は思わず大声で聞き返した。あまりにも荒唐無稽な組み合わせにしか感じられなかったからだ。彼の感覚は正しい。羽羽はしかし、あくまでも生真面目な態度をくずさない。
「わしの読み取ったのが『恐怖』『かぼちゃ』『大王』でしたから、そこから解釈いたしまして」
「『南瓜大王』ならば知っておりますぞ」
 突如、重々しい口調で霄が割って入る。
「さすが霄殿!博識であられる!」
「いやいや。これは我らが住む世界とは違う世界に伝わる話らしいのですがの。
 その異世界においてある秋の夜、大量に悪鬼が襲来するとか。それを統率するのがくだんの『南瓜大王』ということらしいですな」
 何やらもっともらしく聞こえることを淀みなく霄は並べ立てた。
「つまり、異世界からの悪鬼が『南瓜大王』と共にわが国を襲うと! ああ! 霄殿! 一体どう対処すればこの危機から救われましょう!?」
 素直に受け取った羽羽の顔色が髪と髭に埋まってよく見えないがどうやら青くなっているらしい。
「異世界のものは異世界の流儀にならうのが筋かと」
 誰もがその知恵を賞賛したかつての宰相はまるで現役に戻ったかのように頼り甲斐を見せた。
「と申されると?」
「『南瓜大王』率いる悪鬼の群れの襲来を防ぐべく、その世界の住人は、襲来の予想される日に、皆で悪鬼の扮装をするそうですの。もうこれだけの悪鬼が地上に降りているのだから、これ以上の襲来は必要なし、と思わせるためと、どこかで読んだ記憶がございますなあ」
 異世界のことまで詳しいとはさすが霄殿、相談しに参って正解であったと羽羽は手を打つ。
「なるほど!それではさっそく手配をせねば!まずは主上と悠舜殿に話を通さねば!」
 すぐに駆け出そうとした羽羽の衿を掴んで霄は留めた。
「主上にはわしから申しましょう。悠舜殿には羽羽殿からお願い申します。ただ、詳しいことをもう少しここで打ち合わせしておこうではありませんか。ささ、一献」

 途中からただ黙って酒を飲んでいた宋の目が、
(何企んでんだ、この野郎)
 と語っているのを綺麗に無視して霄は羽羽に更なる知恵をつけていったのだった。

(つづく)


第一章、終わりです。ああ、じじいしか書けなかった……。
ちなみに、語調など、後で訂正するかもしれません。確認してる時間ないです……。
次回、第二章:知るも知らぬも一蓮托生
でお会いしましょう!

H19年10月19日

泥縄で始めた日記連載ですが。
考えてるのは出すキャラの順番と章タイトルのみ。
しかし、誰か抜けてる気がするのよね。
とりあえず王都組、全キャラ制覇を目指します。
……出てくるだけのキャラもきっといます。

とか途中でうたた寝してたので、ちゃんと寝てから書きます。
そうだね。
今日は早番だったもんね。
眠いはずだわ。

おはようございます……。いきなり行きます。


『君知るや南瓜の国』 第一部第二章 知るも知らぬも一蓮托生

「……というわけですので、悠舜殿、何とぞご協力を!」
 執務室に現れた仙洞省令尹の姿はなんと癒されるのだろうと、尚書省尚書令は手振り身振り付きで熱弁する羽羽を眺めてそんなことを思っていた。
 時刻は明け方。昊の星はその姿を淡く消し始めている。果てしない業務に追われる宰相はもちろん、老齢の令尹もまた眠らずに朝を迎えていた。
 蓄積された疲労の中に映る羽羽の姿は目にやさしい。
 だが内容はすこぶる重大、かつ緊急。ただし常軌を逸していた。

「羽羽殿、お話はたしかに重要かとは思いますが、その対処法は私ですら困惑いたします。ましてや百官におきましては果たしてその意味を正しく理解し、協力してくれるとは思えないと正直申し上げましょう」
 悠舜の脳裏に、素直に従ってくれそうもない、しかも高位の男たちの顔が次々に浮かぶ。上司が従わなければ部下もまた従うまい。おまけに、当然のことながら各部署には温度差がある。宮中一斉実施は準備期間の短さともあいまって困難なことは容易に予想された。
「はい。これまでにはなかったことですから、皆、混乱いたすでしょう。ですが! 我らが彩雲国にみすみす悪鬼の襲来を招く事態は、どうあっても回避せねばならんのです!」
 これが兵を蓄えて随所に配置し、打って出ようとでもいう内容であれば、それでさえ反対する者もいようが、まだ理解はしやすい。相手の戦力も戦法も規模も、何もかも未知数であるならば回避は最良の策とはいえる。しかし……。
「羽羽殿。もちろん私は全面的に協力するとお約束はいたします。しかし、各部署への通達までには若干時間をいただきたい。ただ命を発しただけでは、意図する迎撃体勢は得られません」
「しかたがございません。この年寄りすら未だ困惑のただ中にございますれば」

 羽羽を見送って、悠舜は車椅子に身体を預けた。
「さて、どうしたものでしょう?」
 国試受験の際の同期たちは、まあ嫌な顔をしながらも協力はしてくれるだろう。軍もまた丸め込むことはできよう。難関は門下省、ならびに監察御史だ。これが前王の御世であれば鶴の一声で従わせることは可能であっただろうが、今の王では反発を招くばかり。
 深く考え込みながら、悠舜は車椅子を府庫の方角へと向けた。
「なんと厄介な事態を持ち込んでくれるのでしょう」
 その瞳は朝焼けの中薄れていく星をひたと見据えていた。


「早朝から失礼いたします。邵可様はおいでですか?」
「これは悠舜殿。多忙でいらっしゃるでしょうし、お呼びいただきましたらこちらからお邪魔しましたものを」
 府庫の主もまた泊り込みをしていたらしかった。溢れる本の山に囲まれて、悠舜はこの知恵の泉にのみ浸っていられればと憧憬を抱く。だがそんな日々は許されてはいない。
 首を振って悠舜は年長者への礼を取る。
「とんでもありません。若輩者ゆえ、邵可様のお知恵をお借りしたく参りました」
 目の前で父茶の湯気があがる。顔に出ないよう祈りながら口に含んだ悠舜は、この父茶の刺激こそが今は必要かもしれないと思いなおした。

 悠舜からの話を聞いて、邵可もまた考え込んだ。
(これは、あの狸爺が関与していそうだ。しかし、羽羽殿に悠舜殿、ひいては宮中すべてを巻き込むのであれば、事態は意外に深刻かもしれない)
 弟の友人でもある苦労性の宰相に向かって、邵可は柔和な笑顔を向けた。
「悠舜殿の懸念は、門下省、ひいては資蔭制出身貴族ですね」
「お恥ずかしい限りです」
 明言は避けたが、結局のところ悠舜の悩みはそこにあった。
「そう、旺季殿は根の真面目な方。下手に策を弄するよりも、羽羽殿から聞かれたことをそのまま口頭にて伝えられたほうがよろしいでしょう。旺季殿が動けば兵部も動きます。御史台もあるいは」

 いくつかのことをなお語り合って退出していく宰相の背中を見送りながら、邵可はできれば会いたくはない、しかし会わねばならない狸を探しに、やはり府庫から姿を消した。

(つづく)



すみません。多少年齢が下がったとはいえ、まだかなり平均年齢が高いです。あと一回はしかもまだ高いです。ごめんなさい。
次回、第三章:五十にして天命を知る場合
ああ、オヤジが続くー。
しつこいようですが、これはギャグです。
ギャグなんだよ、本当に……。


拍手ありがとうございます。
若手登場まではもうしばしお待ちください……。

H19年10月20日

ようやく『夢の守り手』の作中童話部分が書きあがりました。
やはりあまりにも読みにくいので文章のひらがなを漢字に戻したり。
書くのが結構面倒だったので、もういっそこれだけでもアップしちゃおうかと思いましたよ。
しませんけど。
でも、本編はこれからなのー。
ああやっと影香が書けるー♪


目次ページの「作中時期」に、二十四節気表記も合わせて記入してみました。
ちなみに、二十四節気の目安は目次ページの下の方にあります。
二十四節気をさらにそれぞれ五日ごとに分けた「七十二候」というのもあるのですが、
そこまでがんじがらめに決定するのもなー、と。
本当は「何月上旬」とか書きたいところなんですが、
彩雲国の暦が不明なだけに、二十四節気に頼ることにいたしました。
もっとも。
自分でもいちいち目安見ないとよくわかりません(爆)


ともかく、W南瓜をなんとか片付けるべく、今宵も奮闘してみたいと思います。


『君知るや南瓜の国』 第一部・第三章:五十にして天命を知る場合

 朝議の後、旺季が悠舜に呼び止められ、そのまま別室に行くのを兵部尚書は目にした。
 特に用事があったわけではないが、孫陵王は二人が出てくるのを室の前にて待つことにした。秋もいい具合に深まって、目前の王宮の庭院の木々も鮮やかに染まり始めている。常ならばゆっくり眺める暇もないのが惜しいくらいに見事だった。
 ほどなく二人が室から出て、陵王に気付いた。悠舜は軽く目線で挨拶をして杖をつきながらひとりその場を立ち去っていく。
「旺季」
 呼びかけると青い顔を門下省長官は上げる。重ねる年齢に隠されがちではあるが、若き日の美貌は今も見てとることができた。
「やっかいごとでも持ち込まれたか?」
 気軽な調子で話を振ってみても、旺季はなかなか乗ってこない。
 少々焦れてきた陵王がいっちょ旺季の口に持参の飴など放り込んでやろうかと考え始めた頃、ようやく旺季は重い口を開いた。
「緊急事態だ。陵王、室まで来てくれ」
 王家に、王位に近い場所で生きてきた男のその声に、陵王は逆らう気など微塵もなかった。
 その、内容を聞くまでは。

「正気か!?」
 詳細を気乗りしない表情で語った旺季に、陵王は真っ先にそう聞いた。
「残念ながら正気だ。悠舜と羽羽殿が夜が明けきる前に会っていたという報告は受けている。おそらく、そこには一片の偽りもなかろう。となれば、協力するしかあるまい」
 だが陵王は別のところに気を取られたようだ。
「働き者の宰相殿は夕べも帰らず徹夜で仕事か。たしか新婚、少なくとも結婚して一年くらいだろう。いっそ俺が奥方を慰めてさしあげ……」
「陵王」
「おっと、下世話に過ぎたかな」
 それには答えず旺季は呼び出しの鈴を降る。
「なんだ? 俺に相談せずに晏樹坊やにするというのか?」
「坊やはあんまりではありませんか、孫尚書」
 現れた門下省令尹は華やかな空気を撒き散らしながら、猫のようにするりと執務室に現れた。
「若く見えるって褒めてやったんだが。まあ、苦みばしった男の魅力は若作りよりも上だがな」
「おや、尚書はもうそんなにお年でしたか」
 気心がしれたようでいて、お互い探りあうばかりの会話は寒い。

 それを断ち切るように旺季は言い放った。
「晏樹。門下省の全官に通達を。我々は『みいらおとこ』なる部門を担うことになった」
 常に余裕のある態度を崩さない令尹の表情にさすがに懸念の色が浮かぶ。
「長官、おそれながら『みいらおとこ』とは?」
「異世界の悪鬼の一種であるらしい。ちなみに、六部は『きゅうけつき』らしいから、陵王もそのつもりでいるように」
 陵王が苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
「だから、見たこともないようなものにどうやってなれと……」
「後ほど、尚服官が各部署に現れて採寸を始めるそうだ。具体的な様相はその時に説明されるということだ」
 まだ不平をつぶやく兵部尚書を置いて、旺季は晏樹に事の説明を始めた。
 いわく。
 今月末日、異世界より悪鬼襲来の卦あり。ために、この事態を避けるべく、王宮中の人間が異世界の悪鬼の扮装をせねばならない。悪鬼には数種類あり、門下省は『みいらおとこ』を担当する。
「これは……皆、素直に従わないのでは?」
 晏樹の言に旺季は短く答えた。
「命令は絶対だと思い知らせろ。禄を食んでいるのは何のためだと思い出させるがいい」
「まあ、私は面白そうだと思うわけですが。……それで、『みいらおとこ』は長官もなさるのですか?」
「当然だ。上に立つ者が指針とならねばどうする」
「ああ。では門下省の官吏は全員長官と『お揃い』になるんですねえ」
 旺季の額に青筋が浮かぶのをながめて素早く晏樹は席を立った。
「それでは通達の文面を考えてまいりましょう」

 残された二人の男は晏樹の出て行った扉にしばし視線を向けたままだった。
「使える男だが、どうも調子が狂うな」
「お前も似たようなものだろう」
 切り捨てる旺季に不満を隠さない旧友に、仕方なく煙管を渡してやる。
「それはあんまりじゃないか?」
 煙管を取って、さもうまそうに吸い込みながら陵王は自分と晏樹の違いを並べ立て始めた。
 しかし、扉を見つめる旺季は少しも耳を貸さず、ただつぶやいた。
「このような事態を迎えるとは。これも天命だというのか」
 やはり現王の治世にこそ問題があるのではと言う言葉を飲み込んで。

(つづく)


初書きの人物ばかり続きます。
いやまあ、普段茶州しか書いてないせいもありますが。
やはり口調等は修正が必要かもしれません。
しかし、劉輝たちの敵となるかどうか定かでないメンバーだから(可能性は高いけど)
書きにくいことこの上もないですね。
いやまあ、私の読み取りと記憶力と腕が自慢できないのは熟知してますけど。

さて、次回登場は御史台の予定。
第四章:一を聞いて十を知れ
でお会いしましょう!
ようやく平均年齢がかなり下がる、はず。
というか、そろそろヒロインが出ないでどうするよ。
まあ、この話に明確な主人公はいないんですが。
あ、読みにくかったので段落の一字下げをすることにしました。
日記だからいいかとか最初は思ったんですが、意外に文章つめて書いてしまってるんで。

えーと、もうちょっと『夢の守り手』と戯れてから寝ます。

H19年10月21日

ああ、自分、とっても大馬鹿だと思います。
私が愛してやまなかった漫画があります。
かなりとち狂ってた漫画があります。
原作も終了して早数年。アニメも終わって早数年。
まあ、放送キー局の関係でアニメは見られず、
DVDもお金が続かずに買えなくなって早数年。
愛の記憶もあるのに、自然遠ざかっておりました。
けれど!
原作の雰囲気を崩さず、今も連載を続けている二次サイトさまを本日偶然に発見!
ノーマルでもBLでも溢れかえってるCPものじゃなくて、
本当に読みたかった一種の「つづき」を書いてらっしゃいました。
そう。私は原作のつづきが読みたかったのよ、心底。
夢中で、読破に3時間。
あまりの興奮に掲示板にも書き込みしてきましたが
(ああ!なぜメルフォがないのだ!長文感想送りたくてしかたないよ!)
まだ感動さめやらず、もうどうしていいか判らない午前3時半でございます。
……というわけで、少し頭を冷やしてきます。
切り替えないと今日の分なんて書けません。

1時間たちました。
なんとか切り替えに成功した模様。
なので、本日の分、いってみます。


『君知るや南瓜の国』第一部・第四章:一を聞いて十を知れ

「……というわけで、今月末、宮中を上げて異世界の悪鬼の扮装をすることになった。ちなみに我らが御史台の部門は『とうめいにんげん』とのことだ。尚服官が来るまでに各自考慮のこと。以上、解散」
 御史台長官、葵皇殻はそう言って集めた御史たちをさっさと退出するよう促した。
「長官!質問があります!」
 紅秀麗が手を上げると、皇殻は冷たい一瞥と共に短く言い切った。
「却下」
「なんですかそれ! だいたい『とうめいにんげん』って何ですか!? 人間が透明なわけないし、透明になれるはずもないじゃないですか!」
 秀麗は常に長官に食って掛かる毎日を過ごしている。これくらいではめげない。
「馬鹿はうちには必要ない。その証拠に、お前以外は納得してるようだが」
 秀麗が周囲を見回すと、そそくさと同僚たちは退出するところであった。
「頭があるなら使うことだ」

 室から追い出されてもなお、秀麗は長官室の前で抗議をしようとしていた。が。
「なんだ、あんなこともわからないのか。国試探花及第っていうのはただの身内のツテか」
 天敵の登場に秀麗は熱くなる。
「なによ! 実力に決まってるでしょ!」
 そうは言ったものの、目の前のこの罵っても罵っても飽き足りない男にはわかったのかと思うと、悔しさで脳みそも沸騰しそうだった。
「それじゃあ、よっぽどお前が受験した年は足りない奴ばっかりだったんだな」
 鼻で笑ってみせる陸清雅から漂う余裕が、尚更秀麗を逆上させる。
「実力だって言ってるでしょーっ! 第一、あんたに同期を馬鹿にされる謂れはないわ!」
「お前を見ていたらそうとしか思えないからそう言ったまでだ」
 清雅は秀麗を見下ろしながら唇を吊り上げる。
「教えてやろうか? 足りないお前にもわかるように?」
 優しそうな口調で毒の滴り落ちるような台詞が秀麗の耳に届く。
「誰があんたなんかに! 見てなさい! 立派な『とうめいにんげん』になってみせるわ!」
「負け犬の遠吠えか。見当違いして御史台の評判を落とすなよ?」
「だ・れ・が、負け犬よーっ!」
 楽しそうに笑いながら立ち去る清雅の背中に秀麗は呪詛をつぶやくしかなかった。

「悔しい! 悔しい! くやしいーっ」
 おなじみの布団簀巻きに足蹴り攻撃を繰り広げながらも、秀麗の怒りはおさまらない。
「あのさあ……」
 秀麗配下でもある榛蘇芳が遠慮がちに口を挟む。
「なによ! タンタンにはわかるの!?」
「わかるわけねーよ。あんたがわかんねえならさ。でも、他の御史にわかったんなら解決の糸口はちゃんとあるんじゃねーの?」
 蘇芳の言葉には耳を傾けた方がいいことは、これまでの経験で秀麗も熟知していた。
「うっ……。もう一度長官の言ったこと、思い出してみるわ」
「そーして? あんたがわかんねーと、俺もずっとわかんなくて、どんな扮装もできなくなるし」

「どんな扮装も……?」
 何かが秀麗の思考に引っかかる。
「それよ! 偉いわタンタン! そうだったのね!」
 いきなりの急転直下な反応に、蘇芳は椅子から落ちそうになった。
「そうか! そうよね! 私たち、御史なんだものね!」
「お、おう……」
「偉いわタンタン!さあ、いい時間だしお昼にしましょう。好きなだけ食べていいから」
 振り向くとすでに弁当を勝手に広げてつまんでいる人影が見えた。
「清雅ーーーーーっ! 何勝手に人のお弁当食べてるのよっ!」
 秀麗は慌てて弁当の重箱を取り上げる。
「心配して来てやったんだ。馬鹿なお前が間違った答えに辿り着くんじゃないかとな」
「余計なお世話よっ! この暇人! さっさと出て行って!」
 秀麗の手を掻い潜って、清雅はもうひとつ点心をつまみ上げてみせた。
「答え合わせ、してやろうか?」
 もう限界だった。
「出てけーーーーーっ!」
 秀麗に投げつけられた簀巻き布団をあっさりとよけて、ようやく清雅は室を出て行ったのだった。笑い声を響かせながら。

(つづく)


タイムアウトなので本日はここまで。
ああ、ようやく平均年齢が一挙にさがりましたよ(感涙)
しかし、秀麗、血管切れるんじゃないだろうか(苦笑)
清雅、書くの楽しいかもしれない……。
ちなみにタンタン、書くのすごい楽だー。
魂が近いのか?(笑)
さて、明日はまたこの第四章の続きからになります。

ところで今日。
どの部署にどの仮装をさせるか割り振っていて。
「えーと、六部でしょ、門下省でしょ、中書省に仙洞省でしょ。あとひとつが思い出せないーっ」
と苦悩してしまいました。
帰宅して調べて唖然。
自分、五省にしてどうすんだよ……。
史実上は三省、彩雲国では四省、それ以上はございません。

ちなみに昨日は
「吏部でしょ、戸部でしょ、工部に兵部、それから礼部。……あとひとつが思い出せないーっ」
と似たようなことで悩んでました。
まあ、こちらは原作に登場してないからねえ。
おかげで刑部は書かなくていいわけですが。

はい、この連載は部署ごとに話をすすめております。
お次はどこかお楽しみに?


とまあ、かなりそれなりにがんばって書いてはいるのですが。
もしかして影香単一CPサイトで、オールキャラ健全CPなし馬鹿話って、
もしかしなくても需要なかったりするんでしょうか。
いや、ここまで書いたら書きますけどね?
それとも、出だしがジジイ、次がオヤジ(悠舜、ごめん……)なのはやはり失敗だったかしら。
それでは5時半です。おやすみなさい。

H19年10月22日

うーんと、あまり日記のネタもないことですし、素直に連載の続きを書いてみようと思います。
毎回、書きながら考えてるのでこれ以上ないくらいライブでお届けしております。


『君知るや南瓜の国』第一部第四章:一を聞いて十を知れ(つづき)

「まったく! なんだってあの男はこっちの気に触ることばっかり言ったりしたりするのかしら!」
 ついには塩まで撒きだした秀麗に、あえて余計なことは言わないだけの分別は、あまり蘇芳にはなかった。何しろ、“考えてること垂れ流し”なのが彼である。
「愛されてんじゃねーの」
「いやっ! そんな不吉なこと言わないで! 憎まれてる方が千倍マシよ!」
 なげやりな蘇芳の言葉に本気で嫌がる秀麗の腕には鳥肌がたっていた。
「ま、どっちでもいいけど。と、お嬢さん、尚服官来たみたいだけどどうすんの?」
 蘇芳の声に振り返ってみれば、秀麗の怒りっぷりに怯えたのか、巻尺を手にした派手な服装の人物が入り口に立ち尽くしていた。
「……お騒がせしました」
「いえ……」
 秀麗と尚服官は微妙な位置と表情で固まっている。やれやれと蘇芳は口を挟む。
「さっさと何作ってもらうか言って、採寸してもらったら?でないとせっかくの弁当も食べられねーし」
「そ、そうね! えーと、私たちがお願いしたいのは――」

 尚服官を見送った後、弁当を包みなおして秀麗と蘇芳は冗官室への道を辿っていた。御史だということは口にできないが、元冗官仲間と過ごす時間は秀麗にとって気分転換の役割を果たしている。
「秀麗! 紅秀麗!」
 回廊でいきなり名前を呼ばれて秀麗は首を回した。
「まあ! 珀じゃないの! なんか久しぶりな気がするわ」
 書類を抱えた同期の珀明の姿に秀麗は顔を綻ばし、蘇芳に先に行ってくれるよう合図する。
「当たり前だ。だいたいお前が尋ねてこなければ僕にはお前の居所もわからないんだからな。第一、お前ときたら同期より冗官仲間の方が大事らしいし」
 御史であることを伏せているのだから、当然珀明には秀麗の仕事部屋も見つけられない。
「同期は大切よ。そんなこと当たり前じゃない。それに、前に珀、言ってくれたじゃない? 貴族のつながりをもっと知るように、って。あれ、本当に有意義な助言だったわ。ありがとう。そんな助言をくれるのも同期ならでこそよね。うちの上司や同僚にもそういう配慮が欲しいとこだわ」
「なんだ、苦労してるのか?」
 一瞬、長官や清雅への不満をぶちまけたい衝動に秀麗はかられた。正義感の強い珀明なら、きっと秀麗に同意してくれるだろう。だが、口になどできるわけがない。
「まあ、それなりには。でも、やりがいはね、あると思ってる」
「ならいいが、あまり無理はするな」
 進士時代も何くれとなくかばってくれた珀明の姿が今も重なる。あれから一年以上。珀明もまた、ぐっと大人びた表情を見せるようになった。
「ありがと。珀こそ大丈夫? 痩せたんじゃない? 吏部って殺人的に忙しいって言うし。誰か尚書に意見できる人はいないの? あんまりよね、仕事しない上司なんて最低だわ!」
「僕の方は大丈夫だ。まだ下っ端だが、忙しいということは色々な仕事を知って覚えるということでもある。それに、絳攸様が耐えてられるのに僕程度で弱音を吐くなどできるか」
 相変わらずの同期の絳攸崇拝ぶりに、秀麗は苦笑いを洩らす。
「……本当にあんたって絳攸様のこと好きよねー。それより。ねえ、吏部にも月末の通達って来た?」
 全部署に通達はなされているはずだから極秘でも何でもないのだが、つい声を潜めてしまうのはその内容の特異性だろうか。
「ああ。さっき尚服官も回ってきてたな」
「六部は『きゅうけつき』なのよね。珀、『きゅうけつき』ってなんだか知ってる?」
 先ほど尚服官に絵図を見せてもらったものの、どういった悪鬼だかの説明まではされてはいない。
「なんでも人間の生き血をすする悪鬼ということだが」
「ふーん? 蚊みたいよね」
「……」
 不快そうに眉をひそめた珀明の気分を少しでも良くしようと、秀麗は先ほど思ったことを口にした。
「あ、でも! 尚服官に見せてもらった悪鬼の絵図の中じゃ、一番かっこいいんじゃない?」
「やめてくれ。あんなものをかっこいいなどと認めたら、僕の審美眼が疑われる」
「そうかしら? どうせみんな悪鬼の格好するんだから、その中で一番かっこいいのが六部ってことなんだからいいんじゃない? おまけに珀ならちゃんと着こなせるんだろうし」
 なんと言っても珀明は碧家の出。例え悪鬼の扮装であったとしても、それなりのものにしてしまうはずだ。
「まあ、見苦しくならないように努力はするさ」
 秀麗が宮城で知っているのは御史仲間を除いてはやはり六部の人間が多い。あんな人物もこんな人物も『きゅうけつき』になるのかと思うと少し楽しい……かもしれなかった。
「あら? っていうことは、噂の仕事をしない最低の吏部尚書も、『きゅうけつき』のかっこうをするわけよね? ちょっと見てみたい気もするわ」
「それこそ悪鬼の親玉……」
 思わず声に出した珀明の後頭部に何かがぶつかった。
「鉄扇? どっから飛んできたのかしら」
 鉄扇を見た瞬間、珀明の顔から血の気が引いたが、彼はつとめてさりげなく発言する。
「……お前、冗官室で食事にするんだろう。そろそろ行った方がいい」
「ああそうよね! お昼食べる時間、なっくなっちゃうわ! それじゃ、珀、またね!」
 手を上げて挨拶しあって、秀麗は冗官室に向かい、珀明はすでにこの場を去ったらしい持ち主に、どうやって鉄扇を返すべきかと頭を悩ませた。

(つづく)


本来、次の第五章も書こうと思っていたのですが、気力切れです。
明日、気力を充填したら二章くらいいきたいと思います。
あ、『夢の守り手』優先かもですが。
ともかく明日は
第五章:衣食惑いて礼節を知らず
登場するのはさて?
しかし、今回、今までで一番若手揃い!
これ以上の若手は王都組にはいませんけどね。

しかし、これ書いてると「彩雲国的NGワード」に悩まされます。
ヒントだのコネだのアドバイスだのキャリアだの、使えない単語が一杯。

ともかくおやすみなさい。

H19年10月23日

うん、気がついたら中途半端なものばかり書き散らして1日が終わってしまいました。
まあいいや。
しかし、未だに左腕が痛いんですけどー。
シップはかぶれるので塗り薬に変更したものの、あまり効かない。
もういい加減にこの状態に飽きたよ。

それはともかく、時間もないことなので今日の連載、いってみましょう。

『君知るや南瓜の国』第一部・第五章:衣食惑いて礼節を知らず

「もういい加減に拗ねるのはやめたらどうですか?」
 側近のひとり、藍楸瑛は器用に入れた茶をそっと差し出す。
「あんまりそいつを甘やかすな」
 もう一人の側近、李絳攸が不機嫌に口をはさむ。
 ここは彩雲国の最高権力者、国王の執務室のはずだった。しかし、当の国王は机の下に潜り込んで既に一刻が過ぎようとしていた。
「また霄太師に何かかつがれたんですか?」
「それは、ないと思う。悠舜からも同じことを聞いたから」
 楸瑛からの茶を受け取りつつ、あくまでも机の下に居座る紫劉輝、二十一歳。
「うーん、おそろしいほど霄太師と悠舜殿への信頼感に差がありますねえ」
 いっそすがすがしいと呟く楸瑛に劉輝は反論を試みる。
「楸瑛もあの爺に十年以上ホラばかり吹き込まれれば余の気持ちもわかるのだ」
「そうは言うが、毎回いいように霄太師に乗せられているように思うのは俺の気のせいか? 少しは成長しろ」
 決済の必要な書類を積み上げながら絳攸は自分の分の茶を取り上げた。
「絳攸はいいのだ。『きゅうけつき』なのだろう?」
「『きゅうけつき』のどこがいいんだ、言ってみろ」
 すごむ絳攸に小さく劉輝が抵抗する。
「六部は皆、同じ『きゅうけつき』ではないか」
 それのどこがいいのかと不満気な絳攸の横で楽しそうに楸瑛が混ぜ返す。
「おや、私は妬いてはもらえないんですか?」
「そんなことはない。楸瑛だって羨ましい。武官は皆で『おおかみおとこ』なのだろう?」
 文官は部署ごとに分かれて担当を割り当てられてはいたが、武官はすべて一律で『おおかみおとこ』と定められた。これには体格差のある武人全員への装束を用意するのは困難という理由だ。彼らには耳と尻尾さえつけていればあとは自由となっている。
「わからん。『きゅうけつき』だろうが『おおかみおとこ』だろうが、どっちもくだらないのは同じだ」
 言い切る絳攸に劉輝は泣き言を続ける。
「だって、余はひとりきりなのだ。他は皆、部署ごとに同じ扮装をするのに、余だけは仲間がいない」
「それはまあ、あなたは王ですし、官吏でも武官でもありませんから」
 異世界からの脅威を十二分に説明され、武力で対抗しないことには同意した。扮装も、まあ皆でやるならと了承はしたものの、劉輝に割り当てられたのはたったひとりきりの『かぼちゃだいおう』であった。
「まあまあ。その日は験かつぎも兼ねて庖丁人が南瓜菜を用意するそうですし、少しは機嫌を直してください」
「『かぼちゃだいおう』が南瓜を食べると共食いにならないだろうか」
 甘いものが嫌いではない劉輝は南瓜が結構好きではあるが、ひとりきりの『かぼちゃだいおう』役がどうにも納得できないらしい。
「いつまで馬鹿なことばっかり言ってる! とっととそこから出て仕事をしろ!」
 焦れた絳攸は劉輝の袖を引っ張り、無理矢理机の下から引き出した。
「……絳攸、余は一応王なのだが」
「それがどうした」
 涙目で絳攸を見上げてみるが、男にそんな顔をされても心動かす気は起こらないものだ。
「王にはもう少し優しく接するものではないだろうか」
「馬鹿かお前は。尊敬できるところが見つかりもしない奴に優しく甘やかしてどうする!」
「優しくするのと甘やかすのは違うと思うのだ」
 年下のふたりの間に余裕を見せて楸瑛が割り込んだ。
「まあまあ主上。一応絳攸も執務室を出ればあなたに礼を取ってはいるのですから、この室内での絳攸の態度を取沙汰するのも今更でしょう」
「待て。それでは俺が礼儀を知らないように聞こえるが」
 標的を劉輝から楸瑛に変えて、絳攸が睨みつける。
「とんでもない。忌憚なく主上に意見できる人間は必要だろう。それに、私と君とで飴と鞭になっているから丁度いいんじゃないかい?」


とうとつですが(つづく)


本日は劉輝&双花。明日もこの続きの予定。
どうにも話がすすみません。
いや、本筋から離れた会話ならいくらでも書けるけど、そういうわけにもいきませんから。
今日はできれば第六章も書いてしまいたかったのに。
第六章は○○の予定ですが。
この調子で果たしてハロウィン当日までに完成するのかはなはだ疑問です。
登場人物のサルベージの関係で十二章くらいにはなるんじゃないかと思っています。
それにしても肩が痛い。
今夜は諦めて明日に期待することにします。

あ、『夢の守り手』は少しだけ書いてます。
ただ、なんとなく今私の頭の中が「影月君的ポエム」な様相を呈しておりまして。
……これ、何だよ。
書いてもいいけど後で削除だよな、とかとか。

ともかくおやすみなさい。
なんか起死回生のネタが夢で降ってきますように。

H19年10月24日

さあ書こう、何書くか決めてないけどともかく書こうと
しぶしぶ開いたPC画面。
逃避の果てに私が見たのは甘い睡魔でございました。
今日、早番だったけー。
しかも研修行って、思いっきり疲れたしな。

というわけで、25日の昼過ぎですが、泥縄で書き始める日記。
とりあえず途中まででもいいから書いてアップしようと決意。
でないといつまでもアップできないからねえ。



『君知るや南瓜の国』第一部・第五章:衣食惑いて礼節を知らず(つづき)


「飴……と言えば」
 ふいに劉輝が思い出したように口にした。
「孫尚書を思い出すのだが」
 滅多に執務室で話題になることのない人物の名に、側近二人は即座に反応を返した。
「ああ、兵部尚書の。個人的には面白い人物であるとは思いますが」
「おいっ! まさかお前、飴もらって食ったとか」
 考え込む楸瑛の隣で、絳攸が顔色を変えて劉輝に詰め寄る。
「なかなか美味しかったのだ」
 味を思い出したのか、ほころんだ顔の劉輝にどなりつける。
「阿呆! 何考えてる!」
「知らない人からはもらうなと言われているが、孫尚書は知らない人ではないぞ?」
 王が配下を知らないでは確かに話にもならないが、自衛せずどうすると絳攸はいきり立った。
「毒の疑いだってあるだろうが! あの男が誰とつながってるかわかりきってるだろう!」
「それほどあからさまな手を使うほど孫尚書は馬鹿ではない。余は……旺季も六人の尚書も実は結構好きだと思うのだ。だから、こちらから歩み寄れる点は近づきたい」
 この王は、ごく稀にではあるが、その懐の大きさを露呈する。
「そのお気持ちは大変結構かと存じますが」
「今は片思いばかりなのだ」
 少し悲しげに目を伏せる劉輝に、楸瑛は優しく微笑むと傍らの墨をとって磨り出してやる。
「そうですね。振り向いてもらうまでに時間はかかるかもしれませんが、ともかく主上には執務に戻っていただいて、その結果で彼らに判断してもらうのを待つしかないでしょう」
 楸瑛的に『弟にしたい』と思わせる国王は、こくりとひとつうなずくと自分から素直に書類に手を伸ばした。
「ともかく、とっとと仕事をしろ! この月末への対応がねじ込まれたせいで、余計な仕事ばかり増えているんだからな」
 尚服官は飛び回り、宮中の仕立人たちは悲鳴を上げ、公布された荒唐無稽な内容への問い合わせは絶えない。また、当然のことながら予定外の出費である。戦争するよりは安く上がるとはいえ、その金額は小さくはない。当然、どこからか予算を回さねばならないが、その点についても紛糾は続く。唯一の明るい面は、各部署の長がそれなりに納得し、この命を実行するよう動いてくれていることだった。だがそれと同時に、国王のせいでこのような事態を迎えたのだとうるさく騒ぐ者も少なくはなかった。

「絳攸」
 おとなしく書類と向き合って没頭していたはずの劉輝が側近を振り返った。
「絳攸は今日、ずっとここにいてくれていて余は嬉しいのだが、吏部は大丈夫なのか?」
「不本意ながら大丈夫だ」
 そう答えた吏部侍郎の表情に複雑なものが走ったのを見て取って、左羽林軍将軍は当の相手にわからぬよう、そっと微笑んだ。

(つづく)


次回は第六章:彼成すことを我のみぞ知る
になります。
一応、最後まで書けたら別ページを作ってまとめる予定ですが、しかし。
本当にどうにかなるのかこの話。
あまりにもタイトロープな日々にちょっと不安な今日この頃。
琥l編はきっともう無理だろうな……と思います。
季節はずしてある日琥l編がアップされる可能性は高いです。

この『君知るや南瓜の国』(の第一部)は、
ちょっと普段書かないキャラを書く練習も兼ねていたりします。
ただ、資料に当たっていられるほど余裕がないので、
現在すべてをこの当てにならない記憶力のみで書いているわけで。
「ここがおかしい」「このキャラはこんなこと言わない」等ありましたら
ご連絡いただけると幸いです。

さて、第六章書いて。
で、さすがに今月中にアップしないとまずい『夢の守り手』も書いてきたいと思います。


拍手ありがとうございます。
やはり嬉しいものだとひとり顔をほころばせています。

>22時頃拍手コメントくださった方。

ありがとうございます。素敵なのはあなたです♪

H19年10月25日

さーて、本日も無理矢理ノルマに立ち向かってみたいと思います。

『君知るや南瓜の国』第一部・第六章:彼成すことも我のみぞ知る

 吏部では数ヶ月ぶりの奇跡が起こっていた。
 次々と回される案件が忽ちの上に処理され、積み上げられる書類の数が薄い。
 仕事は定刻に始まり、定刻に終わる。
 これは奇跡だ。奇跡というものにはいつか終わりがくる。吏部官吏は誰よりもそのことを知っていた。だからこそ、ここぞとばかりに就業時間を慌しく過ごす。せっかくの奇跡はただ呆然としているのではなく、利用するにこしたことはない。
 昨年の暮れあたりから、こうして時々奇跡が起こる。
 奇跡を起こすのは天つ才の吏部尚書――ではあるが、普段の吏部を混沌に突き落とすのもこの人物だ。尚書室では不機嫌さを隠そうともせず、しかし仕事を放り出したりしないという主の姿があった。

 絳攸は、王の執務室を出て吏部に戻る――本人はつもりだった。夕暮れの帳が静かに下りて、あたりを橙色に染める。
(今、俺はどこにいる……)
 吏部に帰らねばと思う。だが焦って進めば進むほど見慣れない景色にぶつかる。そして、どうした按配だか、先々に人影もない。
(こんなことなら楸瑛が送るというのを断らなければよかった)
 だが、それはもう随分と前の話で、執務室さえどこにあるのかわからない。
「おや、これは李侍郎。こんなところでお会いするとは思いませんでした」
 ひそやかにかけられた声の方向を見やる。その人影は――。
「楊修、か」
 覆面官吏である同僚は、秀麗がかつて見知っていたのと同じ様相をしていた。今も彼は隠密行動中である。
 少し離れたところから話しかけてくる男の声には皮肉が籠もっていた。
「まあ、気持ちはわかります。今の吏部に帰りたくはないでしょうねえ。覆面官吏であることを今くらい感謝したことはありませんよ」
 そんなことはない、自分は吏部に戻るのだと、言いたくても言えなかった。確かに、現在の吏部には少しいたくない理由もあった。
「一体、尚書に何が起こっているんでしょう。そのへんの事情はもちろん侍郎ならご存知でしょうが」
 もし、年功序列をうんぬんすれば確実に絳攸より先に侍郎となっていたはずの男は続ける。
「知らん」
 短く切り捨てるものの、想像はついた。想像がついたからといって納得できるかどうかはまた別の話である。
「そうですか? まあ、そういうことにしておきましょうか。ところで、どちらにおいでです?」
 適当な場所を口にするにしても、現在位置すらわからない状態で下手なことを言えばこの男につけこまれかねない。どうしたものかと絳攸は思案した。せめてここがどこかわかれば――。

「絳攸様!」
 ふいに聞き覚えのある声がして絳攸は振り向き、楊修は静かに姿を消した。
「珀明」
 吏部でもっとも若い官吏は沢山の書類を抱えていた。例え彩七家の御曹司といえども現在は走るのが仕事である。若さによるものか、はたまた生来の性格か、いささか潔癖なところも見られるが、彩七家の事情で見せる顔は決して甘くはない。よい官吏になるだろうと、絳攸はひそかに思っている。ただし、口に出せばどれほどこの後輩を喜ばせることになるか少しも気付かないのが李絳攸であった。
「どちらかに行かれるのですか?」
「いや、そろそろ吏部に戻るつもりだ」
「ご一緒してもよろしいですか?」
 まさに渡りに船。絳攸は滅多に見せない笑顔で珀明にうなずいた。
「ああ。ところで少しその書類を寄越せ」
「とんでもありません!これは僕に与えられた仕事ですから」
 首を振った勢いで、珀明の外套が翻った。
「……よその部署に何か言われないか」
「ああ、これですか」
 苦笑しながら珀明は首をすくめる。
「最初に『尚書の命令だから』と言ったら後は納得してくれたのか問われることもなくなりました」
 触らぬ神にたたり無し。まさしく吏部の祟り神は周囲に正しく理解されている。
「絳攸様も吏部に戻られたら着替えられるんですよね?」
「……そうしないわけにいくまい」
 楊修が揶揄し、絳攸自身もいささか吏部へ戻ることをためらう理由がここにあった。
 吏部では月末に前倒しで既に吏部官吏全員が『きゅうけつき』の扮装をするように尚書が決定していた。その言葉に誰が逆らえよう。
 通常であるならば黒家のものにしか許されないはずの準禁色の黒。全身をその色で包む碧家の青年は常とは違ってみえた。
「おまえの場合は、その扮装も悪くないように見えるな」
 劉輝のいじけぶりを思い出し、絳攸は傍らの珀明の姿を検分する。
 まだ幾分幼さの残る青年は、この黒装束のせいか随分と大人びて見えた。碧家のこだわりか、そこかしこに改造の手が見られたが。
「よろしければ絳攸様の装束もうちの者に手を入れさせましょうか?」
 正直、自分の見た目にあまり頓着しない絳攸であったし、何より絳攸のものに他の彩七家の手が入るのをきっと黎深はよく思わないであろう。絳攸は気持ちは嬉しいとだけ伝えてその件は断った。

「あの、絳攸様、実は相談したいことがあるのですが」
 装束の件は断られることを覚悟していたのか、屈託なく珀明は別の話を持ち出す。
「なんだ? 仕事上の悩みか?」
「いえ、あの……」
 常ならば歯切れのよい珀明の話しぶりが鈍るのを絳攸はいぶかしく思った。
「何だ? 言ってみろ」
「これを……お返ししたいのですが」
 書類を抱えた状態でいささか苦労しながら珀明が取り出したのは、見覚えのある鉄扇だった。
「ん? 黎深様の鉄扇? 一体、何故お前が持っている?」
「あの、この装束のことが通達された日なんですが、同期の紅官吏と話していた時に飛んできたんです。あの……、これ、やはり尚書のものですよね?」
 鉄扇から長く垂らされた飾り紐の色は濃い血のような赤だった。
「黎深様のもので間違いはないだろう。ところで秀……紅官吏とは何を話していた?」
 この時点で絳攸にはある程度の予想がついた。ここしばらくの黎深の勤勉ぶり、そして急ぐ必要もないのに吏部だけは早くから異装を強いられたこと。このふたつが、邵可もしくは秀麗関係から来ていることに絳攸はとうに気がついていたのだ。
 珀明は秀麗との会話をできるだけ再現しながら語った。
(仕事をしない最低尚書、か。いっそ秀麗に三日ごとくらいに吏部に寄らせてそう言わせれば黎深様も仕事を続けるかもしれないな)
 自分では黎深をそこまで動かすことができないのが絳攸にはわかっていた。黎深は絳攸がどれほど苦情を呈しようとも仕事をする素振りさえ見せないのに。
「わかった。この鉄扇は俺から返しておこう。お前は何も言う必要はない」
 絳攸が鉄扇を受け取ると、目の前の青年は明らかに肩の荷が下りたらしかった。
「ありがとうございます! よかった、絳攸様にお会いできて!」
(それは俺の台詞だ)
 見慣れた吏部の扉を目にして、絳攸は心の底からそう思っていた。

 扉の向こうは、文字通り悪鬼の巣窟であった。
 『きゅうけつき』の異装姿の官吏が慌しく働いている。就業時間は間もなく終わる。その前にと仕事を片付けるのに熱が入っているのだろう。誰もしばらくは絳攸が戻ったことに気がつかなかったくらいだ。
 侍郎室の扉に手をかけて、ふいに絳攸は黒ずくめの配下たちを振り返った。
「おい、ひとつ言っておく。おそらく尚書のこの状態は月末までと思われる。今のうちに片付けられるものは片付けてしまっておけ」
「ああ、やっぱり……」
 この状態が恒常的なものでないことは吏部官吏ならとうに察していること。むしろ期限が切られたことに誰もが安堵したようだった。元々、吏部に配属されるのは、その働きぶりが期待できると思われる優秀な男たちばかりだ。彼らは絳攸に向かって共犯者の視線を投げかけ、また仕事に没頭していった。

 侍郎室で自分用の『きゅうけつき』の衣装を取り出しながら絳攸はひとりつぶやく。
「秀麗に、とっとと『きゅうけつき』姿の黎深様の姿を見せることさえできれば、こんな装束を早々に着る必要もないんだがな」
 黎深は秀麗の言葉から「仕事をしない最低尚書」と、「装束を着た姿を見てみたい」という部分だけに反応しているのだ。吏部全体はそのとばっちりを受けているにすぎない。だが秀麗が黎深の姿を見られるようにお膳立てしたところで、自分の上司兼養い親はきっと逃げ出すだけだろう。
 ひとつため息を落として黒装束の外套を揺らしながら、必要な決済のある書類と鉄扇を抱えて、絳攸は尚書室へと向かったのだった。

(つづく)



なんか、わりと普通のSSっぽいかもしれません、今日の分は。
収録しなおす際には全体のバランスもどうにかしないといけないんでしょうね。
こうやって書いていて思うのは、
彩雲国のキャラって、「嫌い」とか「苦手」なキャラが少ないということです。
ちゃんとそのキャラらしく書けているかどうかはまた別の話になるのですが。

それでは明日は第七章:人知れずこそ仮面染めしか
の予定です。
ああ、どこの部署かバレバレです(苦笑)

ところで、こうやって強制的に書く方が、案外私にはいいのかもしれません。
いやもちろん、本来はちゃんとプロットきっちり立てて進めるべきですけど、
とりあえず毎日書くことは書けているし。
その分、他が疎かになっていたりもするんですが。
『夢の守り手』、進みません。このままじゃお蔵入りになりかねない……(汗)

えーと、明日は疲労しきってるかもしれません。
明日から仕事が部署異動になりますので。
何回経験してもそれなりに衝撃的です。
慣れるまでがどうしたって不安ですからねえ。
ただし。異動のたびに毎回痩せるので、そのあたり少し期待もしていたり(苦笑)
まあ、なんとかなるでしょう。
ってかなんとかするけどね?

H19年10月26日

唐突に、連載中の話があまりにも確認する際読みにくいので、
途中ですがまとめたページを作ることにしました。
一応、今日の分まで収録。
あとおまけとして、章タイトルの元ネタを記載してます。
まだ書いていない分のタイトルもあるけど気にしない♪

ページはこちら
でもって、戻る時はブラウザの戻るで帰ってください。


では
『君知るや南瓜の国』第一部・第七章:人知れずこそ仮面染めしか


 ここ数日、めっきり戸部尚書の姿が見られなくなった。いや、元々仮面で顔を隠しているのだから普段と同じではないかと思うのも無理はない。
 だが、確実に違った。毎朝の朝議に出た後、尚書室にこもったままなのだ。通常であれば戸部官吏の前に現れて指示を出したり、府庫に赴いたりくらいはするのだ。それが尚書室から一歩も出ない。侍朗室にさえも訪れる様子はない。朝議に出席する高官と侍朗である景柚梨のみにしか姿を見せない日々が続いていたのだ。

「尚書はお身体の具合でも損なわれましたか?」
 高齢の戸部官吏であり、身体の不調を訴えることも多い高天凱に問い掛けられ、戸部侍朗は苦笑を漏らした。
「いえ、お身体の方は問題ありません。ただ、少し不具合がありまして」
 視線で問う高官吏に柚梨は短く答える。
「仮面に少々不都合が」
 それだけで十分だった。何しろ目の前の官吏は、鳳珠や柚梨が勤める前から戸部にいる生き字引である。
「それでは尚書は仮面なしで登城しておられるのですか?」
「さすがにそれはありませんが、携帯用の仮面では不十分なものですから」
 高官吏は深く納得した様子でうなずいた。
「なるほど。それでは人前に出られぬも道理。覆うところの少ない携帯用では尚書のご容姿は隠しきれませんからな」
 戸部尚書、黄奇人――本名鳳珠の隠された美貌は、露にされると宮中の一切を麻痺させかねない危険物である。
「月末の出費の件だけでも頭が痛いというのに、尚書にはさぞご不快でしょう。一刻も早く仮面の不具合が直りますよう祈っておきます」
「尚書には高官吏のお心遣い、私から伝えさせていただきます」
 にこやかに侍郎は請負う。穏やかな風貌に似合わず肝の据わった柚梨は、鳳珠の素顔を見ても動じない数少ない一人であった。
「お願いいたします。何しろ私が尚書の素顔を拝見いたしますと心臓が止まるかもしれませんので」

 多大な同情をこめて老官吏が引き下がると、柚梨は尚書室へと向かった。
 開口一番に室の主に問いかける。
「鳳珠、まだ仮面は直ってこないのですか?」
「無理だと言われた。あまりにも色が染みこみすぎて元に戻すことはできないそうだ」
 携帯用の仮面は口元を覆わない。そのため、凶器となりうる美声がくぐもることなく室内に響いた。もっとも、柚梨にはどうということもない。
「では当分このままですか?」
「至急、新しいものを作らせている。それでも今月中にできあがるか微妙な線らしい」
「それは……不便ですねえ」
 声さえも発するのは危険と、朝議の席ですら筆談か柚梨を通さねば発言もできない。それは他部署との疎通をさまたげていた。
「とりあえず請求書は紅本家に送った」
「貴陽の本邸でなくですか?」
「紅家は弟の方が常識がある。こちらの損害がいかなるものかも察するだろう」
 そういうものかと、柚梨は鳳珠から返された書類を検分する。
「まったく!この忙しい時に、自分で動けないのは最悪だ!」
 不機嫌を隠そうともせず、鳳珠は次の書類を乱暴に引き寄せた。
「柚梨、私には復讐をする権利があるとは思わないか?」
 形のよい唇が不吉な言葉とともに笑いの形に歪められた。

(つづく)


すみません、戸部編途中です。
もう続かせているほど日の余裕もないのに(泣)


拍手ありがとうございます。
元気、いただいてます!

H19年10月27日

酔ってはいない。100%素面であった。
しかし、どうにもこうにも記憶があやふやで、
私はたいへん困惑している。

私の一日は、コンタクトレンズを入れて始まり、はずして終わる。
眼鏡は合わないのでコンタクト一辺倒である。
もはや、無いと生活にも支障をきたす。
なので、つけたりはずしたりは既に無意識の領域。
ちなみに、使い捨ては私の場合、おそろしく高くなる(乱視が強いから)ので
連続装用可能のハードレンズが私の相棒だ。

これを書いてるのは28日の昼なわけで、帰宅して眠さ爆発の私は、
更新よりも睡眠を選んだ。
うたた寝→風邪引きコースよりマシだからだ。
28日が休みという気楽さもある。
どうも、休み前日の方が私は怠慢になるらしい。

で、先ほど、28日昼。
さわやかに睡眠を満喫した私は、一日をはじめるべく
コンタクトを…………。
はずしたのは覚えている。
でも、ケースにないって、どういうこと?

見えない目で(裸眼はね、本当に見えないんだ。0.01前後だと思われる)
心当たりを探すがまったく見つからない。
せめて片目でもあればいいのだが、それもないので困難に拍車がかかる。

……てなわけで、コンタクト作りに行ってきます。
帰ってきたら新しい視界で更新したいと思います。
しかし、この出費は痛い……(大泣)
でも思おう。今日、休みでよかった。この視力じゃ仕事にならない。
目覚めたのが夕方や夜でなくて良かった。お店が開いている。
至近距離(モニターまで30cm以下か?)で打つのは辛いね。
それでは行ってきまーす。

新しく作って帰宅したら、
ないないの神様がこそっと戻しておいてくれてるような気もしないでもないけど、
そんなこと言っても待ってもいられないんだぜセニョリータ。


結局、色々買い物したりして帰宅しました。
だから休日はなるべく外出しないようにしてるのに……。
なので、
「ああっ!裁縫してえっ!」とか
「ああっ!工作してえっ!」とか
そんな思い爆発でございます。

本日のお買物リスト
椿油大瓶×2本(個人的必需品)
つげ櫛(携帯用)
ムーンストーン4mm珠×105珠(多少数え間違いはあるかも)
整理用ケース×2(彩雲国本と中国関連資料をまとめるため)
和柄プリント布50cm×2枚
パッチワーククロス×4枚
接着芯×2m
『おまめの豆本づくり』(柴田尚美・白泉社)
『史記2 書・表』(司馬遷/小竹文夫・小竹武夫訳・ちくま学芸文庫)

つげ櫛用の布ケース作って〜♪
ブックカバーも作って〜♪
ワイヤーで2連ブレス作って〜♪

んでもって豆本、作る気満々です。
うん、無理しないでA6でまずやってみようかと。
実は紙や用具も着々と揃っていたりします。
単に、うちにあったカッターが切れ味悪いから買いなおしたとか、
なくなったボンドを買い足したとかですけど。
表紙を布にするんだって、家に材料になる布はたくさん。

問題は。
ええ、中身をどうするかです。
前に試してみたように影香童話集でいくのか、
はたまた短いSSを書いてそれにするのか。
さてさて、どこかでお題でももらってこようかな。
とりあえず、その前に南瓜、南瓜と。


『君知るや南瓜の国』第一部・第七章:人知れずこそ仮面染めしか』(つづき)

「気持ちはわかりますが、相手が悪すぎませんか?」
 懸念の色を浮かべて柚梨が問いかけると、自ら奇人と名乗り始めた男は言い切った。
「仕掛けてきたのはあちらだ」

 数日前のこと。起床した黄尚書は異変に気付いた。
 所持している数々の仮面、そのことごとくが、赤や青などに塗りたくられていたのだ。更にはご丁寧にも仮面の口元には二本の牙まで生やされていた。
 ちなみに、無事な仮面もあったが、それは同期が無理矢理置いていった某府庫の主の顔のもの。さすがに登城する際に使えるわけもないし、使いたくもない。
 同時期に吏部では月末前倒しの仮装強要が始まっていたとなれば、実行したのは紅家の影、命令したのは紅家当主でしかありえなかった。
 理由は、自分が仮装するのだから吏部官吏も、そしてついでだからと一蓮托生に巻き込まれたものと思われた。はっきり言って大迷惑である。

「それで、復讐って何をするんですか?表立って紅家に喧嘩を売るわけではないでしょう?」
 それならば、紅家と黄家の彩七家同士の軋轢を呼びかねない。
「そんなもの、標的は黎深ひとりだ」
 心なしか楽しげな上司の様子はこの上もなく不敵だ。
「何かもう考えているんですか?」
「当然だ。まず、紅家本家の百合姫に大量に花を贈る」
「はあ……」
 求婚の顛末を知っている身としてはそれはどうかとも思ったが、本人は気にした風もない。律儀な鳳珠は元々季節の挨拶なども百合姫と交わしているらしいのでその一環におさまるのかもしれない。
「そして次にこれだ」
 尚書は一枚の紙を侍郎に渡す。
「招待状――。邵可様と秀君宛てになってますが」
「そうだ。秋と言えば美味も豊富。味は良いがそれほど肩肘はらない酒家の個室に招待して、じっくり親睦を深めさせていただきたいと。まず断られることもなかろう。あちらの事情もわかっているから、家人の同席も承知と書いておいた」
 鳳珠の言う通りの内容の書かれた紙片に目を通しながら柚梨は確認した。
「日にちは次の公休日ですか」
「ああ。仕事のある日だと秀麗も忙しいだろうし、何よりこちらも動きにくい」
「しかし、次の公休日までには、あなたの仮面は出来上がっていませんよ?」
 携帯用の仮面しか使えないのに会食など大丈夫なのかと柚梨は不安になった。確証はないが邵可は大丈夫のような気がする。何しろ、あの黎深の兄である。同じ血をひいてはいるが、秀麗は年若い娘なだけに鳳珠の容姿は危険ではないだろうか。また、柚梨の知らぬ家人にとっても同じ事である。
「あの三人なら大丈夫だ」
 だが、長年の部下の杞憂を自信満々に仮面の男は吹き飛ばしたのであった。

「ところで鳳珠?」
「なんだ?」
 招待状を返却しながら今更のことを柚梨は問わずにいられなかった。
「これのどこが黎深殿を標的とした復讐なのですか?」
「安心しろ。効果は覿面だ」
「はあ……」
 そういうものかと柚梨は自分の上司を改めて見つめる。仕事熱心な尚書は雑談は終わりとばかり、既に新たな書類と向き合っている。
(優秀な人材は幾人も見られるが、個性的という意味で『悪夢の』と呼ばれるだけの理由の一部は確実にあなたのせいですよね)
 その優秀な尚書の優秀な部下はあえて言葉に出さずに、そっと決済の終わった書類を持って静かに退出しようとした。
「待て、柚梨。碧遜史に例の見積もりの算出を急がせろ」
「わかりました。そうそう、鈴を置いていきますから必要があったら遠慮なしに呼んでくださいね」
 袂から取り出した鈴を尚書の卓に置くと、今度こそ侍郎は自分の仕事を片付けるために尚書室を立ち去ったのだった。

(つづく)


ともかく、まずこれが27日分です。一旦上げて28日分に取り掛かります。


拍手ありがとうございます。
一方通行じゃないって嬉しいです。

>21時頃に拍手コメントくださった方。

元歌が古すぎたりマニアックすぎたりするかもしれませんが、
替え歌を考えるのは楽しいです。
また順次、増やすなりしていきたいと思います。
お楽しみいただければ幸いです。
ありがとうございました♪

H19年10月28日

帰宅しても「ないないの神様」は動いていらっしゃらないようでした。
本当にどこに行ったのだろう?
うーん、ミステリー。

買い物帰りに、新しく本屋が出来ているのを発見。
うきうきわくわく足を運ぶ。
これまで5軒以上10軒未満の本屋を探して見つからなかった『史記』があって、
私は大満足しながら本屋の中を探索。
うん、歴史関係の揃い方は中程度、幻想系もそれほど多くはないけどラインナップ良し。
おお!これは名作なんだぜ、置いてあるとは素晴らしい!
とかやってて、コミックスとライトノベルズのコーナーへ。
まあ、普通。多くはない。
でも、ここで問題勃発。
角川のBeans文庫ですが。
まるマはある。少年陰陽師もある。
しかし、彩雲国が1冊もねえーっ!
……この1件でこの本屋の評価が少しばかり落ちたのは
許されると思う今日この頃なのでした。
でも、便利なところに本屋ができて嬉しくて、
帰宅して早々にやはり書痴気味の父に出かけるよう勧めたのでした。

ところで、整理袋を購入して帰宅したのは正解でした。
彩雲国文庫を入れてる袋を取り出したら、見事に破れましたから。
今度のは丈夫だよ。100均じゃなくて300均のだもん(笑)
ただし。
入れ替えて、その二つともがもう満杯っていうのはどうしろと。
特に、資料用の方はまだ全部入れてないっていうのに。

で、それなりに美しく並んだ様子にほくほくと、
ただ今連載用の話の確認にと、『花は紫宮に咲く』を取り出しました。
本編影月初登場の巻、です。この巻は私にとって(笑)
当然のように、今読む必要のない影月の登場シーンを熟読、さらに。
「ああっ!この項目、風土記に入れなきゃ!」
というのも次々と。
以前なら読み飛ばしていたものが目に入って入って。
ううっ。余裕できたら風土記にも色々書き加えます。

そんなことをしていたら時間がありません。
とりあえず今日の分を書けるだけ書きます。


『君知るや南瓜の国』第一部・第八章:侍郎落ちて華美の秋を知る


「失礼します。工部尚書の認可の必要な書類を預かって参りました」
 そう言って工部に訪れたのは二十歳前の青年である。生真面目な表情が室に足を踏み入れた途端に歪む。
 毎回、覚悟はしている。だが、明確に外とは違う匂いが充満していることに慣れない。
「ご苦労さま。尚書は席をはずしておられますので私がお預かりいたしましょう。どうぞこちらへ」
 どこからともなく金属の触れ合う音と共に工部侍郎が現れて吏部の若手官吏を侍郎室へと誘った。その視線はしっかりと吏部官の装束に注がれており、きつく眉が寄せられていた。
 二人が去った後、工部官吏たちはさもあらんと語り合う。
「うちの侍郎に、あの格好は受け入れられんだろうなあ」
 来るべき月末はもう後数日後に迫っていた――。

(つづく)


すみません。資料(原作)に当たる時間が長すぎました。
それなのに珀明と玉が宮中で出会ったシーンが見つけられません(泣)
言葉遣いが悪くなったと玉が嘆くところです。
どの巻のどのあたりか教えてくださる方、至急熱望中!


拍手ありがとうございます。
この連載は必ずや今月中に終わらせてみせますから……。
たぶん(汗)

H19年10月29日

まずは昨日の分を補わなきゃねえ。
というわけで、とりあえず工部編続けます。


『君知るや南瓜の国』第一部・第八章:侍郎落ちて華美の秋を知る(つづき)

 侍郎室に入ると、それまで充満していた酒の匂いから解放されて、珀明は無意識に深呼吸する。と、芳しく鼻腔をくすぐるのは品の良い香。
(白檀に、あと麝香が少し。それから……)
 香を聞きながら珀明は素早くその構成を読み取る。軽くでは読み取れぬ複雑な香りは、趣味人ならではの合わせ方だった。
(さすが、玉殿。欧陽家屈指の通人だけはある)
 感心する珀明の傍らでは、室の主が受け取った書類を検分している。
「助かりました。後で尚書の認可をいただければ懸念のが実現いたします」
「はい。欧陽侍郎が随分と骨を折られた案件であったと伺っています」
 本来であれば、碧家それも直系である珀明にとってこの瀟洒な男は目下になる。だがここは宮中。官吏としての身分を問うならば、今は珀明の方が下だ。自然、丁寧な物言いとなる。
「ええ。苦労の甲斐があったというものです。――ところで碧官吏」
 ついっと席から立ち上がった工部侍郎が立ったままの珀明に近づき、そして軽く礼を取る。
「申し訳ございません。今だけ本来の立場にてお話させていただいてよろしいでしょうか?」
「それはかまいませんが……?」
 玉は珀明に櫛と鏡を差し出す。
「髪が乱れておられます。いけません、碧家直系ともあろうあなたがそれでは」
 鏡を見るとまとめた髪の一部がほつけて見苦しかった。反省しつつ珀明は髪を櫛削ってまとめ直す。
「恥ずかしいところを見せてしまいました」

(つづく)



すみません限界です。
おやすみなさい……


拍手ありがとうございます。
10月中の完結は無理とさとりました。ごめんなさい。

H19年10月30日

疲れやら睡眠不足やら、
そんなこんなで夕べはPC前でうたた寝して朝を迎えてしまいました。
足のむくみもひどかったので、僅かな時間でも横になることに決めましたが、
1時間たたないうちに鳴る目覚ましが憎かったです。

で、ふらふらなテンションでありながら、
何故か行きの通勤電車でバッグに入れたままだった漫画を
おもむろに読み始めてしまったのです。
たまたま前日に古本屋で見つけたのですが
山田睦月の『恋愛ドラマのように、は』(原作・菅野彰・新書館)です。
未読だったので飛びついたのですが。
これが。
山田睦月らしい暖かさと菅野彰らしいユーモアさえも加味されていて、
なかなか佳作だと思うのですが。
読んでいたら涙が止まらなくなりまして。
読み終わった後も、読んだばかりの話を反芻して涙ぐんでしまうし。
いやあ、特急車両で良かったわ……。

さてさて、いよいよハロウィンを迎えるわけですが。
見ての通り、連載は進んでおりません。
そして、『夢の守り手』はお蔵入り決定。
『君知るや南瓜の国』も琥l編はお蔵入りです。
せっかくなので、「おばけかぼちゃのはなし」だけは、
『踊る南瓜の夜』のページからリンクさせました。
興味のある方だけどうぞ。

とにかく、連載は最後まで書きます。
あと何日かかるかもわかりませんが(滝汗)

それはともかく、いい加減ですねえ。
私、影香成分が不足してて苦しいです。
ついでに、秋の話は過剰供給です。
なので、この連載が終わったら、影香で夏の話を書こうと思います!
何故夏なのかは、まあ成り行きで。

それでは本日分行ってみます。

『君知るや南瓜の国』第一部・第八章:侍郎落ちて華美の秋を知る(つづき)

「吏部が忙しいのはわかります。ですが、あなたはこの宮中における碧一門の指針とならねばならない方なのですから、もう少し身なりを気にかけていただけると」
 玉にそう言われて珀明は薄く笑う。品のない装いは確かにいただけないが、今の自分には余裕がない上に、元から玉ほどの執着もなかった。

「ところで先ほどから気になっていたのですが、その衣装が月末の扮装ですね」
 玉は何も見落とさずにいようとする視線で珀明の扮装を凝視していた。
「はい。玉殿も『きゅうけつき』ですよね」
 工部もまた六部のひとつ。ここも月末には悪鬼の巣窟に変わるのだろう。
「しかし、この生地。これは尚服官が見本に持ってきたものとは違いますね?」
 しなやかに珀明の身体に沿って流れるのは極上の絹をふんだんに使った光沢のあるものだった。
「ええ。あまりにも粗悪な生地だったものですから。問い合わせをしたところ、『きゅうけつき』に見えさえすれば多少の変更は許可すると言われましたので」

 正直、尚服官に絵図と見本生地を見せられた時、珀明は激しくうんざりしたものだった。一応の採寸は済ませたものの気がのらないまま終わりそうだったのだが、偶然出会った秀麗の『珀ならちゃんと着こなせる』という一言に、このままではいけないと問い合わせをし、よりよく見える型を考案し、碧家が特許を持つ生地を選び、家人を使って見栄えよく仕立てさせた。一度始めるとやはり珀明の中の碧の血が妥協を許さなかった。一見、同じ『きゅうけつき』に見え、だがよく見ると確実に着る者を引き立たせるように考え抜かれた衣装は、『おまえが着てるとよく見えるな』と周囲を頓着しない吏部の先輩に言わしめたほどである。
(おまけに、絳攸様にも褒めていただけたし)
 自然に顔がゆるみそうになるのを珀明が抑えている横で、玉はしきりと頷いて同意をしてきた。
「気持ちはわかります。私もあの粗悪な生地を纏うかと思うと気がすすまなかったのですが。……そうですか。『きゅけつき』に見えさえすればよいのですね」
「何をお考えです?」
「さっそく私も自分用を用意しようかと思いまして。地紋入りの絹を黒に染めさせましょう。それから、外套の裏地にはもう少し渋い赤を。上着は腰のあたりを細めに仕立てさせて。それからやはり装飾品ははずせませんね。珀明様もおつけになられるとよろしいのです」
 玉は衿元や袖口に光る宝飾品をよく見えるよう整えた。
「生憎、自分は宮中では若輩者ですから、そこまで目立つわけにもいきません。そのかわり貴兄が碧一門を代表する装いをしてくださればと思います」
 たしかに玉には似合っている。だか今の自分では玉と同じように飾り立てるのは似合わないであろうと珀明は冷静に判断した。こういった品は似合う人物が身に着けてこそ価値があるというものだ。
「そうですか。無理にはすすめないでおきましょう。しかし今日お会いできて良かった。憂鬱なだけの扮装が楽しみになって参りました。おまけに、準禁色で普段纏うことのできないこの黒という色。なかなかに装飾品が映える色と知りましたから」
 何やら楽しげな玉の様子に、珀明も当日に工部侍郎の装いを見るのが今から楽しみになった。
「少しでもお役に立てたのなら幸いです」
「少し落ち着かれましたら、また我が家にお越しいただいて芸術論など戦わせようではありませんか」
「はい、楽しみにしています」
 珀明は役目を果たしてまた吏部へと戻っていった。

 残された玉は手元に料紙を引き寄せると、おもむろに筆を忙しく走らせ始めた。これが、工部の月末の運命を大いに変えることになろうとは、その時はまだ誰も気がついていなかった。

(つづく)


すみません、まだ工部続きます。
あの人とあの人を出さねばならないのよーっ!
ちなみにこの連載。
名前だけの出演者も合わせると、登場人物30人を超えます。
ううっ、もう王都もオールキャラも書かない!
影香出せないし!(←結局それかよ)
ではまた明日がんばります。

ところで、宮中で珀と玉が会話するシーンって、
どこかのサイト様の作品だったかもしれないという疑いが。
ふたりのお互いへの口調を確認したかったのに。
とりあえず、うちではこんな感じで。

連載まとめページこちら
『おばけかぼちゃのはなし』直接はこちら


拍手ありがとうございます。
よいハロウィンを過ごされますように。

H19年10月31日

ああ、10月が終わります。
なのに連載は終わりません。
まだ登場予定のキャラ(名前だけでも)が10人以上いるんだもん。
誰だ、王都組オールキャラを出すと決めたのは。
――私だよ。
普通はオールキャラって言っても主要キャラで許されるんだ。
なのに、本気のオールキャラ。
ああ、せめて今日で工部が終わりますように。
……無理な気がするのはきっと気のせい。そう思いたい。


『君知るや南瓜の国』第一部・第八章:侍郎落ちて華美の秋を知る(つづき)

 ちょっとした成り行きで飲み仲間でもある白大将軍と杯を交わすことになり、結果、昼間から酒の匂いをさせながら管飛翔は工部に戻った。
 不在時の仕事の進み具合を確認するため、扉を叩くことも声をかけることもなく飛翔はそのまま侍郎室へと押し入った。

「おい陽玉、俺のいない間になんかあったか?」
 多少細かすぎるきらいはあるが工部侍郎は優秀な男だ。宮中でも稀な着飾り具合ばかりが有名で、侮る者もいないではないが、そんな見る目のない馬鹿はこいつの毒舌を浴びればいいと、日々お小言を食らっている尚書は思っている。――それが日常だというのが問題だとしても。
 常であれば、この時点でふたつのことで欧陽玉は怒っているはずだ。
 曰く、自分の名前は玉。ですいい加減正しく呼んでください。
 曰く、尚書ともあろう人が昼間っから酒の匂いをさせているなんて、少しは態度を改めたらどうですか。
 少なくともこのふたつははずせないだろう。後は、尚書が行き先も言わずに勝手にふらふらするなとか、まあ、心当たりはいくつかまだあった。
 書き物をしている侍郎席の卓上に無遠慮に座り込み書類を除く飛翔から漂う酒の匂いに、侍郎の眉根がきつく寄せられた。
(くるぞくるぞ)
 別に飛翔は玉に小言を言われるのを楽しみにしているわけではない。だが、飛翔が玉を怒らせて言葉をやりとりすることは、ここ工部においては尚書と侍郎の意思の疎通のために一役かっていることも確かだった。これが、鬱憤を腹に溜め込むような部下であったら、きっと飛翔とは合わないままで終わったであろう。
 同期の紅黎深に、
「ありゃ駄目だ、使えん。うちにはいらねーから、いいのと替えてくれ」
 と言ってみていたかもしれない。
 もっとも、玉は反骨精神を持ち合わせても腹芸に走る男ではなかったから、工部では常に本音と本音がぶつかり合っていることになる。

 ところがこの日、工部侍郎は唇を引き結んだまま、無言を守っていた。これだけの材料があれば確実に怒鳴りつけてくるはずであったのだが。ようやく沈黙を破って飛び出した言葉は、
「おかえりなさい。こちらの決済をお願いします」
 だけであった。
「陽玉? おまえなんか悪いもんでも食ったのか?」
 書類は受け取ったものの、爆発しない部下に飛翔は懸念の色を隠さない。
「……別にいつもと同じです」
 答えが返ってくるまでに意識的な呼吸を繰り返していたから、言いたいことはあるはずなのにである。
「でもお前、おっかしーじゃねえか。いつもがみがみ怒鳴りつけるだろうが」
「……少し、思うところがありまして」
 芸術大好き侍郎のこと。思うところがそちら方面なら飛翔にはお手上げだ。だが。
「なんだ? 禄がいつまでも横ばいなのは許せんとかか? それなら奇人に文句言えよ」
「……黄尚書はこの際関係ありません」
 大きく息を吸い込んで、欧陽玉は管飛翔の目をまっすぐ捉えてきた。
「どうです? 私とひとつ賭けをしませんか?」

(つづく)


……すみません、後1回だけ工部続きます(汗)
やっぱり終わらなかったか……。
連載まとめページこちら


拍手ありがとうございます。
連載続けていける気力もらってます。


引継ぎ期間も終了し、いよいよ明日から新職場。
これまでとは微妙に畑違い。
まあいいさ。新入社員だと思ってまたいろいろ覚えていくさ。
問題は。
おそらく回りはそう見てくれないってことなんだよなー(苦笑)
課長、あなたが私にやらそうと思っていることは薄々察してはおりますが、
それは非常に面倒ですよ?
面倒なの、嫌いなんだけど。
でもまあ、無理矢理でもポジティブシンキングにもっていって、
今回も乗り切ってやるんだぜ?
伊達に異動を何度も乗り切ってはいないんだからね。

H19年11月1日

異動初日の疲れも、仕事帰りに本屋に寄ったら吹っ飛びました。
黎深様の表紙がすごいツボ(笑)
ただし、本日は『流血女神伝・喪の女王8』に費やすことに決定。
だって『流血女神伝』は最終巻なんだもん。
大泣きしながら読みました。
鼻のかみすぎで痛い……。


『君知るや南瓜の国』第一部・第八章:侍郎落ちて華美の秋を知る(つづき)

 だが飛翔は玉の言葉を聞いていないらしかった。急に室を慌しく飛び出して行ったかと思うと、客を連れて走って戻ってきた。
 その客人というのは。
「陶医師(せんせい)……」
 いささか息を切らしているのは飛翔のせいだろう。だが宮中の医師の要は根っからの医者だった。
「尚書に欧陽侍郎の様子がおかしいと引っ張られてきたのですが。さて、侍郎はどうともなさそうですが?」
 老齢の医師はそれでも診察用具を取り出して玉を診ようとした。
「いえ医師、私には異常はありませんが」
 手を上げて診察を断る玉に飛翔は激しく反論する。
「馬鹿言え!おまえがあんなにも怒らないなんてどっかおかしいに決まってるだろう!」
 ぴしっと青筋をたてて怒鳴りそうになるが、玉はぎりぎりでなんとか自制した。
「……少し考えるところがあってです。医師、せっかくお越しいただいて申し訳ありませんが、診察は必要ありません」
「そうですか。ではせっかくですから尚書の臓腑の様子でも診ましょうか」
 陶医師は取り出した用具を飛翔へと向けなおした。
「ぜひお願いします。何しろうちの上司、年中酒の切れる日がありませんから」
「それは問題です。管尚書、ここはひとつ節酒、いやいっそ禁酒されるとよろしい」
 矛先が変わったことに工部尚書はたちまち無茶な発言で答えた。
「冗談じゃねえ。俺は飲んでる方が健康にいいんだ」
「そんなわけないでしょう」
 怒って叫びたいのを抑えて、玉は声も抑えることに成功した。これなら怒っているようには聞こえまい。

(つづく)


す、すみません。限界きました。
工部編、もう少しなのにーっ。
工部編で出したいと思ってた人もようやく出せたのにーっ。
ま、たぶん誰も予想も期待もしていなかったであろう陶医師ですが(苦笑)

拍手ありがとうございます。
それでも細々とでも書き続けられるのはあなたのおかげです。

新職場で、以前の勤務シフトだと明日はお休みだったのですが、
「人、いないんなら出勤しますよ?」
などといい子発言をして休みをのがした馬鹿なわたくしです……。
大馬鹿だあ。

H19年11月2日

ああ、出会ったばかりだというのに、
次の季節が来たら君は僕の前から消えてしまうんだね。
こんなにも僕を夢中にさせておいて。
せめてその日が来るまで毎日君に会うよ。
僕の愛しのRammy――。

うん、夢中なんです。
LOTTEの季節限定チョコに(笑)
飲む方はさっぱりな私ですが、
お菓子にアルコールはどんと入れろ、な人です。
(でもボンボン系は苦手)
ともかく、毎日買って、毎日食べていたりします。
このラムラムしいレーズンが私をうっとりさせるのです。
秋が終わる頃の自分の体重が大変に怖ろしい……。
ふと。
工部編が終わらないのはこのRammyのせいなんじゃ……
というのは単なる責任転嫁ですかね。


やはり疲れているのか、ここまで書いてうたた寝(朝まで)してました。
寒いのと頭痛でそのまま布団へ。
起きてから昼食(昼に起きたから)取って頭痛薬に頼ったけど
まだ痛みがとれない。
風邪か。風邪なのか。
で、さらに寝なおして今は夕方。すっきり。
単に、睡眠が足りなかったのかな。


『君知るや南瓜の国』第一部・第八章:侍郎落ちて華美の秋を知る(つづき)

「まったくです。尚書、よいですか。確かに的確な量をたしなむ程度であれば酒は良薬となります。しかしどんなに良い薬であっても過度の摂取は普通の人間にとって害になります。侍郎も心配しておられるようですしここはひとつ、すっぱりとですなあ」
「じゃあ、こいつはおかしいとこないっていうのか?」
 老医師の熱弁を右から左に聞き流して飛翔は逆に問い返した。
「ありません」
「おそらくは」
 玉が、陶医師が畳み掛けるように答え、きまり悪そうに飛翔はそれでも頭を下げた。
「医師にせっかく来てもらったのに悪かったな」
「いえ。尚書の現状を知れてよかったです。これから時々は様子を見にきますから、せめて節酒はなさって……」
 なおも説教を続ける医師を尚書はなんとか工部から送り出したのであった。

「なんだよ、説教され損ってやつか?」
「あなたが私の話をきちんと聞かないからですよ。まあ、私の身体を気遣ってくださったことに関してはお礼申し上げますが」
 老医師の去った後、玉はもう一度提案を持ち出した。
「それでは改めて。あなた私と賭けをいたしませんか?」
「ん?何を賭けるんだ?」
「三日間。私があなたを怒ることが一度もなかったら、ひとつ私の言う通りにしてくれませんか」
 玉の言葉に、先ほどからの侍郎の様子が常になかったことの意味を飛翔は悟った。
「へー。で、もし三日お前がもたなかったらどうするんだ?」
「その時には、とことんまであなたの酒につきあう日を設けましょう」
 玉はその容姿に関わらず、王宮屈指の酒豪であった。普段は酒の匂いがつくのを嫌がって飛翔に付き合うことなどなかった。飛翔からしてみれば、やはり早々に酔いつぶれる相手より、酒に強い人物と飲む方が楽しい。
「――その賭け、乗った!」
「それではたった今から始めましょう」

 工部侍郎はその後、同じように工部官吏たちにも賭けを持ちかけた。
「これから三日間、私は尚書を怒鳴りつけないように努力いたします。正直に三日は無理だと思う者は挙手願います」
 尚書の性格は、ある意味工部の性格をも現していた。そこにいた全員がにやにや笑いながら手を挙げる。
「よろしいでしょう。私が三日もたなかった場合はあなた方に美酒なりご馳走いたします。ただし。私が買った場合は、全員私の命令をひとつきいてもらいますのでそのつもりで」

 こうして。欧陽玉と工部の賭けは始まった。
 飛翔はあえて普段通りである。必要とあれば手段を選ばない面もあるが、せっかくの賭けを反故にするほど卑怯ではなかった。もちろん普段通りであっても、常なら侍郎を怒らせるに十分な言動には事欠かなかったからではあるが。
 一日目は無事過ぎた。
 二日目、いささか疲労の色が見える侍郎はそれでもなんとか乗り切った。
 三日目。工部の誰もが侍郎の様子に固唾を呑んだ。かつてないほど静かな工部は、他部署からも何があったのかと問われる始末だ。
 やつれて、疲れて、いつもほどの余裕も感じられない。しかしそれでも玉は賭けに勝ったのだった。
「ではよろしいですね。工部官吏は尚書以下全員、月末前夜から我が家に投宿。家人に磨きたてさせますのでそのつもりで」
 三日間。耐えに耐えた玉は晴れやかな笑顔でそう宣言したのだった。
 かくして月末。欧陽家の家人たちにより改造された装束を纏わされ、飾り立てられた工部官吏は宮城の中でも一際目立つ存在となった。華美を極めた侍郎はもちろんのこと、徹底的にいじくられた尚書の様子はその後、代々の官吏に語り継がれるほどのものであったという――。

(つづく)



工部編、やっと終わりましたー!
量としちゃ絳攸の方が多いかとも思うんですが、細切れだからずいぶん書いた気もします。
それではお次は第九部:尚書の心、官吏知らず


拍手ありがとうございます!
あまり先は考えていませんが、あなたに楽しんでもらえるものが書ければと思います。

H19年11月3日

『隣の百合は白』を読んで一日が終わったように思います。
一日が始まったの、夕方だけどさ(前日日記参照)
ずっと読みたいと思ってた『恋愛指南争奪戦!』が読めたし、
(『お伽噺のはじまりは』は一応読んでたから)
なんと言ってもこれまでベールに包まれていた百合姫登場だものね!

この感想はまたおいおい。
ただねえ。
いくつか今書いてるのにひっかかりまして。
もう書いた分は流すとして。
いや、微妙に立ててた予定が読んだ影響で方向がちとずれたような。
でもまあ、元々アバウトもいいとこ、いきあたりばったりですが。


『君知るや南瓜の国』第一部・第九章:尚書の心、官吏知らず

 礼部尚書は真に礼を知る者である。だが残念ながらそのことを理解している者は少なかった。魯尚書が余計なことは口にしない男だからだ。
 昨年春、蔡尚書及び和官吏、以下数名が罷免された。魯新尚書の元、再編成された礼部は戸部に次ぐ少人数の集団となった。
  だが蔡尚書らの罷免理由すら告げられなかったことで、残された官吏たちの中には、長い物に巻かれる日々を送ってきた自分たちもまた官位剥奪の憂き目に合うのではと恐怖に震える者も幾名かあった。しかしそのまま彼らに沙汰はなかった。それ故に心疚しいところのある者はたいそう真面目に、疚しいところのない者はなお一層精進し、魯尚書の元、礼部は今ようやく正しい道に進もうとしていた。
 ただの官吏であったころから、魯尚書は厳しい男だった。問題児揃いの国試の際には進士たちを苛めにさえ見えるほど扱いてきた。そんな彼の本当の姿を知る者は礼部にさえ少なかった。

 国家の危機を救うべく、異世界の風習に習い悪鬼の扮装をせよとの命は礼部にももたらされた。礼部も六部の一であるから、指定された扮装は『きゅうけつき』である。礼部官吏たちは一様に尚服官による採寸を素直に受け、できあがった扮装を受け取った。奇抜な衣装ではあるが仕方がないことだ。少なくとも礼部だけでなく宮中全体で行うのであるから、なんとか耐えられると誰もが思っていた。しかし。

 月末も近づいたある日、礼部官吏全員が尚書に呼び出された。
「『きゅうけつき』の扮装をする日、礼部官吏は全員が侍郎から受け取った物を持参のこと。ただし、世話は各自でするように」
 それだけ告げると魯尚書は退席し、後は侍郎に任された。
(世話?)
 疑問を抱きつつ順番に侍郎よりちいさな虫籠が渡される。中には、逆さにぶらさがった――。
「こ、蝙蝠っ!?」
 虫籠の中にいるのはまぎれもなく蝙蝠だった。昼ということもあり、籠の天井に足をかけ、翼を畳んで眠っているようである。大きさは大人の手のひらで簡単に包みこめるほどだ。
「なんで蝙蝠なんですか!? この蝙蝠を世話するって何ですか!?」
 当然のように官吏たちから侍郎へと矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
「いや、私も尚書に命じられただけで理由はわからないんだが」
 困り顔で侍郎はそれでも蝙蝠入り虫籠を次々と手渡して行く。
「蝙蝠って、虫食べるんですよね? ということは、虫を捕まえてやらないといけないってことですか?」
 一人の官吏の質問に、その場にいた残り全員が虫取り網を持って駆け回る自分の姿を想像した。……子供でもないのにそれはあんまりだろう。
 情けない顔をした官吏たちに向かって、侍郎は慌てて否定した。
「いや、これは南の方に住む蝙蝠で、餌は果物だそうだから安心しなさい」
 一斉に安堵のため息が室内にこぼれた。だが、これで解決したわけではない。月末まで育てて、そして『きゅうけつき』の扮装のときに連れ歩けと?
 このわけのわからない状態に礼部官吏たちは全員で頭を抱えた。

 礼部尚書室にも虫籠があった。中にはやはり一匹の蝙蝠が眠っている。その様子を眺める魯尚書の表情は穏やかだった。
「目が覚めたら柿でもあげよう」
 異世界からの悪鬼を防ぐためと各部署に通達が回り、魯尚書も宰相である鄭悠舜から直々に依頼を受けた。
 国家のためとあらば、扮装くらいどうということもない。しかし、尚服官から見せられた『きゅうけつき』の絵図はあまりにも不気味だった。
 そのような格好を部下にさせるのも忍びないと思っていた魯尚書は、異世界のことにまで詳しいという霄太師に『きゅうけつき』について尋ねてみると、『きゅうけつき』には蝙蝠がつきものらしい。
 たまたま魯尚書は遠方の友人から贈られた蝙蝠を飼っていた。何でも南では大きい蝙蝠らしいのだが、彩雲国に連れて来た種は小型化してしまったらしい。
 手のひらに乗る蝙蝠はよく見ると可愛い顔をしており、飼ってみると頭もよいのがわかって、魯尚書はずいぶんと蝙蝠をかわいがるようになっていた。
(皆も、飼ってみれば可愛さに気付くだろう)
 そうして、怖ろしい悪鬼の扮装も可愛い蝙蝠が和らげてくれるに違いない。魯尚書はそう信じて疑わなかったのである。
 悲しいことに、まだ尚書のその思いやりを理解した礼部官吏はこの時点では一人もいなかったのであった――。

(つづく)


難問かと思ってた礼部がようやく片付きました。
ただ、魯尚書以外は現在在籍中の礼部官吏についてはまったくわかりませんので
すべて捏造でございます。


拍手ありがとうございます。
一日遅れですがなんとか気力を絞ることができました。

H19年11月4日

昨日は。
『隣の百合は白』に完全に頭を乗っ取られまして、
どうしても続きも日記も書くことができませんでした。
いやもう、各種妄想花盛り。
及び、頭の中の年表いじくりまくりで。
一日たってようやくさっき3日分を書いたのですけどね。
さて、今日の分、やっぱり何も考えてないけど書けるかなあ?


『君知るや南瓜の国』第一部・第十章:士は己を知る者の為に化すか?

「勝負だ!」
 左羽林軍の詰所に威勢のいい声が響く。やけに聞き覚えのある声だった。
 声の主は白雷炎。対するは黒燿世。
 聞き覚えのあるも道理、毎日のように聞かされていれば嫌でもわかる。国王の執務室から戻ってきた藍楸瑛はこれからの展開を思って内心ため息をついた。
(白大将軍は今日は一体どんな勝負内容を持ち込んで来たのやら)
 できれば、国家の精鋭である羽林軍の誇りを保てるようなものであって欲しいと楸瑛は切に願った。
 その願いはすぐさま真逆に裏切られることになる――。

(つづく)



すみません。二日分はやっぱりきついわ。
羽林軍出すってしか決めてなかったせいもかるかもだけど。
いやそれは全キャラか……。
ではまた明日ー。

H19年11月5日

職場の異動と毎日の連載と新刊に追われている間に。
気がつけばオンリーが終わっておりましたとさ。
…………。
ああ、あの方の新刊とかあの方の新刊とかグッズとか。
しくしくしくしく。
まあ、今回は行きたいとは思ってたけど自主的にやめて休み取り消したんだし。
正解だったと思うのよね。
異動で結構毎日疲れてるから。
それでも身体がふたつと資金があれば参加したかったなあ。

さて来年はどうなることやら。
サークル参加できるのか、はたまた一般参加できるのか。
それ以前に。
来年もオンリーってあるよね?ね?ね?あると言って欲しい……。
どちらにしても、とりあえずまだ一行だって書けてないオフ用構想話、
今月こそ少しは進めよう。
だって来月はたぶんクリスマス話で振り回されると思うから……。


今日は久々に影香妄想など。
ああ、やっぱり影香が幸せだよーっ!
連載終わったらこの妄想、書くんだもん!
だからもう少し、にやにやするのやめて、具体的にプロットにしないとね。
ちなみに。夏の話。
今、秋だけど。
まあ、季節はずれはいつものことだし。
ただ問題は。
上治五年の話にしたくて。でも上治五年の夏は結構既に過密スケジュール(笑)
ねじ込むのか?ここに?
でも上治六年の夏では駄目(遅すぎる)なんだ。
上治四年の夏も、スケジュール的にぎちぎちになってるからアウトだし。
まあ、なんとかねじ込もう、うん。

さて今日も何も考えてないまま羽林軍の続きにチャレンジさ。
……もう、次からはこんな先の見えない連載なんて絶対しない(泣)
そう言えば春の花見話の時にもやっぱり成り行きまかせで。
でもあの時はたしか。
「地の文のない会話だけの話なんてもう書かない!」
って心に誓ったっけ。
進歩ないな、私。


『君知るや南瓜の国』第一部・第十章:士は己を知る者の為に化すか?(つづき)

「こら燿世、お前だって月末の扮装のことは聞いてるだろ?」
 装束を揃えるのが困難ということで、武官は一律で『おおかみおとこ』になることになっている。もちろん、そこには羽林軍も含まれる。
 無言のままの黒将軍に、なお白将軍は語り続ける。
「六部とかに聞いたら、なんか同じ『きゅうけつき』でも部署によってそれぞれ個性出してってるらしい」
 早々に『きゅけつき』の扮装を纏わされている吏部は、尚書の異常な勤勉により、精力的に働く吏部官吏の顔色が日に日に悪く青白くなっていっているらしい。絵図の『きゅうけつき』もかなり青い顔をしていたから、まさにはまり役であろう。
 戸部では当日、尚書の仮面が貸し出されるらしいとの噂だし、工部では洒落者の侍郎が何やら企み、礼部ではおまけを持つらしい。
(あと、兵部と刑部はどうだったかな……)
 聞くともなしに耳に飛び込む白大将軍の声に、楸瑛も六部の扮装に関して聞いたことを思い出す。
「そこでだ。俺たちは羽林軍。一般兵士とは当然差をつけたいわけだ」

「ん?どうやって差をつけるかだと? それはだなあ」
 何故一言も黒燿世は話していないのに白雷炎は会話を続けられるのだろう?
 寡黙な上司の言葉数の少なさに苦労している楸瑛は、何故会話が成立しているのか理解に苦しんでいた。

(つづく)


うたた寝しちゃったんで寝おちします。おやすみなさい。

拍手ありがとうございます。
最後まで楽しんでいただける連載だといいなあ。

H19年11月6日

休日前日のお楽しみ。
それは普段簡単に終わらせる入浴のロングタイムバージョン。
早い話が長風呂ですな。
この場合、本気で長いです。
2時間とか3時間とか。
出たら外が明るいとか夏場ならありました。
本日はクロッキー帳を持ち込んで、
なんとなく描き散らしたかった赤頭巾香鈴を描いたり、
次回製作予定の携帯用裁縫箱のサイズと展開表を書いたり、
同じくな巾着のサイズを書いたり、
豆本の表紙案を描いたりとかとか。
楽しいです。
しかし最後に寝てしまうのだけはやめよう、自分。
これから風呂場でのうたた寝はますます危険をはらみますな。

ええ、出てから布団に直行しました。すみません。
実は結構、連載がプレッシャーになってる気もします。
楽しみにしててくださる方がいらっしゃるかどうかもわかりませんが、
せめて自分が納得できるようにはしたいです。
まだ最終のオチが決まってないんですけどね、ああ(泣)


『君知るや南瓜の国』第一部・第十章:士は己を知る者の為に化すか?(つづき)

「とりあえず、尻尾だな」
 また訳のわからないことを……。楸瑛は聞き耳をたてながらため息をつく。
「左右羽林軍総当りをやる」
 語り続ける白大将軍の言はまともに思えた。それならばと安堵しかけた左羽将軍だったが。
「で、俺んとこに負けたら、尻尾を白く塗る。お前んとこに負けたら仕方ないから黒く塗れ。羽林軍同士の決着がついたら、次は十六衛だ。勝負ふっかけて負かしたらやっぱり尻尾を塗る。そうやって、宮中の武人全部の尻尾見たら白黒どっちが強いか一目で誰にでもわかるって寸法だ。
 どうだ? のらないか?」
 自分の上司が乗らないわけがないことを楸瑛は熟知していた。その通り、すぐさま羽林軍両軍が呼び集められる。
「尻尾を白く塗られた奴は黒大将軍自ら一対一、一ヶ月の特別訓練」
 悲しい気持ちになりながら楸瑛は部下にそう告げた。告げられた部下の顔に必死のものが浮かぶ。もし、右羽林軍の兵に負けて尻尾を塗られたら。特訓は怖ろしいが、特訓よりも周囲からの軽蔑が待っている。下手をすると羽林軍から除籍という可能性すらある。
「必死で勝て」
 さまざまな気持ちをこめて楸瑛は締めくくった。
「藍将軍……」
 その弓術では目を見張るものがある皐韓升が何か言いたげに見上げてきていた。
「対戦相手はどうやって決めるんでしょう?」
「大将軍以下、順番を決めた紙をお互い交換するらしい。例えば私が二番だったら向こうの二番と対戦だな。まあ、おそらく私の場合は皇将軍だと思うが」
 実力に差がありすぎる相手に勝った負けたは無意味だ。もっとも、羽林軍総当りが終わったら、他部署の武人たちに問答無用で勝負を挑むことになるのだが。
「武器は問われないのでしょうか?」
「得意の武器があるなら使わないでどうする。ともかく、手段は選ばず勝つことだけを考えろ」
 運と忍耐力と弓の腕で知られる若き部下は、承知したとばかりうなずいた。

「次! 左羽将軍、藍楸瑛!」
 呼び出しを受けた楸瑛は修練場の中央に進む。対するはおなじみの皇右羽将軍――ではなかった。
「静蘭……!」

(つづく)


さて、どうしたものやら。あと2回くらいは羽林軍かも。でもこれで予定登場人物(未登場)は二人……のはずなんだけど。
取りこぼしがいそうで怖いです。


拍手ありがとうございます!
弱音吐きながらも書こうと思う気持ちが沸いて来ます。

H19年11月7日

ああ、ニッパーがない。ニッパーがないんだ。
ペンチはちゃんと2つあるのにニッパーがない。
……と書いたら出てきました。
意外に素直だな。
愛いやつめ。

ええと、気分転換にビーズで遊んでまして。
で、ニッパーなくて困ったなあ、と。

材料は各種揃ってるんで、その気になれば色々作れます。
自分用というより人形姫用がメインですが。
ま、見つかって無事、今日のはすごい簡単なものをいくつか。
異動前の職場の人に改めて挨拶行くときにおまけで渡そうかなあ、と
ちまちまストラップなどを作製しておりました。
楽しいけど、本当に自分不器用だと思います。

連載まとめページこちら

『君知るや南瓜の国』第一部・第十章:士は己を知る者の為に化すか?(つづき)

 予想外の対戦相手を前に、楸瑛は固まった。色々な意味で静蘭が相手というのは問題だ。自分も彼も、通常は本気で剣を振るうことはない。
(どう来る? 本気でかかってくるか?)
 おそらく相手もそれを気にしているだろう。
 思えば初対面で清苑公子に完膚なきまでに負かされたあの日から財布扱いの現在まで、自分はこの相手にどうも逆らえないものがある。
 だが同時に思うのは、まだ幼かった頃にあれほどまでの負けを喫していなければ自分は武人としての道を選ぶことはなかっただろうということだ。今ほどの力を持つこともなかったかもしれない。そういう意味では感謝してもいいかもしれない相手だ。
 初勝負の日に素直に負けを認めて、自分を配下にしてくれと頼んでいれば、もしや目の前の男の運命すら変わっていたかもしれない。藍家の後見を受けて流罪になることも紅家親子に拾われることもなく、王として君臨していたかもしれない。
 ただそれは、実現していたとしたら楸瑛には心の休まる時などなかっただろう。彼も自分も、苦渋を飲んで来たからこそ得たものもある。第一、楸瑛は今の王が気に入っているのだ。
 本気を出して、おそらくは五分。あちらとて白大将軍の手前、負けるわけにはいくまい。それはこちらも同じこと。
 楸瑛は無言で間合いを計って動き始めた。呼応するように静蘭もまた己の位置を確かな物にしようとする。
「……楸瑛が本気になったな」
「自称二十二歳もだ」
 修練場の雰囲気が張り詰めたものになったことを、その場にいた武人たちは肌で感じた。
 瞬間、対峙するふたりがぶつかりあった――。

(つづく)


話、進んでません。
しかも、なんかシリアス?
さてどう落とすべきか。
「落とすんかよ!」
とかいうつっこみも歓迎です。

最近、この連載にかなり気をとられているなあと。
考察とかもしたいんですけどねえ。
あと、何日かかるんだろう(遠い目)


拍手ありがとうございます!
嬉しいからがんばる力も搾り出します!

H19年11月8日

本日は一ヶ月のうちでもっとも忙しい日。
で、朝から晩までフル勤務(通常はシフト制)プラス残業のフルコース。
忙しいから時間のたつのが早くて、まあ仕事はそれでよし。

気がついたら買い物もしてるけど、それも許容範囲。
だって、以前から「買う」宣言してた月のペンダントですから。
ただし、安い方。
高い方にも未練たらたらで、ああ、いつか買ってしまうかも。
っていうか、ボーナス出たら気が大きくなって買ってしまうかも。
うーん、いっそ売れてしまえばいい。
ああ、でも他人の手に渡るのは悔しい。
……どっちだよ。

何故かセール品の手袋も買ってたけど。
しかも2枚。
毎年、なくしたり汚したりして消耗品ではあるんだけど、
2枚はいらないだろう、普通。
でも選べなかったのだ。
黒の手袋。ポイントはピンクのリボン。
ピンクの手袋。ポイントは同色のフリル。
持ち物ピンク化推奨委員としては、やはり手袋もピンクが望ましい。
……頼むから、コートまでピンクとは言うなよ自分。
ちなみに洋服では一時期ピンクばっかり着てた時期もあったさ。
で、飽きたというオチつき。
流行は繰り返すというが、自分の中の流行も繰り返すらしい。
ただし、現在のはあくまでも小物中心運動ではあるんだけどね。

さすがにくたくたに疲れて午前様帰宅。
さて……とパソコンを起動。
と、しばらくしたら画面がブラックアウト。
なにい!? と、キーを触ると復活。
しかし、しばらく画面を眺めるだけにしてるとまた消える。
何故だ、何が悪いのだ!?
そう言えば前日もそういう設定をしていないのに勝手にスタンバイに入られてしまったこと2回。
何やら変な設定がまかり通ってしまったのかと
あれこれシステムなど眺めるが、そんな設定はない。
悩んでいる間にいきなり
「ウィンドウズを休止します」
と、勝手に休止されてしまった。
しかも、電源スイッチ押しても復帰なし。

ぷちパニックを起こしながらパソコンまわりを確認。
コード、抜けてない。バッテリー、はまってる。
順番にそうして見て行くと。
……大元のコンセントのスイッチが切れていた。
つまりはバッテリー切れだったということか!
でも、いつもなら「電池残量が少なくなっています」
とか出るくせに今回は一切表示がなかったぞ?
あと、バッテリー残量が怪しいときにオレンジに点滅するとこもしなかったぞ?

ともかくコンセントのスイッチ入れて電源をオン。
今度は起動に成功。
しかし、「ウィンドウズを再開しています」という文字がいつまでもいつまでも表示されてるだけ。
結局、開いて作業してた分は消去して一から開始でようやく通常画面が。
あー、故障でなくてよかった。
電源スイッチが反応しなかった時のあの恐怖ったらなかったもんな。
数年前、先代のパソコンがおかしくなった時の絶望に似た感情が押し寄せる。
もうネットのない生活に耐えられません……。

……おわかりだろうか。
疲れ切っていた私は、この一連の作業に、さらに疲れてしまったのだ。
しかも翌日はまた早番シフトなんである。
寝ました。もう、布団まっしぐら。
その時点で午前3時は過ぎてたけどね?
ええ。
決して連載をさぼろうなんてそんなことは。
……ちょっとしか思ってません。
だって結局2日分ひねり出さないといけないんですから。
そんなわけでさてどうしようかとキーボードを叩きながら悩む実は9日なのでした。


『君知るや南瓜の国』第一部・第十章:士は己を知る者の為に化すか?(つづき)

 打ち掛かった剣を受け止められ、鍔迫り合いが続く。だがふいに両者はとびのき、再び間合いを取った。そうして、一切の動きが途絶えた。
 表面的に動きはない。だが対戦する楸瑛と静蘭の表情は真剣勝負であることを示しており、闘気だけが渦巻いていた。ただ互いに相手の気配を読み、その裏をかこうとし――。そこでは確かに目に見えない戦いが繰り広げられていた。
「……長引くな」
「ああ。空気がビリビリしてやがる。まったく、二人ともいっつもこれくらい本気になりゃいいものを」
 修練場では左右将軍の感想が落とされたのみ。対峙する二人ほどの技量を持たない武官たちは、緊迫した空気が和らがぬことに疲れさえ覚えてきた。
「……雷炎」
「ああ。気配に押されて部下どもの士気がかえって下がりやがった」
 情けない、修行が足りないと思いもするが、同時に無理もないとも思う。常日頃、鍛えに鍛え抜かれている羽林軍兵士と言えども、ここまで実力ある者同士の真剣勝負を見る機会は少ない。
 さてどうしたものかと二人の大将軍は思考を巡らせた。

 汗が流れ落ちるのを遠くに感じる。
(やはり、強い……)
 楸瑛は目前の男から来る覇気を受け止めながら我知らず笑っていた。強い相手と仕合える歓び。武人ならではの歓び。
(ずっと、あなたに一矢報いたいと思っていましたよ)
 文官として国試を受けて。藍家の意向や王の動きのなさに国武試を受けなおして朝廷に残った。榜眼で国試を突破した楸瑛だから、文官としての資質がないとは誰も言えまい。だがこうして剣を構えていると、自分の本質は武人としてのものであったのだと強く実感するのだ。宮中残留のための言い訳で武官になったわけではないと。
 何通りもの静蘭の戦術が頭の中で組み立てられ、それを破っていく。実際に攻撃を受けているのと実は大差ない。疲労は確実に積もる。
 どこからか何かが落ちる音が届いた。それは膠着を打ち破り、次の段階に進むべききっかけとなる。
 二人の武人はもう一度、裂ぱくの気合と共に剣を振り上げたが、そのまま振り下ろすことはできなかった。
「南瓜……」
 何故なら両者の中間に、突如として南瓜が転がってきたからであった。

(つづく)


えーと、羽林軍編はたぶんあと1回です。


拍手ありがとうございます!
さぼった分はきっちり取り返しますから待っててください!

H19年11月9日

早番だったので会社近所のアニメイトに寄り道。
いや、本当はアニメイトと同じビルに入ってる店に用があって。
でもその店、閉店が早くて結局ほとんど見られず。

で、アニメイトに行ったならば。
彩雲国グッズの有無を確かめてしまう。
うん。まだあった。
まるマと少年陰陽師に押されて小さくなって、それでもあった。
しばらく行かないうちに見慣れないグッズが出ていた。
ちびキャラ版のクリアファイル、ピンズ、メモ、携帯クリーナー。
そして、これはアニメイトの企画なんだろうか。
もう知ってる人も多いと思うけれど缶(350ml相当)型小物入れが2種類。

ひとつは「父茶」版。
あおりとか、紹介とか、書いてある文が結構面白かった。
こういう遊び心のあるグッズは大好きだ。
でも私は黎深でも珠翠でもないから買わない(笑)

もうひとつが、普通の日本茶の缶風で。
以前ニュータイプだかに載ってたという、男性キャラ浴衣姿イラストの缶。
正直、後者を買おうかどうしようか悩んで、店にいる間に5回くらい手に取った。
だって。
そのイラストの中には影月もいるんだよ!
TO EIGETSU なんていう文字だって入ってるんだよ!
たとえ集団であろうと、
影月のイラストの入ったグッズなんて発売される可能性は今後あまりにも低い。
ちびキャラバージョンも、秀麗、劉輝、静蘭、楸瑛、絳攸だったし。
ちなみに浴衣イラストは、劉輝、静蘭、楸瑛、絳攸プラス、龍蓮と燕青と影月。
へへー。みんなかっこいいぜ。
影月の浴衣姿は、まあ、うん、えーと、かわいいんじゃない、かな?
彩雲国絵巻でこのイラスト見てなかったら、このグッズ、買ってたかもしれない。
買わなかったのは。
部屋にこの缶を置いておいてあるところを想像したら、恥ずかしくていたたまれなくて。
さすがに、ちときついわ。どうせ使えないし。

過去の経験により、
グッズの類は
大萌えに萌えて集めたとしても、
やっぱり使えないで置いておくばかりとわかっているから。
ただし。さすがに10年たてば使える。家の中限定でだけどね。
でも使えないグッズも多いんだよ。
ちなみに、捨てられないそんな過去の歴史が部屋の中には埋まっている。
「ここはグリーンウッド」とか「サムライトルーパー」だとか、「ヒカルの碁」だとか。
ついでに、それらの贔屓キャラが手塚忍と羽柴当麻と和谷義高であることを告白しておこう。
今でも3人は結構別格だなあ。

ところで、絵巻でこの浴衣イラストを見た時。
「浴衣イラスト、女性キャラバージョンもプリーズ!」
と真剣に思いました。
女性ファンが大半であろう彩雲国のファンの中でも、
こんなことを熱望する奴は少なかろうとは思います。
でも見たいよ。香鈴の浴衣姿!
そりゃもう、妄想の中じゃ香鈴ちゃんは私に着せ替えさせられまくってるけど、
やっぱり絵として見たいんだよ!
誰か描いてプリーズ!
あ、今からなら浴衣より着物で!

そうそう。第二期のDVDも3巻まで発売されてたけど、
一体、影月編は何話までなんだろう。
公式HP見たらわかるんだろうけど、
公式覗くとダイレクトに衛星放送見られないのが悲しくなるので見ないようにしてる。

ちなみに、この時期お約束のカレンダーはなかった。
アニメ版だろうが、由羅さんのイラスト版だろうが、
影月が1枚でもあれば買ってしまうかもしれない怖ろしいアイテムである。
ちなみに。
この手のカレンダーは他のグッズよりもっと始末に悪い。
何故なら、完全に使えない。
カレンダーとして使うと、スパイラル版じゃなかったら切らなきゃいけないし、
スパイラル版でも汚れる可能性あるし。
で結局、丸めたまま部屋の奥で年月を過ごしてもらうことになる。
なら買うなと言われそうだけど、惚れたキャラがいれば欲しいんだよBABY。
うーん、ファンって馬鹿だなあ。
でも、出たら踊ってあげるよ?
影月がいなかったら買わないけど(笑)


『君知るや南瓜の国』第一部・第十章:士は己を知る者の為に化すか?(つづき)

「す、すまない! 悪気はなかったのだ!」
 南瓜を転がしたらしい張本人は、その場にいた全員の視線を受けて小さくなった。
「主上……」
 ため息とともに楸瑛はつぶやく。一気に闘志も失せてしまった。それは対戦者である静蘭も同じであったらしい。楸瑛にとっては劉輝は弟のようにかわいいが、静蘭にとってはかわいい実の弟である。
 さすがの大将軍も、仕合いを邪魔したのが国王では怒鳴るわけにもいかなかった。
「なんてえとこで邪魔してくれやがる」
 と、それでも白雷炎はぼやいたが。
「ふ、二人の気迫がすばらしくて思わず見入ってしまったら、つい手元が疎かになってしまったのだ。本当にすまない……」
 本気で悪かったと思っていることを全身で表現している国王に、剣を収めた楸瑛が尋ねる。
「ところで主上、何か御用ですか? それと、なんでまた南瓜なんか持ってるんですか?」
 後の質問は、この場にいる者すべての疑問でもあったであろう。国王に南瓜。……似合わない。怖ろしいくらいに。なまじ顔がいいだけにその違和感は強烈だ。
「南瓜は、その、両大将軍に提案がてらに持ってきたのだが……」
 良く見ると、転がっている南瓜は作り物のようである。
「提案ですか? まあ聞くだけなら聞いてさしあげてもかまいませんがね」
 暗に『くだらんことぬかしやがったらただじゃおかねえぞ』という含みを持たせて白雷炎がすごんだ。無言で同意を示す黒燿世。二倍怖ろしい状況だ。普通なら二大将軍にこんな風にすごまれては、どんな正当な発言であっても引っ込めてしまいそうなところだが、この国王は妙なところで度胸がある。
「余、余は。南瓜仲間が欲しいのだ……」
 その発言の意味を正確に理解したのは側近である楸瑛ただひとりであった。
「主上、いくら一人きりの『かぼちゃだいおう』が嫌だからって、なんだってよりによって羽林軍なんです?」
「う、羽林軍なら勝負が絡めばきいてくれるんじゃないかと……」

 『勝負』の一言に二大将軍が反応した。
「で、主上がなんの勝負を?」
「武官の月末の装束は『おおかみおとこ』で。耳と尻尾さえつけてればいいのだと聞いた。それならば、南瓜をかぶって南瓜に耳が付いていたって構わないと思ったのだ」
 たしかに、『南瓜のかぶりものを付けてはいけない』という規定はない。
「んなもの、誰も喜んで従いませんよ」
 いささか呆れを含んだ楸瑛の言葉に、劉輝はうなずく。
「だから勝負の結果なら聞いてくれるかと。その、羽林軍の強いことは余も知っている。だから余と剣で勝負して、負けた者が南瓜をかぶってくれないだろうか」
 こんな発言をした国王など、彩雲国の歴史を紐解いたところできっとこれまでにはいなかったであろう。南瓜云々は置いておいても、まがりなりに国王に剣を向けろとは言えないはずである。
「それは主上が勝った場合ですな。負けた場合はどうしますか」
 条件は公平でなくてはならない。雷炎はそのあたりを指摘する。
「先ほど尻尾を負かした相手の色に染めると聞いた。だから、余を負かした兵の数だけ、色つきの尻尾を付けようと思う」
 『かぼちゃだいおう』とて尻尾を付けるなと言われたわけではない。
 白大将軍の顔に面白がる表情が浮かんだ。国王が白い尻尾をいくつも付けているのは見物かもしれないとおそらく雷炎は考えたのだろう。
「なるほどね。しかし、兵の士気はそれじゃああがりませんな」
「余に勝った者、余に負けて南瓜仲間になってくれた兵には……。そうだ!当日後宮に茶に招こう!」
 一昨年末、宮中を巻き込んだ騒動で、後宮へ入った兵はいた。しかも、その後宮女と結婚できた幸福な者も複数名。けれど、それはほんの一部でしかない。同僚の幸運を聞き、関門を潜り抜けられずに涙した兵も多かった。国王の発言に目の色が変わった部下を見て、白雷炎は黒燿世に視線を向ける。左羽林軍大将軍はただうなずく。
「いいでしょう。その勝負、受けようじゃありませんか。――おい!この勝負に挑みたい奴はどいつだ!?」
 白大将軍の声にたちまち名乗りを上げるものが殺到する。
「やれやれ。では私と静蘭が審判役を務めましょう」
「そうですね。ただし、勝負は木刀でということで」
 国王に真剣はさすがに向けられまい。静蘭の提案に劉輝も安堵を浮かべる。
「うむ。木刀ならば、刺したり切ったりは避けられるからな」
「ただし、打ち身はこたえますよ。それと。明日の執務に差し支えても容赦はしませんからね」
 楸瑛とて劉輝を甘やかすばかりではないのだ。
「うむ。気をつけよう」
 嬉しげにそれでも劉輝は楸瑛に笑顔を向けた。
「よし!主上と仕合いたい奴、とりあえず静蘭の前に並べ! 言っとくがな、主上はそこそこの腕だぞ。みっともない姿は見せるなよ!」
「そこそこって……。それは白大将軍からすればそうかもしれぬが」
 たちまち表情を曇らせる劉輝であったが、提案者でもある彼にいつまでもいじけている暇はなかった。
 静蘭の元で所属と名前を告げて、まず一人目の勝負が始まった。
「よし!行け!」
 楸瑛の声と共に、こうして国王対羽林軍有志の勝負が始まった。

「次!」
「お願いします!」
 倒れた兵を蹴り転がして楸瑛は進行と審判を勤める。
 やはり劉輝の腕は並ではない。わずかな時間で確実に南瓜仲間を増やしていく。
「こ、後宮……。きれいなおねえさんとお茶……」
 だが、あまりにも甘美な餌を前に名乗りをあげる兵は減らない。ちぎっては投げ、ちぎっては投げる劉輝にも疲れが見えはじめる。
「ほらお前ら! 主上は疲れてきてるぞ! それで勝てなくてどうする!」
 雷炎の叱咤激励に兵は木刀を振り上げる。だが、劉輝とて負けてはいられない。
「南瓜仲間……南瓜仲間を作るのだ……」
 さすがに宋太傳に鍛えられていただけあって、疲れを見せたといえども劉輝には余裕もあった。劉輝を鍛えたかの老将軍の体力は並ではない。
 こうして劉輝は尻尾を付けることなく南瓜仲間を得ることに成功した。負けた兵たちも餌の約束に南瓜をかぶることすら嬉しそうだ。
 もっとも。宮女たちが南瓜をかぶった男なんかをどう思うかなどと考え付いた者は誰もいなかったらしい。
(憐れな……)
 楸瑛はそれを思うと心で涙した。

 かくして、劉輝は『かぼちゃつきおおかみおとこ』となる兵たちに、かぶりものと当日の後宮お茶会権を贈った。国王の表情は晴れやかである。二大将軍は、劉輝に尻尾をつけられなかったこと、誰もが勝てなかったことに少し面白くなかったらしい。
 この一幕において国王の剣の腕前を知って羽林軍兵士の国王への忠誠心が上がったというおまけつきであった。
 翌日、楸瑛と静蘭を抜いて、予定通り両軍の勝負は行われた。その後、雨あられと羽林軍の襲撃を受けて色つき尻尾をつけるはめになる武官たちからの苦情が殺到することになるのだが、それはまた別の話である。

(つづく)


羽林軍編、終わりですー。
オールキャラ残りも少なくなってまいりました。
舞台は最後の部署へとまいります。
明日は「行方も知れぬ絹の道かな」です。


拍手ありがとうございます!
連載、もう少しおつきあいくださいね。
早く影香が書きたい!

H19年11月10日

先日、古本屋にて彩雲国の1巻をまた見つけたので、
何も考えず表紙も見ずにつれて帰ってきました。
で、帰宅してから「?」と。
中身はH19年6月1日発行の22版です。
ところが表紙に秀麗しかいません。
派手派手しくいた劉輝がいません。
で、昨日、アニメイトで彩雲国を眺めてみました。
24版でしたが表紙はおなじみのものです。
……ミステリー?
手元にある秀麗しかいない表紙は、
コミックスが文庫になった時のような印象を受けました。
でも、セールス的に考えても、以前からの表紙の方が絶対いいと思うんだけど?


さて、本当に行方のわからない連載、行きます。
あ、これは『青嵐』以降、『白虹』以前の設定でお願いします。
連載まとめページこちら

『君知るや南瓜の国』第一部・第十一章:行方も知れぬ絹の道かな


 月末の異装強要は、もちろん後宮にも出されていた。
「えー? 何? 後宮の女官は『てんし』か『まじょ』のどちらかを選べ?」
 与えられた一室で十三姫は通達に眉を顰めた。
「珠翠、『てんし』とか『まじょ』って、何か知ってる?」
 後宮で女官を束ねる美女は困ったように睫毛を伏せた。
「あいにく私は存じません。ですが、霄太師か邵可様でしたらきっとご存知かと」
「そうねー。どう? 二人で府庫に行ってみない? 主上の話じゃ霄太師ってかなり食えない人物らしいし」
 珠翠の顔がぱっと明るくなる。美人が微笑む様はまるで光が差すようで、同性ながら十三姫はこのふいうちに心臓に打撃を受けた。
(楸瑛兄様の気持ちがわかる……ような……)
「と、とりあえず行きましょうか」

 本来であれば後宮の住人が後宮から出ることは許されない。だが正式に妃がいるわけでもない現在の後宮では規則はあれど大目に見られているのが現状だ。もっとも、それは後宮の女官が仕える相手が劉輝だからこそで、前王崩御までの後宮であったなら死刑を宣告されても仕方のない行状と言えた。
 十三姫とて、これまで武門の誇り高い司馬家に育った身。閉じ込められての生活が嬉しいはずもない。
(あー、馬に乗りたい)
 そう願ったところで実現するはずもない。
(うーん、この月末の騒動を利用できないかしら?)
 現王の妃にもっとも近い場所にいる藍家の姫が心の中でそんなことを企んでいるなどと予想できた者はいなかった。
 永らく後宮に暮らしており、現在は劉輝の信頼も厚い珠翠は、人目につかない道を案内する。だが、府庫が見えたところで筆頭女官は十三姫に心からの忠告をした。
「邵可様は良い方なのですが、あの方が出してくださるお茶はお飲みにならない方がよろしいかと思います」
「なに? まずいの?」
 直接的な十三姫の言葉に、珠翠は曖昧な微笑を浮かべる。
「中には倒れた方もいらっしゃるとかで」
「毒ではないのよね?」
「もちろんです!」
 それならばと十三姫は覚悟を決める。毒でないのならばとその時はまだ気楽に構えていたのだった。

「おや、珠翠いらっしゃい。そちらは……ああ、藍家の十三姫ですか?」
 穏かな風貌の府庫の主の姿に十三姫は安堵し、快活に挨拶をする。
「はい。兄たちから邵可様のお話は伺っております」
「雪那殿たちも立派な当主におなりのようで嬉しいですね。さあ、こちらへ」
 府庫の奥へと案内されて、やがて目の前に噂のお茶が湯気を立てていた。横に控えた珠翠が無言の警告を送ってくる。だが十三姫は怯まなかった。ごく少量の茶をそっと口に含む。
 自分でもその時噴出さなかったのは上等だと思う。強烈な刺激に涙がにじんだ。震える手で茶器を置くと本題を切り出す。
「邵可様、『てんし』と『まじょ』について何かご存知でしょうか」
「月末の扮装のことですね。資料をお持ちしましょう」
 邵可が席を立って書棚の方に消えると、十三姫は額に浮かんだ脂汗をぬぐった。
「警告いたしましたのに」
 年上の美女が労わるような視線に僅かの非難を含ませる。
「だって珠翠、平気で飲んでたじゃない」
「平気ではありません。ですが私の場合は慣れもありますし」
 後宮に勤める珠翠が慣れるほど府庫に通っていたとは思わなかった。
(もしかして府庫に来る誰かと逢引してたとか……)
 一瞬そのように考えたのだが、珠翠の様子にはそうした甘やかさはない。
「ごめんなさい。気をつけるわ」
 邵可が戻ってきたのに気が付いて、十三姫は小さく謝罪してその件は終わらせた。

(つづく)



はい、後宮編になります。やっぱり1回では終わらないみたいです。
この後宮編が終わったら最終章(月末当日編)に入る予定です。
が、それをどうするかがさっぱりで。
しかも、これだけの登場人物です。
それだけでも長引くのは必至でしょう。
まったく楽しんでないわけでもないのですが、ここまできても先が見えない。
行き着く先が見えないことがこれほど不安だとは。
教訓。
見切り発車はやめましょう。

もう影香書きたくて泣きそうです。
いや、自分の影香への愛を試されているのかもしれません。
同時に影香も進められれば問題ないようなものですが、
一度に二つのことは考えられません。
とりあえず、プロットは練っておこう……。

ただ、この連載でひとつ思ったこと。
プロットさえ出来上がっていれば、無理矢理でも毎日書くようにすれば
きっと書く量と速度は上がる、です。
三日坊主がデフォの私がです。
もう二十日以上連載を(息も絶え絶えでも)続けているんですから、
やればできるんじゃないかな、とか少し思ったりして。
しかしせめて一ヶ月過ぎる前に完結させたいものです。

ちなみに、すごく量を書いてる気がするんでちょっと調べてみました。
前章の羽林軍編までで原稿用紙101.3枚、31558字。
…………。
憧れの「原稿用紙100枚超え」をまさかこんな話で達成しようとは……。
そして終わるまでに後どれだけ書かねばならないのか、
かなり不安になる私なのでした。


拍手ありがとうございます!
このヤマを乗り越えていく力をもらってます!

H19年11月11日

すみません。『風土記』に手を入れてたら時間がありません……。
ただ今改装中です。見られますが。
明日、ちょっとやっかいな仕事があるのでこれで落ちます。
今日の分は明日書くので申し訳ありません。


でまあ、振り返ってみる11日。
特に何事もなく過ぎ。
彩雲国関係で萌えを叫んだり考察ぶちかましたりなら
いくらでもできるけど、
やはりまずはノルマと向き合いましょうか。


『君知るや南瓜の国』第一部・第十一章:行方も知れぬ絹の道かな(つづき)

「『てんし』と『まじょ』とのことですが、これらにいくつかの記述があります」
 いくつもの巻物を持参した邵可は机の上に広げてみせた。
「うわーっ、変!」
 目の前に展開される異世界の珍妙な絵図に、十三姫の口からごまかしのきかない本音が零れ出た。
「異世界のものですから、我々の感覚からすると奇異に見えるのも仕方がありませんでしょう。何せ、風土も慣習もましてや住む人が違うとなれば」
 自分の娘と同じ年の姫を邵可は微笑ましく見守っていた。こういった素直な性格は好ましい。
「それはわかっているつもりなんですが。うわー、この『てんし』って奇形ですか?人間に鳥の羽ついてるはずなんてありませんよね。第一、鳥なら体重が軽いから飛べるけれど、人間の体重をこれだけの翼で支えられるとは思えないし。実際には飛行できない過去の名残か何かなんでしょうか?」
 才気を秘めた十三姫の発言に邵可は嬉しそうに答える。
「この『てんし』というのは、異世界の普通の人間ではありません。神――天上の使いであるようです。ですから、普通の人間のような体重は持たないのかもしれません」
 彩雲国にも伝わる仙人の一種のようなものではないかと邵可は説明を続けた。

「この月末の扮装ですが、提案されたのは霄太師とお聞きしましたが」
 それまで口をはさむことのなかった珠翠が控えめに発言した。扮装であるならば色々あるにも関わらず、何故に現在各部署に通達されたものになったのかが疑問とのことだった。
「あの狸爺……あ、いえ、博識な前宰相殿を締め上げ……いえ、問い詰めましたが、一応選ばれたのは異世界で悪鬼退散の際に使われることがもっとも多い装束ばかりであることは確認されました」
 邵可の表情は穏かなままだがいくらかの失言が見られる。
(邵可様、やっぱり霄太師を狸だと思ってるんだ……)
 たいていの彩雲国国民からすれば伝説上の名宰相も、兄たちからの情報や、宮中の上層部の人間の意見ではやはり近寄りたくない人種であると思われた。この人格者である邵可から伝わる拒否反応が何よりもそれを雄弁にあらわしていないか。
(主上の意見では偏りすぎだと思っていたけど、やっぱり食えないんだ、霄太師)
 その場にいる珠翠だけが複雑な表情をしている。もちろん、十三姫は珠翠の後見が霄太師であることは知らなかった。

「『てんし』の場合、白い長衣と羽つけて、で、髪はおろし髪なのね。この輪っかはどうしたらいいのかしら?」
 もう一度絵図を眺めながら十三姫は『てんし』の頭上に浮かぶ光る輪を指差した。
「輪っかは、額飾りなどでそうと見えればよいのではないでしょうか」
 それについてはある程度考えていたらしい筆頭女官がすかさず答える。
「なるほど。珠翠、もし『てんし』をやりたい宮女の方が多ければ、このあたりの鳥は災難よねえ。鵞鳥とか、アヒルとか。このへん、白鳥は飛んでくるの?」
「白鳥はもう少し北でないと。ですから、飼育されている鵞鳥やアヒルに頼ることになるでしょうね」
 食用に、あるいは防寒にと鵞鳥やアヒルは多く飼われているが、少なくなったとはいえ宮女全員の分を賄おうと思えば、宮中の施設だけでは追いつくまい。
「そうなると、なるべく『まじょ』をやってもらう方がいいんだけど。うーん、こっちは対照的に黒ずくめね」
 特徴的な三角の帽子。黒ずくめの衣装。そして必ず手に箒。
「どうして箒を持っているのでしょう?」
 一応、悪鬼のうちらしい『まじょ』だが、箒であたりを掃いてまわるならばそれほど悪鬼とも思えないと美女は口にした。
「ああ、『まじょ』はそれに乗って昊を飛ぶのだそうですよ」
 予想された質問に邵可は笑顔とともに答えを返す。
「え!? この箒って仙具なんですか?」
「いえ、『まじょ』そのものが仙術に似た力を使うそうです」
 しばらく両方の絵図を見比べていた十三姫はやがて顔を上げると言い切った。
「私は『まじょ』にしておくわ。珠翠はどうする?」
「わ、わたしも『まじょ』にしておこうと思います。帽子は変ですが羽を付けるよりは我慢できそうですし」
「そうよねー。あ、邵可様、ありがとうございました。これで他の女官たちにも説明できます」

 やがて元気に立ち去る十三姫と控えめに会釈する珠翠を見送って邵可は広げられた絵図の前に戻る。
 悠舜から相談を受けた後、即行で探しにいった霄太師は、何やら酒の匂いをぷんぷんと振り巻いていた。詰め寄る邵可を相変わらずのらりくらりかわす。
 しかし生憎、そこには事実しかないらしかった。羽羽から読み取った星の凶兆を知らされたこと。対処方法として異世界の流儀に習うことにしたこと。異世界でその際よくされる扮装に指定し、各部署への割り当てを大まかに決めたこと。
(あやしい……)
 そう聞いても邵可の心から疑いの気持ちは消えない。それでも今はまだ尻尾をつかめない。月末は確実に近づいて、宮中はすでに巻き込まれている。『きゅうけつき』の扮装をした弟が府庫の傍にうずくまっていたりもする。
(尻尾をつかむには当日まで待つしかないのか……)

 後宮に戻った十三姫と珠翠は宮女たちを全員集めて説明をする。説明を受けた宮女のひとりが質問してきた。
「どちらを選ぶか自分で決めてもよろしいのですね?」
「そうよ」
「では……」
 蓋を開けてみれば、『てんし』をやりたがる者の方が若干多かったくらいでほぼいい人数比で納まりそうだった。
 珠翠からの意見もあり、十三姫は『てんし』組に変更した。誰か監督する者が必要だからだ。しかし、それを承諾した十三姫の内心には、府庫で見た絵図の中に剣を帯びた『てんし』を発見したことがあったことは、さすがの珠翠にもわからなかった。

 そうして、『てんし』組と『まじょ』組に分かれて装束の準備を始めたのだが、十三姫はそこで妙に活き活きとした宮女たちの本領発揮にぶつかるのである。
「絹は碧からの極上品でなくては!」
「金糸で縫い取りもいたしましょう!」
「髪を下ろすのであれば、細かい網に宝石を縫い付けたものを被るのはどうかしら?」
 宮女たちは元々才色兼備の美女揃い。おのれを磨くこと、美を追求することにかけては他の追随を許さなかった。
「いや、あの、もっとおとなしくてもいと思うの……」
 十三姫の主張は聞き流される。
「姫君には藍色の石をやはりあしらっていただいた額飾りを用意いたしましょう」
「工部管轄の工匠に頼めないかしら」
「羽にももちろん、何か飾りをつけなければ!」
 気が付けば、十三姫の衣装は、とてつもなく華美なものになっていたのである。
 そうしてまた、国王より当日武官の一団を後宮に茶に招く旨伝えられると、宮女たちの準備にさらに熱が入ったことは言うまでもない。

(つづく)


なんとか後宮編、終わりです。
ここまでは、まだぼんやりと「キャラを出す」こと主眼に進めてきましたが、
いよいよ前人未到の月末ハロウィン当日の最終章に入ります。
私の明日はどっちだろう……。


拍手ありがとうございます!
がんばって連載進めて楽しんでいただけたらと思います!

H19年11月12日

仕事というか、会社であったのは、一種の面接のようなもので。
ああいう場面であがらない方法があれば知りたいわ。
当日朝に準備しようと思っていたら
社長朝礼なんて滅多にないものがあって走り回るはめになり時間なくなったし。
ただまあ最近、否応なく人前でしゃべらされたりする機会が増えたせいか、
変な度胸はついたような気もする。
ああ、それでも、あの辺、ちょっとリセットしたいかも……。

それが午前中にあったので、一日分の気力をごっそり持って行かれてすっかり無気力に。
あとは条件反射で仕事してたような気がします。
帰宅しても頭が働かず、何故かビーズを編んでいました。
……本当、何でだ???
そんなこんなでノルマ3日抱えた実は13日なのでした。


『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る人もなし

 月末当日。宮中は異様な雰囲気に包まれていた。
 王宮の朝は早い。その早朝に、御前会議すなわち朝議が行われるのだが、その様子は朝なのにまさに百鬼夜行。
 橙色の南瓜の被り物をして外套を翻す国王が座し、合図と共に百官の長たちが顔を上げる。
 国王の傍にはべり、他を圧する霄太師と宋太傳は尖った角付きの黒装束の『あくま』である。議会を進行する鄭悠舜と彼の所属する尚書省六部は『きゅうけつき』。貴族派の多い門下省は包帯をぐるぐる巻いた『みいらおとこ』。秘書的役割を担う中書省は『ふらんけんしゅたいん』で、顔につぎはぎ模様や糊で貼った釘などを付けている。仙洞省は敷布を被った小さな姿がふたつ。仙洞省は『しーつのおばけ』らしい。
 各長官とその補佐だけでこの異様。これがさらに宮中すべてで繰り広げられているかと思うとめまいのようなものさえ感じられる。
 宰相の『どらきゅら』悠舜に合図を送り、仙洞省の『しーつおばけ』令尹、羽羽がまず口を開いた。
「此度は我らが彩雲国の危機に対して各省庁の皆々様のご助力に感謝いたします。不便をおかけいたしますが、なにとぞ本日を乗り切るべくお願い申し上げます」
 それを受けて『かぼちゃだいおう』紫劉輝国王は『どらきゅら』悠舜に何事かを告げ、やがて直接話始めた。
「諸官にも今日という日の重大なこと、理解してくれていると思う。余とて戸惑うばかりではあるが、本日は立派な『かぼちゃだいおう』となる故、皆もそれぞれ役目を全うしてもらいたいと思う」
 やがて議題は通常の朝議と同様のものになる。それでも同じはずの朝の風景は異様な迫力を持ってそこにあった。何も知らない一般の子供などが見たら、きっと泣き出してしまうであろう訳のわからなさである。それが宮中一斉規模で行われているのだ。もしこの日、何事もなく過ぎたとしても、十二分に異常事態であった。

(つづく)


はい、ようやく最終章、当日です。
今回はそのプロローグ部分に相当します。
一応、時間軸順にすすめる予定ですが、正直、どうなるかわかりません。
皆様の応援を切に希望。
最終章の希望リクエストも歓迎。
それくらい何も考えていないんですけどね(遠い目)


拍手ありがとうございます!
おかげでドリンク剤不要です!

H19年11月13日

数日前の日記でも書きましたが、
『風土記』の改定というか、改装というかちょっくら手を入れてます。
しかしこれが。
終わらない。まったく。

資料として原作を一冊取り出したとします。
ぼろぼろ追加記載しなければならないことが出てきます。
別に、誰かに「完璧にしろ」と言われたわけでなく、
それこそ好きでやってるというか、自分が話を書く時困らないようにと作ってるんですが。
実際、役立ってます。
「あのキャラの名前〜」とか。
漢字が面倒なのよね、彩雲国のキャラって。
辞書登録してるメインのキャラはともかく。

とりあえず、ほとんど表の中にぶちこみました。見やすくなったと思います。
読み仮名もつけました。
もう慣れたので自分は読み仮名いらないけど、
万が一資料にしようと見ている人に不親切なのもねえ。

で、どうしてこんなに追加記載が出てくるかというと、
『風土記』というコンテンツを作ってからの私の意識の変化というか。
最初はいくつかの便利な覚書兼、
FRの辞典(わからない人ごめんなさい)みたいなことしたかったわけで。
だからコメントも結構ふざけてるんですが。
ただ「役に立つ」とか言われることも出てきて、真面目な記載もすることに。
自分の中じゃ明確で説明不要だから省略してたものでも付け加えたり。

そんなわけで原作を読み返すたびに発見があります。
ある意味、毎回新鮮に原作に向き合えます。
でもって、私の目は節穴なので、それでもぼろぼろ取りこぼしてます。
つまり、永遠に完成しないコンテンツ、それが『風土記』なのでした……。


ところで何も考えてない連載のことですが。
登場人物30余名。
どうしろと。
本気で脇役(名前出しただけ)の数名には諦めてもらって、それでも書き出した名前が30人分。
で、わざわざ名前を書き出して途方にくれた私が何を始めたかというと。
「贔屓なし!大アミダ大会!」
……一人でアミダって、かなり虚しい。いくら困ったときはアミダの神様に限るからって。
こうして、5人ずつ6組のグループを作ってみました。
すごいよ。おそろしく接点のない組み合わせがぞろぞろだよ。
どんな運命のいたずらでこの5人(ずつ)が顔合わせるのか想像もつかないような……。

もう半ばやけくそなので、この6組大公開

1:羽羽、凌晏樹、シ静蘭、楊修、陸清雅
2:景柚梨、藍楸瑛、宋太傳、紅黎深、珠翠
3:黄奇人、葵皇殻、榛蘇芳、管飛翔、碧珀明
4:霄太師、紅邵可、孫陵王、紅秀麗、魯尚書
5:紫劉輝、旺季、陶医師、白雷炎、十三姫
6:李絳攸、縹リオウ、鄭悠舜、欧陽玉、黒燿世

あなたはこの5人ずつでどんな物語が展開されるか読めますか?
正直、私には読めません。
特に、第一組、怖すぎませんか。ああ、羽羽様だけが憩い……。

ちなみに、たとえこんな組み合わせができたとしても、書かねばならないこととかあるわけで。
(なんとなく伏線めいた一言とかのせい)
最終ラストはごちゃ混ぜ必至。
うん。これ、ギャグなんだ。
ナンセンスでシュールでファンタジーで。なんかそういうもんなんだ。
アミダの神様の馬鹿。
余計ややこしくなったじゃないかーっ(大泣)
無視してもいいかなあ。アミダの神様……。
ともかく本気で完結させたいので、毎日できるだけ書いていきたいと思います。

連載まとめページこちら

『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(二回目)

 朝議が終わって、高官たちは改めて同席した者たちの姿を見る。
 異装、満開。特に他部署の仮装に目を見張る。
「中書省の『ふらんけんしゅたいん』はすごいな」
「いや、六部の『どらきゅら』も多種多彩だぞ」
 誰もが楽しくてやっているわけではない。しかし、それを高みの見物と楽しんでいる者もあった。名誉職であり実権は持たないものの誰も無視できない存在、すなわち霄太師と宋太傳である。

「こりゃ見物だな。霄、お前狙っただろう」
「何のことだか。儂がそんな極悪非道なわけなかろう。すべては国家の危機のためじゃ」
 さも善良そうな無害な老人めいた声を出す霄太師の頭上で先の尖った角がぴょこぴょ揺れる。ついでに帯から垂らされた尖った尻尾もぴょこぴょこ揺れる。――とても悪巧みが似合う。
 蝙蝠の翼に似たものを背中に背負った宋太傳はやれやれと首をすくめた。
「まあお前がそんなに簡単に種明かしをするとは思っていないがな。しかし、この翼って奴は邪魔だぞ。いつも通りに剣を振り回せんな」
「せんでいい。どうせ今日は厄介ごと満載だからな。これ以上お前までが暴れてはさすがに鄭悠舜も泣くだろう」
 霄の言葉に宋は声を潜める。
「……やっぱり今日、何か変事が起こるのか」
「起こる。羽羽殿の読みはちとずれているが起こるのは確かだ」
 同じく声を潜めた霄はにやりとした。装束と相まって、大変に兇悪である。
「――その羽羽との解釈の違い、ぜひお聞かせ願いたい」
 かぶった敷布でさっぱり表情は見えないが、くぐもってもまだ高い少年の声が二人の老人の間に割り込んできた。
「これはリオウ殿。……ですな?」
「こんな馬鹿馬鹿しい様に付き合ってやってるんだ。さっさと教えてもらおう」
 敷布から伸びた手ががっしりと霄の尻尾を握る。
「どうやらあなたの解釈も羽羽殿とは違っていた模様。ならばそれを言い出さなかったあなたも共犯者といえますなあ」
「……こんなに大事になるとは思っていなかったんだ。それに下手に否定すると羽羽が……」
 海千山千の元宰相は少年だとて手加減するような性格ではなかった。
「部下を思いやるお心をお持ちですな。だが、この対処もそれほど的外れにはならないはずですぞ。そこまではお判りにならなかったようで」
 はじかれたようにリオウが顔を上げた。……おそらくは。目に見えては敷布が派手に動いたくらいであったが。
「俺が読んだのは『驚愕』と『南瓜』と『王宮』だった。他に何がある!?」
「ほっほっ。仙洞省長官殿には今日という日、じっくりと周囲を観察しておかれることですな」
 どうやってリオウの手から尻尾を取り戻したのやら、霄は宋と共に議場を出るところであった。
「いつの間に……!」
「あなたの知らないことなどこの世にはまだまだたくさんあるということですな」
 食えない老太師をまだ年若いリオウは唇を噛んでただ見送るしかなかった。

(つづく)


えー、とりあえずまた老人から始まってしまいました(汗)
リオウ君が平均年齢を下げてくれているとはいえ。
でも爺’Sって、書くのは結構面白いんだよなー。
さて、アミダの神様のお告げは実行されるのか否か。
まあ、無視するとは思いますが、一部では取り入れようかと。
五人組にしたから書きにくいのであって、2〜3人くらいまでならなんとかなりそうなのもあるし。
「このキャラとこのキャラで読みたい」とか希望があればまだまだ間に合います。
さて、いい加減、当日起こることでも考えましょうか。
「まだ考えてなかったのか!」というつっこみOK!


拍手ありがとうございます!
反応いただけると「やっちゃおうかな?」とかその気になれます!

>22時台に拍手コメントくださった方
よっしゃ、まかしとけ!
……と言い切れればいいのに。でも出来る限りがんばります!

H19年11月14日

オフの友人が彩雲国を読み始めてくれた!
まだコミックスだけだけど。
「影月って出て来ないよ?」
うん、コミックスじゃあまだまだ先だよね(遠い目)
とりあえず原作を貸す約束をする。
はまってくれなくとも好きになってくれると嬉しいな。

先日の面接の結果が出ました。
なんとか合格した模様。
いや、評価は聞きたくないです。どうせギリギリなんだ……。

しかし、人間というのはつくづく「環境によって作られる」と思います。
いやさ。
私、就職してから性格変わったから。
そりゃな。人見知りのくせに、何故か就いた業種が接客業だもんな。
人見知りしてる場合じゃない(苦笑)
おまけに、個性的な先輩と個性的な同期にも恵まれたし。
そうして現在の私が作られる。
悲観的だったのが楽天的になったりね。
学生の頃の自分よりは今の自分の方が好きだ。
もっとも、中学生くらいの自分が今の自分を見たらショックかもね(苦笑)

ちなみに、先日までの部署は、美女やら可愛い子がいて幸せだった。
しかし、新しい部署も外から見てるとわからなかったが、なかなか可愛い子が多い。
これって、幸せなことだよね?
そうして、どこに異動しても男性職員には期待はできないのであった(苦笑)
今更どころか入社当初から期待はしてないけど。
仕事ちゃんとしてくれたらいいです。
そういう意味では上司に欲しいのは奇人かなあ、とやはり思う。
若き日の彼はあまりにもキヨラカで恥ずかしいくらいだったけど(笑)

本日も『風土記』と戯れる。
登場人物で思いつく人物を追加していく。
……キリがないよ(泣)
ともかく名前の出てきたキャラは全員載せようとは思っているのだけど。

さて、今日の連載はどうしようかなあ? 連載まとめページこちら


『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(第三回)

 三々五々、高官たちは退出していく。国家の中枢である王宮の、頭脳とも言える人々。先の霄太師の朝廷整理を生き延びただけあって、おおむね、優秀な人材が多数。中には無害だからとか、わかりやすいからという理由で残留している者もわずかながらに存在したが。
 さてこの高官たちの中で目立つといえば、やはり国家中枢に食い込むには通常ならば若すぎると言われる、とある集団。
 そう。別名を『悪夢の国試組』。この『悪夢』がこの年の『国試』にかかるのか、当の国試合格者にかかかるのかは議論の種にされることも多いが、彼らを知る者たちは一様に言う。
「そんなもの、あの顔ぶれを見れば一発じゃないか!」

 今、議会の行われた室の外で、まさにその『悪夢の国試組』の中心的存在が集結していた。彼らは尚書省六部に所属していたため、見事な『どらきゅら』絵巻が展開されていた。
 宰相であり、『国試組』のたずなを取れる稀有な人物である鄭悠舜は、一見見本通りの『どらきゅら』である。青白い顔(化粧なし)、黒い外套、異世界の黒い装束。
「なんだ、悠舜は普通じゃないか」
 紅黎深はそう言って同期の様子を眺める。そんな黎深の全身を包むのはやはり見本通りの装束である。――形ばかりは。よく目をこらさないとわからないのだが、その衣装に使われている黒い部分、これが実は赤である。ほとんど黒と言っていい深い赤のため、よほど明るい場所で見なければ黒にしか見えない。もちろん、大人しく安物の生地を纏っているわけはなく、光沢のある極上の絹を使用していることは明確だった。
「そう思いますか?」
 穏かな表情で悠舜は黎深の傍に近づき
「これでも?」
 と言って見せた。
 口の両端から二本の牙がふいに現れる。見つめていると牙は口中に消えた。
「なっ……!」
「面白いでしょう? 舌でちょっと触ると出し入れ自在なんです」
 悠舜は笑いながら牙を出したり引っ込めたりする。好人物な彼の容貌だが牙ひとつあるだけで通常の彼を知っている者の目にはおそろしく映った。
「……奥方の発明か」
「ええ。まったく凛の発想は面白い。この牙、たいへん柔らかいもので作られているので口を怪我することもありませんし」
 仮面の尚書、戸部の黄奇人がさもありなんとうなずく。その彼の仮面は本日特別仕様。何のことはない、どこぞやの影にされて元に戻せない“顔面蒼白牙付き仮面”をそのまま装着しているだけである。艶やかな黒髪に縁取られて尚一層その青さ、おそろしさが引き立つ。
(鳳珠の場合、仮面をはずした方がよほど怖ろしいかもしれませんね)
 だが、己の容姿がもたらす被害に心痛めていた若き日の同期の心情を思いやって、悠舜は口に出すことはしない。黒髪黒装束の彼が素顔をさらして降臨すれば話に聞いた『どらきゅら』のように数多の美女さえ陶然となるであろうに。
 もっとも、圧倒的に男性社会であるこの宮中でそれをやられたら政治中枢の麻痺も目に見えている。このままが一番平和であろう。
「しかし……」
 悠舜の視線につられて黎深が、そして奇人と名乗る鳳珠も残るひとりをとくとくと眺めた。
「まさか飛翔のこんな姿を見られる日が来るとは夢にも思いませんでした」
 深く感慨をこめた悠舜の視線は暖かい。
「これは欧陽侍郎の力作と思われますが、よく承知いたしましたね」
「……賭けに負けたから仕方ねーよ」
 当の本人、工部尚書管飛翔は悠舜の視線から逃れようと顔を背けた。そこにいたのはすっきりと髪を撫でつけ、瀟洒な衣装に身を包んだ酔いどれ尚書。耳朶と手首に光るものが揺れる。
「いっそいつもそうしていろ。少しは身なりに構え」
 仮面の尚書が洩らすのも仕方ない。そこにいるのは苦みばしったイイ男である。元々、飛翔は見た目が悪いわけではない。ただその言動が目立つがために忘れられがちなだけである。そうして尚書という地位についた後であっても身なりにも構わず大酒を飲む彼の個性が、ますます一般的に好まれるであろう条件を封印していたのである。
「今なら、縁談も進められるかもしれませんねえ」
「悠舜、てめえ自分が結婚したからって余裕かましておせっかい焼くんじゃねーよ!」
「口を開いたら台無しだ。悠舜、諦めろ」
 楽しげな悪夢の国試組を周囲は見て見ないふりをする。一人だけでも怖ろしいのに現在その四倍。
 だがもちろん、この程度であれば歯牙にもかけない人物も存在する。
「やれやれ。君たちは本当に仲がよいのだな」
 四人目の尚書、六部兵部尚書が苦笑しながら立っていた。

(つづく)



とりあえず、悪夢の国試組の現状と参りまして、引き続き尚書揃いということで。
しかしこの調子で書いていたら本気で終わる気がしません。
ああ、天よ私に大ネタを!


拍手ありがとうございます!
この拍手にすがって、誓って連載を放り投げたりはいたしません!

私信:YKさん。
14日22時にTelくれたのはあなたですか?
こちらからの連絡ができないので確認できませんが。

H19年11月15日

愛用の姫携帯(と最近呼んでいる)の飾りがはがれてきました。
主にサイドが。
大変に見苦しい。
そこで、サイド中心に飾りを貼り付け直すことに。
シール状のものは長期の使用には向かないとわかりました。
そこで爪楊枝を使って、小さなパーツをひとつひとつ貼り付けていく。
しかし、これやってると空間恐怖症になったように
びっしりと貼り付けようという衝動にかられるな。
もう少し貼りたかったけど、50ヶあったパーツがもうありません。
いやひとつ2mmくらいのパーツなんだけどね。
今度は簡単に取れませんように。
最新型の薄くて軽くてPCも楽々見られる携帯には憧れるけれど、
壊れるまで使うから覚悟しといてもらわないと。


今更ですが、彩雲国オンリーに参加された方の日記を読んでいて、
「影香のスペースってあったんだろうか……」
そこかい!
って思われたって、影香至上主義ですから。
参加できないのが悲しくてチェックもしてないのさ。
あったらもちろん嬉しい。
でも本が手に入らないのはすごく悲しい。
通販してるとこがあればまだいいんだけど……。
(という訳で、影香本通販してるところ教えてくだされば涙流して喜びます)

しかし連載に振り回される日々、
「どこが影香サイトやねん!」
状態でございます。
これでは王都組オールキャラ健全サイトのようではないですか!
いや、もちろん読む方ならそれは大好物です。
しかし、実際自分が書いているというのが
どうにもこうにも不思議でたまりません。
そうして「一月以内に終わらせる」というのもどうやら無理らしいと諦めもつきました。
まあ、終わるまで書きます。
途中放棄だけはしないつもりです。

となるとです。
やはり新作書くなら平行、ということになります。
影香ではないんですが、今個人的趣味な話をちょっと試し書きしてみていて。
……連載以外のものを書くのがすっごい新鮮です。
これは楽しいかもしれない。
もしかしたらこの調子なら平行して書くことだってできるかもしれない。
というか、書くスピードだって逆に上がったりするかもしれない。
よし!影香の設定、煮詰めるぞ!

しかし、私を追い詰める連載はまだまだ終わる気配を見せないのでした。
もしかして、「今月中に完結」も危ういんじゃなかろうか……(滝汗)
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『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(第四回)

「これは孫尚書。これを言っていいものかわかりませんが着こなしていらっしゃいますね」
 にこやかに対応したのは悠舜ひとりであった。黎深は横を向き、奇人は仮面で表情が見えず、飛翔はずっと仏頂面である。
 壮年になる孫陵王は異世界の装束を嫌味なく着こなしている。最初、話を聞いた時点で乗り気でなかったなどとは誰も思わないだろう。
「おや嬉しいね。ところで宰相のその牙、非常に面白いのだが」
「ああ、これはですねえ」
 悠舜と陵王が話し始めると他の三人はさっさとその場を離れる。馴れ合うつもりはないのだと言外にあらわしているようだ。
「君の同期たちは正直だな」
 あからさまな反応に陵王は苦笑してみせる。
「そうですね。可愛いでしょう」
 誰もが特殊な意味で評することの多い三尚書を差して「可愛い」などと言える人物は少ない。陵王はいかにも楽しそうに笑い出した。
「いいな、君は。実にいい」
 無意識に懐に入れて煙管を取り出した陵王の肘が通りかかった人物にぶつかった。
「これはすまない」
 振り返り謝る陵王の肘が当たったらしいのは礼部尚書の持つ虫籠だった。
「いえ、大丈夫のようです」
 虫籠を覗き込んだ魯尚書は表情を変えずに短く答える。
「魯尚書、朝議の時から気になっていたのですがその虫籠には一体何が?」
 悠舜はかつての教導官に向かって訊ねずにはいられなかった。
「ご覧になられますか?」
 差し出された虫籠を受け取って悠舜は顔を近づける。陵王もまた覗き込んで来る。
「蝙蝠……?」
「ええ、蝙蝠です」
 悠舜から返却された虫籠を揺らさないように魯尚書は手にする。
「またどうして蝙蝠なのか聞いてもいいだろうか」
 陵王の疑問は悠舜の疑問でもあった。
「『きゅうけつき』には蝙蝠がつきものと霄太師に伺いまして」
「それはまた……」
 そこまで熱心にこの危機に対応してくれたのかと悠舜は思った。が。
「可愛いでしょう」
 盧尚書は本気らしかった。生憎、悠舜も陵王も蝙蝠を可愛いと思ったことはない。困った悠舜は、
「これまであまり近くで見たことがないのでわかりませんが」
 と答えたのだが予想外の反応が返ってきた。
「飼ってみれば可愛さがわかります。もしよろしければお分けすることもできます」
 飼うとなれば妻にも相談をしないと……と言い募る悠舜を横目に、陵王は遠い目をし、陽気に手を振ってその場を去った。
(俺もまだまだだな。きっと魯尚書なら悪夢の国試組をまとめて『可愛い』と言ってのけそうだ)

(つづく)



ふうっ。尚書揃い、終わりです。未登場の刑部までは勘弁してください。
さて、そろそろ話の方を動かさないといけませんねえ。


唐突に
「そろそろ新バナー作りたいな」
とか思ってしまいました。
影月と香鈴のバナーが良いな。
しかし、自分で描くのはどうかと思う。
久々にちびドールに影香コスでもさせてみるかとか思う秋なのでした。
おやすみなさーい。

H19年11月16日

ほけほけ〜と半分寝ぼけながら出社(早番だったから)したら上司から
「今日はフルタイムにして」
いやそれは構いませんけどねと快諾。
しかし、その依頼は根拠があった。
滅茶苦茶忙しかった。
そしてこの調子だとあとまだしばらくは同じ感じで忙しいだろう。
忙しいのはいいことだ。
でも毎日12時間会社にいたりはしたくはないよ。

そんなわけで(?)いつにも増して休憩時間は爆睡。
通勤時間も爆睡。
そして今日もネタもないまま連載を迎えるのでした。
いや、本当は影香のネタ、詰めたかったんだけどさ……。


『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(第五回)

 それが不幸だったか幸福だったかと訊ねられたら
「半々だ」
 と吏部侍郎は答えたに違いない。

「ああっ! すみません!」
 朝議が終わって、残って話し込んでる上司を置いて李絳攸は歩き出した。いつもなら事情を知る劉輝や楸瑛についていけばいい。しかしこの日に限って二人とも早々に姿を消していた。養い親はまだ同期と話している。小さい子供でもないのに黎深を待っているというのも抵抗がある。そこで何食わぬ顔で歩き出したものの、僅か数歩で絳攸は途方にくれていた。そんな折である。
 声と共に固いものがぶつかる感触がした。振り返ると青く塗られた悪鬼の仮面。それはおなじみの戸部尚書ではなく――。
「李侍郎、ですね。申し訳ありません」
 誠実さをそのまま現したような声は多少くぐもってはいるが戸部侍郎、景柚梨のものだった。
「――景侍郎」
「いやあ、案外視界が限られるものですねえ仮面というものは」
 ほがらかな声には多少楽しんでいるような色さえあった。
「戸部では今日、尚書の仮面を皆つけているんですか?」
 内面は常識人である黄奇人を知る絳攸には、そのことがかなり意外だった。
「ええ。実は鳳珠――尚書が持つ仮面が軒並みこのような仕様になっておりまして。どうせ使えないからと戸部に持って来られたんですよ。で、我々も六部の皆さんが今日の日に色々個性を出していると聞きましたので、数もあることですし尚書と同じ扮装をすることにしようかということになりまして」
 よく見ると戸部侍郎の髪は纏められずに下ろされたままだ。そこまで揃えなくても良さそうだと絳攸は思ったが、水を差す気もないので沈黙を守った。

(つづく)


すみません、中途半端ですが今日はこれまで。眠すぎて頭、動きません。
この続きは侍郎揃いです。


拍手ありがとうございます!
心のビタミン補給です!

H19年11月17日

まーじーで、仕事忙しいです。
で、17日。帰宅したら18日。
18日の勤務シフトは早番。
ええ、この時点で家にいられる時間って6時間くらいなわけです。
もちろん、そこで睡眠他の時間を全部まかわないといけません。
なのに。
それなのに。
何、長風呂してますか、自分。
いや疲れてたから癒されたいとか、
あと最近めっきり寒くなってきてぬくもりが恋しいとか、
まあ色々ありますけど、この状態で3時間弱はやめろよ自分……。
ええ、お風呂から出たらほぼ4時だったわけです。
しかし、長風呂のときってたいてい本読んでたり妄想育てたりと忙しいのですが。
ひたすら、ぼーっとしていたようです。
そうして、ひたすらぼーっと髪を乾かしていて、
気がつけば5時まわってませんか?
やばいだろう、これは。
だから寝ました。
ええ、これは言い訳だったんですねえ。

ところで、お風呂関係で影香小ネタ拾いました。
何パターンか考えたのですが、
最後に必ずオチがついてギャグになるのはどうしてだろう……。

さて、連載も丸一月に達したわけなんですが(汗)
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『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(第六回)

 この調子だと戸部は黄尚書の仮装をした官吏ばかりかと思うと、それも少し寒い。
「吏部は基本に忠実に扮装してられますけど、表情とかが真にせまってますよねえ」
 これは暗に、常の吏部が『悪鬼の巣窟』と呼ばれていることを皮肉られている……と、普通なら考えるところであるが、戸部侍郎の人柄からか、そういった裏は読み取れない。それでも返事に窮した絳攸が答えを迷っている時だった。
 ふわり。
 また何かが今度は後頭部に触れた感触があった。
 確認するために頭に手を伸ばして絳攸は固まった。手の中に自分のものでないぬくもりがある。
「なっ……!」
 恐る恐る手を眼前に移動させ、そっと開くと、そこには何やら黒い塊があった。
「どうされました? 李侍郎。おや、それは?」
「今、俺の頭に……」
 柚梨に説明しようとした絳攸の耳に切羽詰った声が飛び込んできた。
「ちーちゃん! どこ行ったんだーっ!」
 少し首を傾げて、合点したらしい柚梨と視線を合わせる。
「あれは礼部の……」
「ええ、侍郎ですねえ」

(つづく)


えー、今日はちょっとここまでで。19日に書ければ2日分がんばりたいんだけど、
あれ?もしかして歓送迎会があったような気がする……。
とりあえず、明日(正確には19日だけど)目標は、
残り侍郎をなんとか……。


拍手ありがとうございます!
どれほど嬉しいか伝わればいいのですけど。

>17日の朝9時前に拍手コメントくださった方
その言葉、そっくりお返しします!ありがとうございます!

拍手記名コメントに以下反転レス
>梅様。
拍手&コメントありがとうございます!
綱渡りですが面白いものが書けるようがんばります!
&心からの感謝を。
御史台の『透明人間』ネタ、忘れかけてました……。
御史台関係は夕方以降に登場すると思います。
まだ今、早朝なんですが(汗)

H19年11月18日

追い詰められてか疲れ果ててか
何故だかビーズパーツを購入して帰宅。
妄想して材料集めるのはいいけど、
いつ作れるのか考えて買い物しような自分……。

買うのを躊躇していた(その時財布の中身が乏しかった)
小説Wings秋号購入。
まだ全部は読んでないけど、今号は『モンスターズ・イン・パラダイス』(縞田理理)が
自分的には良かったなー。

さて、逃げてないで向き合わねば。
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『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(第七回)

 必至な形相の『きゅうけつき』は、二人の侍郎を見て駆け寄ってきた。
「すみません! このあたりで蝙蝠を見ませんでしたか!?」
 礼部侍郎の顔と自分の手を交互に眺めて、ひとつうなずいた絳攸は、軽く握った自分の右手を差し出した。条件反射のように広げられた先方の手のひらに黒い塊が落ちる。
「ああっ! ちーちゃん!」
 いい年をした男の台詞とは思えなかったが、礼部侍郎はその塊に頬ずりしてのけた。
「ちーちゃん、駄目じゃないか。今はまだおやすみの時間だよ? さあ、籠の中でお眠り」
 黒い塊は侍郎持参の虫籠に収納される。
「礼部の……。あの、その蝙蝠は……」
 さしもの度胸のある景柚梨にしても少し動揺する光景であったようだった。
「もしや、戸部の? それに李侍郎も。捕まえていただいて助かりました。お騒がせして申し訳ありません。本日、礼部では尚書の指示により全員が蝙蝠を連れておりまして」
 元々の理性的な部分を思い出したかのような礼部官吏の姿に絳攸は胸を撫で下ろす。彼の言動がどこか黎深の兄と姪に対するものを思わされたからかもしない。
「そう言えば尚書も虫籠をお持ちでしたが、何か意味があるのですか?」
「『きゅうけつき』と蝙蝠には元々深い繋がりがあるらしいとのことです」
 絳攸の傍らで二人の侍郎の会話が続けられていく。上司の命令では理不尽でも従うしかないだろう。吏部など理不尽の集合体だ。
「しかしその、先ほど名前を呼ばれてませんでしたか?」
「お恥ずかしい……。今日まで飼うようにと尚書から渡されまして、どうせなら名前があったほうが良いかと」
(ちいさいからちーちゃん、か)
 なんとはなしに名前の由来を知ったような気がする絳攸である。沈黙を守ったまま、そんなとりとめのないようなことを絳攸が考えている間に、礼部侍郎は柚梨を相手に、飼い始めてわかる蝙蝠の魅力を滔々と並べ立てていた。間違いない。彼は親馬鹿に陥っているのだ。
 景柚梨という人物はそのくらいのことであれば流せるだけの余裕があった。この上もない聞き上手であり、さらには誘導尋問も上手い。礼部侍郎は現在礼部を上げて蝙蝠熱が上がっていることを告白させられていた。
(景侍郎は実際、どこの部署でもやっていけるな。黄尚書を補助できる者さえいれば評価も高いことだし昇進させてもいいはずだ)
 官吏の査定が大きな仕事である吏部官吏の顔で絳攸は柚梨の評価を上げる。
(だが実際はまだあと数年は戸部から動かせまい。それは工部も同様だな)

(つづく)


侍郎揃い、終わりませんでした(汗)
次回こそ終えて次のステップにすすみたいと思います。


拍手ありがとうございます!
疲れた時の糖分補給のようにじわじわきます。

H19年11月19日

そんなわけで(?)歓送迎会に出席しました。
しかし、私にはリミットがある。
最終特急に乗れる時間までに帰らねばならない。
迎えられる側ということもあり、
タダで食べられるだけ食べてさっさと途中退席。
ほとんど食い逃げ状態(苦笑)
しかし、今の部署は人が多いので借りた場所、ぎゅうぎゅう。
向こうの端に誰がいるかもわからない。
そうして、乾杯用のビール一杯でお手軽に酔いかける。
飲み放題プランだったのでもったいないとは思うものの
体質だから仕方ないよね。
ああ、工部の尚書&侍郎コンビが羨ましい。

疲れてる時にわずかでもアルコールが入ればそりゃ眠い。
それでも花とゆめを買って帰ることは忘れていませんでしたとさ。
うーっ、最終回直前の『ゴールデン・デイズ』がくるなあ、とか思ってたら、
予想外の『カラクリオデット』に泣かされちゃったよ、もう。
そうして、今更ながらに『学園アリス』の小等部校長にときめいてしまったではないか(笑)
……ツボなんだよ、外見少年が。
中身は老けてれば老けてるほどいいかもしれないが。

花とゆめを堪能した後、おもむろに荷造りして明け方コンビニへ。
一度寝てしまったら起きないのはよくわかってるから。
しかし、こんな時間でも歩いている人やコンビニに入ってくる人がいるというのは不思議だね。

荷造りというのは彩雲国セットのこと。
本編8冊プラス外伝2冊&絵巻。
中華系が苦手という相手のために、
主な登場人物の名前と読み方と一言コメント、独特な用語の説明を書いた紙を同封。
いやあ、最初は絳攸の名前が読めなくて読めなくて苦悩したさ。
あと、秀麗と静蘭の名前取り違えとか。
漢字でも横文字(カタカナ)でも、どうやら私は字面のイメージでキャラ把握してたりするので
慣れるまでが大変なんだよ。
ちなみにそれだけ貸し出しても一向に差し支えがないって、
どこまで馬鹿なんだろうと思うよ。
馬鹿は馬鹿でも彩雲馬鹿。
いや、影月馬鹿か(苦笑)

コンビニから戻ると本能のままお休みモードに入ってしまいました。
まあ一日中、右目(利き目)の眼精疲労に泣いてたからそれもあって。
その状態で漫画読んでたのかと聞かれたら
「はいそうです」
と答えるしかないんだけど。
一応、右目だけコンタクトはずした状態で。
滅茶苦茶見にくいです……。


連載いきまーす。連載まとめページこちら


『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者はなし(第八回)

 吏部侍郎の顔になってそのまま来年度の査定に思いを馳せていた絳攸の耳が、まるで狙ったかのように金属が触れ合う音を拾った。
(まさか……)
 顔を上げた絳攸はそこに四人目の侍郎を発見することになる。
「なんですか、これは侍郎会議ですか?」
 工部侍郎を見ているとその貴族的な物腰が光っている。それ以上に彼を引き立てる宝飾品が目立っているのだが。
 こんな時楸瑛なら
「そうです。欧陽侍郎も混ざりませんか? 侍郎友の会へようこそ」
 くらいはふざけたことを言いそうだと思ったが、絳攸が搾り出したのは単なる事実だった。
「いや、成り行きで立ち話をしていただけだが」
「そうなんですか? まあ丁度いいです。景侍郎にお聞きしたいことがありまして」
 本日の欧陽玉の姿は非常に人目を引くものだった。異世界の装束だというのに見事に着こなし、通常の五割り増しの装飾品が彼を飾っていた。
「私にですか?」
 話を振られた戸部の男は戸惑った声を上げる。これまでさして工部侍郎とつきあいはない。
「そうです。黄尚書のもそうですが、あなたが今されているのもかの彫刻家、雅旬の作ですよね?」
 玉の関心は顔の仮面にあったらしい。口が開閉するなど芸もあるが、どちらかというと潰れた蛙にも似た仮面が名のある作家のものと絳攸は初めて知った。しかし、紅家でその彫刻家の名前を聞いたことがあった気もした。
「ああ、なんだかそんなことを聞いたことがあります」
「やはり! ですが、それがなんだってこんな稚拙な色を塗りたくられ、おまけに牙だなんて……! 嘆かわしいにも程があります!」
 玉からは真剣に憤っているのが伝わってくる。たかが仮面、されど仮面である。
 怒るときがあるのだろうかとさえ思わせる温厚な男は、飾り立てた年下の同輩にそれは優しく言い聞かせるように説明しようとした。
「仮面がこのようになったのは、決して鳳珠……黄尚書の意向ではなく、ましてや我々戸部の意向でもありません」
「今日のためにわざと手を加えたわけではないのですね!?」
「もちろんです。これは一種の天災です。正確には人災ですが」
 柚梨の口調では天災という言葉が強調されていた。
「どこの誰がそんな馬鹿なことをしたと言うのです!? 芸術に対する冒涜です!」
「不可抗力というものが世の中にはありまして」
 柚梨が窺うようにこちらに視線を流したのを見て絳攸はすべてを理解した。
(れ、黎深様……)
 あの人ならやる。絶対やる。それは確信と共に絳攸を襲った。
「景侍郎、それは何か権力であるとか財力であるとかそういったものに巻かれろという意味ですか!?」
「とんでもありません。しかし、人の世には触れぬほうがいいというものが確かにあるのです」 
 どうしたものかと絳攸は思案にくれた。ここで黎深の名を出すのはあまりにもまずい。傍らで虫籠を抱えた礼部侍郎が困惑しているのが伝わってきて、早く対処をしなければならないことに絳攸は気付く。彼らはいずれも多忙な身なのである。
「李侍郎!」
 いきなり呼びかけられ、絳攸は驚愕を表情の下に押し殺した。
「なんでしょうか」
「吏部には国官のすべての資料がありますね!? 拝見させていただけますか」
 玉の声には反対されるなどと思ってもいないらしい節が見られた。
「それはできません。吏部が預かるのは門外不出の情報です。たとえ侍郎であってもお見せするわけにはまいりません」
「杓子定規な規則を聞きたいわけではないのです。悪辣な犯人を捜すための助力をお願いしたいのです。さあ! こんなところにいないで吏部にまいりましょう!」
 工部侍郎は一気にそれだけ言うと問答無用で片手を何故か礼部侍郎、もう片手で絳攸を掴むとさっさと歩き出した。優男のように見えて欧陽玉は意外に力がある。振りきることもできずに絳攸は心の中で悪態をつく。
(できるわけないだろう! だが、これで吏部まで迷わず行ける。――欧陽侍郎は碧門家の出身だな。よし、ここは珀明に命じて言いくるめさそう)
 そんな風に絳攸が画策している隣で、玉が礼部侍郎に
「蝙蝠は悪くない発想だと思いますが、その皮膜に穴を開けて耳飾などつけてはいかがでしょう」
 そんな提案をして激しい拒否にあっていたりした。
 成り行きで景柚梨も同行し、一行は吏部を目指して進んで行った。

(つづく)


侍郎揃い、なんとか終わりです。次回はインターミッションというかなものを挟みたいと思います。


拍手ありがとうございます!
なんてしあわせなんだろうと思います。

>19日お昼過ぎに拍手コメントくださった方
いらっしゃいませ。
彩雲国、並びに影香萌えの同志の方にお越しいただけて
飛び跳ねるほど嬉しいです!
原作もまだまだ楽しませてもらえそうだし、影香への愛は不滅(?)だし、
これからも数を増やしていく気、満々です。
目指せ!影香100作!?
どれかお気に召すものがあればと願います。
ありがとうございました!


H19年11月20日

♪白ヤギさんからお荷物着いた。
 黒ヤギさんたらそれで起きた。
 仕方がないから荷物を開けて
 中身で遊んで一日終わる♪

なんか、そんな休日でした(苦笑)
白ヤギさんは偉いです。
お隣の国からなのに4日で届くんだもんなー。
中身は人形関係。
小姫の足が届いて、せっせと小姫を磨きたてました。
文字通り、紙やすりで。
結構疲れるし、粉だらけになって大変だったりします。
これは小姫の香鈴コスプレ計画のための大事なステップなのです。

20日に入っても、右目の眼精疲労が抜けません。
片目コンタクトにして、右目を閉じてそれでもネットをしております。
ちなみに10月頭に痛めた肩&腕はまだ完治しておりません。
それでもずいぶんマシになったけどね。
たぶんもう少しで治るでしょう。
やはり自然治癒能力は偉大だ。


と、不自然ですが強引に連載いきます。連載まとめページこちら


『君知るや南瓜の国』第一部・最終章:星より他に知る者もなし(第九回)


 その噂が流れ始めたのはまだ午前中の十六衛からだった。
「おい、見たか?」
「……見た」
「俺は見てないぞ! 嘘じゃないのか?」
「でもな、隣の部署でも話題になってたぞ」
 十六衛――彼らは王宮に勤める武人たちである。禁軍でもある羽林軍とは違い、そこそこ腕があって国武試に受かればなれる。全体的に庶民出身が多く、風紀はあまりよろしくない。
「俺は見た! 見舞い違いなんかじゃ絶対ない!」
 狼男の耳と白く塗られた尻尾を持つ彼の持ち場は内殿に至る門の番人である。このようにどこかの守りに配置されていることが多い。
「きっと気のせいだって。お前、この間の休みから体調崩してるだろ?」
 黒い尻尾を揺らす彼の部署は王宮そのものの大門の番人である。早朝から宮城の外の一般人の視線が痛く、少しばかり泣きそうになっている。
「おまえが見張ってるのは城の外だろう。俺が見たって言ってるのは城の中だ!」
 白い尻尾の男が反論をする。たちまち十六衛の詰め所では目撃例がすべて宮中の話であることに誰もが気付いた。
「月末になんか悪いことが起こるって、仙洞省のじーさんが言ったんだって?」
「デマじゃなかったのかよ!?」
「おい! 誰か上司に報告しろよ」
「でもな、被害は今のところないんだろ? 報告のしようがないじゃないか」
「阿呆! 宮城の中への無断侵入だろ!」
「無断侵入……。確かにな。だがどうやってアレの侵入を防げばいいんだ? そもそも奴らはどこから来たんだ?」

 羽羽仙洞省令尹が指摘した月末当日。誰もが強要された衣装の異常さに、どこか悪い冗談だとしか思っていなかった。もちろん、宮中を守る彼らにしても同じことである。概ね、上の方の人物による悪ふざけと認識されていたのだ。
「おい、勤務状況の見直しをしよう」
 その場で一番年嵩の男が提案した。
「なんでだよ?」
「変なことが起こっているのに放っておけるか? できるだけ一箇所に配置する人数を増やしてもいいか相談してこよう。その場にいる者が多ければ、持ち場を離れて噂の無断侵入者を追っていけるだろう?」
 噂がまだ確定でないのは、誰もが勤務中であり、所定の位置を動くことが許されていないからだ。
「俺は追いかけたくない……。何だよ、貴陽には変なものが出て来ないっていうからわざわざ国武試受けたんだぞ? 俺は嫌だ!」
 叫んだ男は怪力自慢だが、何より嫌いなのが怪談である。もっとも、こういった部署では怪談はつきものなのだが。
 月末当日午前。こうして最初の怪異が報告されることになる。
 曰く、大人の半分くらいの一見子供のようにも見える小鬼が宮城の随時で見かけられたという。その小鬼たちは、人間が気が付くとたちまちにして姿を消す。だが、またしばらくすると柱の影などからこちらを見ていたりするという。
 これが最初の怪異。そうして似たような報告が十六衛以外からもたらされるまでにそれほどの時間は必要としなかった――。

(つづく)

今回、名前のあるキャラなどは誰ひとり出てきません。
ただ、状況説明にいきなり他の部署では……ということで捏造(?)しました。
明日は王様が出てくる……かもしれない……。


拍手ありがとうございます!
いい意味で期待を裏切ることができるよう修行したいと思います。

H19年11月21日

ようやく。
連載も1ヶ月を超え、最終章に入ってから9回も書いてから今更ですが。
やっと連載の残りプロットを切りました。
と言っても非常に大まかな物で
「この時間帯にこのキャラを出す」程度ではあります。
しかし、それでも私からしたら進歩。
あまりにも先の見えないことに途方にくれておりましたから。
これでタイトロープな綱渡り連載、いや先の見えない五里霧中連載も少しは見通しが立ちました。
結果としてアミダの神様のご神託はほとんど無視することに。
やっぱ無理でしょう、あれは。
別の機会にでも活用できればしたいかとは思っていますが。

で、肝心の今後の連載ですが、残り10パートを書くはずです。
ええ。
もう、ひとつのシーンに何日もかけるなんてやってられません。
無理矢理でも書き進めて今月中の完結を目指します。

いやだって。
12月に入ってまだハロウィン話を書いてるだなんて悲しすぎませんか。
第一、12月にはクリスマス影香を書かねばならないんですから!
そう。
もう同時に書こうなんて甘いこと考えてた夏の話も、
連載と同時期の茶州の話も、
小ネタによる秋の話も、
あわよくばオフ準備話も、
全部まとめて凍結。
今月はもう、この連載を完結させることだけに集中します。
……できればいいな。
書くのが甲斐性なしの自分なだけに不安は一杯。

でもって、章だてというか、を一部変更します。
ハロウィン前の部分を「第一部」とし、当日を「第二部」とする二部制にします。
日記の方は訂正しませんが(まとめページと両方直すの二度手間なんだもの)。
第二部の中での章タイトルをどうするかはまだ未定。
いきなりできてるかもしれません。
第一部の章タイトルは「知る」をキーワードにして遊んだわけですけど、
第二部のそんな閃き(?)はまだありませんので。
しかし結局「大ネタ」は降ってはまいりませんでした。
ま、ちみちみ行きますか。

ということで本日の連載行きます。連載まとめページこちら


『君知るや南瓜の国』第二部・第十回

 朝議のあと、劉輝は執務室に戻る前に隣に立つ楸瑛に質問した。
「楸瑛、聞きたいんだが。羽林軍で余と戦ってくれた者たちは今日ちゃんと『かぼちゃ付きおおかみおとこ』になっているだろうか?」
 ひとりきりの『かぼちゃだいおう』が嫌で、仲間を増やすために行った立会いの数々が思い出される。
「朝、詰め所を覗いたところでは、主上に負けた者たちはいそいそと『かぼちゃ付きおおかみおとこ』になっていましたよ。どうやら本日は南瓜だけが後宮に入れるのだ、とか訳の判らない台詞も聞こえてきましたが」
 微笑みながら楸瑛は答える。
「そうか。皆、約束を守ってくれているのだな。よし! 今から余は午後の準備がどうなっているか後宮に確認に行くことにする」
 意気揚々と外套に風をはらませて、彩雲国王、現在は『かぼちゃだいおう』は歩き出した。顔部分を残して頭全体が大きな南瓜の被り物に覆われている。異様ではあるが本人はある程度吹っ切れたようだ。が。
「……楸瑛。余は後宮に行くと伝えたな?」
「ええ確かに」
「何故一緒についてくるのだ?」
「主上の御身を守るため、また今日一日が滞りなく過ぎるよう私なりに心を砕いているのです」
 もっともらしく聞こえるが、早い話、楸瑛も後宮に行く気であるらしかった。
「その……、今日は楸瑛には遠慮してもらいたいのだが」
「おや、私をのけ者にするんですか?」
 言いにくそうに顔を背けて劉輝はぼそぼそと小声になる。
「そなたを後宮に連れて行くと珠翠の機嫌が悪くなるのだ」
 噴出しかけた楸瑛はわざと憂いを帯びた表情を作った。
「それはつまり、主上は珠翠殿を私より大切になさっていると?」
「余はちゃんと楸瑛も愛しているぞ!」
 自信満々に劉輝は胸を張る。こんなところが可愛くてしかたないと楸瑛は思うがからかうのも楽しいのでやめられない。
(霄太師の気持ちがわかる……かもしれない)
 だが、劉輝が楸瑛に向けてくれる信頼は本物なので、それを失うことは避けたかった。そのあたりの匙加減が難しい。それでもやめることができないのは、楸瑛もまた疲れていたからかもしれない。
 彼の『おおかみおとこ』の尻尾は灰色だ。これは尻尾が塗られていない元々の色である。ここ数日、白大将軍はじめ、右羽林軍兵士に場所も問わずに襲撃されることが続いていた。今や尻尾を素の色のまま保っているのは二大将軍他数名でしかない。そんなわけで、色を塗っていない武官は問答無用で標的とされることになったのだ。ひとりひとりの腕は楸瑛のであれば撃退できるものではあるが、それでも時間差波道攻撃ともなれば、さしもの楸瑛も疲れようというものだった。
「どこへなりとも主上にお供する所存ですがそれが受け入れていただけないとは……」
 楸瑛の様子に国王は真剣に悩みだす。わざわざ自分と仕合し、負けて約束を守ってくれている兵の気持ちも尊重したい。それに、やはり珠翠に怒られるのも嬉しくない。そうして考えていて劉輝は名案に辿り着いた。
「そうだ! 楸瑛も『かぼちゃ付きおおかみおとこ』になるならば連れて行ってもよい。でなければ羽林軍の兵たちにも不公平だからな」
 楸瑛は目の前の国王の姿を改めて眺め、詰め所で見た部下の姿を思い出す。とてもではないが進んでしたい様相ではない。
「それは……。妹を思う兄の心に免じて、ここはひとつ是非このままで」
 楸瑛は灰色の耳を指差して答える。彼の尻尾もまた灰色だ。これは尻尾が塗られていない元々の色である。
「そう言われては余だって困るのだ!」
「おや、もう後宮の入り口ではないですか。さあ主上、さっさと行きましょう」
 楸瑛は劉輝の手を掴むとそのまま後宮へと引きずっていった。
「楸瑛、待つのだーっ」
 だーっ、だーっ、だーっと、劉輝の語尾だけが宮城の廊下に響いて残された。

 やはり何があっても楸瑛を残してくるのだったと、劉輝は後宮で珠翠と対面した途端に思った。
 『まじょ』の扮装をした筆頭女官は、とんがり帽子に黒い貫頭衣、手には箒を握り締めていたが、楸瑛を見た途端、箒を長刀のように構えた。
「何をしにきたのです、このボウフラは」
(ううむ、珠翠もなかなかにできる……)
 かつての珠翠の職業を知らない劉輝は、たおやかな美女を指導すればそこらの近衛程度には強くなれるのではと算段しはじめる。
「つれないことを珠翠殿。異世界の黒一色の装いもなかなかにお似合いですね」
 聞く耳持たないと無視を決め込んだらしい珠翠は、まっすぐ劉輝を見つめて詰問する。
「それで主上の御用は何でいらっしゃいますか。害虫を一刻も早く除去していただきたいのですが」
(こわい……)
 本気の怒りをこめた珠翠の視線に、劉輝は我知らず身を引いた。
「す、すぐ済むのだ! 午後の準備がどうなっているか聞きにきただけなのだ!」
「それなら、女官一同のものすごい情熱で準備万端だわ」
 答えたのは珠翠ではなく、今後宮でもっとも高貴な女性。
「十三姫……」
 その姿を見て劉輝は一瞬言葉を失い、次いでつぶやく。
「派手だな……」
 女性に向かってそれはあまり褒め言葉にはならないと注意したいと思った楸瑛だったが、その彼の目をしても妹のしつらえはあまりにも派手だった。
 おろし髪に白の貫頭衣と、基本は非常にそっけないものであるはずなのだが、髪に、額に、耳に、首に、手首に、指にと、惜しげもなく宝石が飾られ、衣にも金一色ではあるが要所要所に刺繍がほどこされている。そしてとどめが背中に広がる一対の翼。純白の翼は金粉を散され、清澄な朝の空間をきらびやかなものに変えてしまっていた。
「全部女官のしわざよ! 私の意見なんてちっとも聞かずにどんどん派手にしていくんだもん!」
 どうやら十三姫本人にはあまり面白くないらしい。
「だが似合ってはいる、と思う」
 自信なげに劉輝がつぶやくと珠翠も楸瑛もうなずいた。確かに派手は派手なのだがその豪華さに十三姫は決して負けてはいなかった。
「ありがとう、って言っていいのかしら。でもあんまり見られたい姿じゃないから、主上も兄様ももう帰ってね。午後のことなら心配ないから」
「そうか。確認さえできればそれでいい。『かぼちゃ付きおおかみおとこ』を心から接待してくれるよう女官皆に伝えておいてくれ」
 劉輝が楸瑛をうながして後宮を辞去する動きを見せた。しかし、その前に十三姫がしっかりと劉輝の外套を掴んだ。
「ちょっと! 今言った『かぼちゃ付きおおかみおとこ』って何よ!?」
「ん? 今日後宮に招いた羽林軍の有志たちのことだ。余の『かぼちゃだいおう』の仲間となることを選んでくれた勇者たちでもある」
 嬉しそうに発言する国王の前で十三姫は頭を抱えた。
「つまり、今日来る羽林軍の兵って、みんなそんな南瓜の被り物をしてるってわけ!?」
「ただの南瓜ではないぞ? 彼らはちゃんと『おおかみおとこ』の耳もつけているのだ!」
 手を伸ばして劉輝は楸瑛の耳を引っ張ってみせた。
「珠翠ー、女官たちの士気に関わらない? これって?」
「多少は……」
 二人の佳人がこそこそやり始めたのを見て、国王は今更ながらに慌てた。
「外見で差別するのはよくないのだ! 南瓜は栄養もあって美味しくてよいものだし、兵たちも余に仕えてくれる大切な存在なのだ!」
「あー、わかった、わかった。なんとかする。うん、なんとか。ねえ珠翠?」
「そうですわね。女官たちとて今日という日に宮城全体が異世界の装束で溢れているのを知っているでしょうし」
 そう。後宮はまだいい。後宮から一歩出ればそこは異国の百鬼夜行。
「とにかく、頼んだぞ?」
 心配になった劉輝が念を押すと、頼もしい姫と筆頭女官はそれでもうなずいてくれたのだった。

 執務室に戻った劉輝と楸瑛は、戻った途端に第一弾の怪異の報告を受けることとなる――。

(つづく)


決めた、とか書いた途端に難産。
果たして今月中の完結は可能なのか!?
日々、スリルとサスペンスに溢れております……。


拍手ありがとうございます!
書く気力が沸くのはあなたのおかげです!

>早朝5時台に拍手コメントくださった方。

連載読んでいただいてありがとうございます。
気が付けばうちでの最長記録を日々更新しておりますのに。
ちまちま書いてるのでも、まとめれば結構な量。
せめて読みやすく書けるよう努力していきます。
確かに疲れてはおりますが、応援いただいて元気取り戻しました!
ありがとうございました!

>夜8時後半に拍手コメントくださった方。

うん、気力振り絞っていきます!
もっと面白いと思っていただけるものを書くことができるようになりたいと思います。
ありがとうございました!

H19年11月22日

もし、去年の日記を読んでくださってる方がいれば
「ああまたなのね」
といわれそうですが、本日より5連休いただきました。
毎年恒例、紅葉狩り目当ての連休です。

本当なら今日も出かけようかと言う話はあったのですが、
ここしばらくの疲れを癒す&お出かけ準備のために今日はフリーに。
早い話、家でだらだら。
でも明日からの準備もぼちぼち始めてます。
自分の着物と羽織と長じゅばんに風を通して、
大姫(人形)のドレスと着物とキャリーバッグを発掘して。

その発掘の最中、大姫の衣装箱を二つ三つ開けたのですが。
それだけで大姫のコート、4枚も出てきました。
もちろん、コートはそれで全部ではありません。
衿元にファーの付いたものやら、ケープやらマントやら。
ああ、ファーボレロも持ってるはずだ。
……はい、私より衣装持ちです。
ここ数年買い控えてるとは言え、まだまだ衣装持ちな我が姫。
今夜中に靴や草履、ストッキングに足袋、バッグにと
まだまだ用意しなければならないことは山積。
それが醍醐味の人形遊びではあるのですが。

気が付けば1時間くらいぼーっと大姫の髪を梳いていました。
何故かその間、PL学園の校歌を歌い、引き続き母校の校歌を歌い、
最後に春風高校の校歌で〆。
おかげで人形たちのおでかけ準備は万全です。
しかし他にやることあるだろう、と人形を置いて、
今度はブローチにパーツつけたり、大姫のブレスをパールビーズで作ったり。
おいおいおい。
おかげでここ数日不調な目が、良くなった気がまったくしません。
これはやはり今日書くと決めた連載分から逃げようという行動なのでしょうか。
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『君知るや南瓜の国』第二部・第十一回

 そこは彼にとってかつて過ごした古巣だった。彼が去った後も何人かの男たちがその席を占めた。今、その席は厳しい表情をした官服の男が座していた。
「……何故、お前は異世界の装束をしていないのだ」
 包帯をあちこちに巻いて『みいらおとこ』となった門下省長官は来訪の目的も忘れて御史台長官に問うた。
「これは旺季様。我が御史台は『とうめいにんげん』を振られまして。現在この室では私は見えないことになっております」
 配下への言葉遣いとはあきらかに違うが、御史台長官葵皇殻はそう言ってのけた。
「つまり、周囲からそう扱うよう仕向けていると?」
「その通りです。私がどんな装束をすると思われましたかな?」
 旺季はそれには答えず、当初の目的を果たすことにした。
「怪しい存在が随所で見られている報告はもう受けたか」
「ああ、小鬼のことですか。それならば早々に何軒か」
 御史たちからの報告は早い。もしかしたら国王その人の元へ情報が届くより早いかもしれなかった。
「失礼します!」
 声と共に『みいらおとこ』が扉を開けてた。彼は旺季に目礼し、そして皇殻と目を合わさないようにして持参の書類を指定の箱に収めてすぐに退出していった。
「また発見されたようです。初めは外殿付近での報告が多かったのですが、ついに内殿でも見られたとか」
 さっそく書類を繰る皇殻の報告よりも先ほどの官吏の様相が旺季には気になったらしい。
「……御史は門下省にも配置していたか」
 皇殻は書類から目を上げ微かに笑ったように見えた。
「当然でしょう。あらゆる腐敗を見つけ、そして撲滅するためにこそ御史台はあるのですから」
 微妙な含みにも旺季は動じずに流す。
「そうだ。そのためにこそ、御史台は独立機関として存在するのだから」
 それはかつて彼が心血注いだ仕事。現在の御史台を作り上げたのも彼と言えるだろう。
「ところで本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか」
 多忙な男がやはり多忙な十以上年上の男に切り出した。双方共に甘くはない。いや、甘さだけは持たない。
「本日、宮城は異様な興奮状態にある。しかも実際、怪異の報告もある。そこでこの混乱に乗じて悪心を起こす者が現れるやもしれぬ」
「手は打ってあります。――宰相は白のようですが」
 納得して皇殻は更に試すような一言を付け加えた。
「あの男はな。だが、回りはそうとも限らぬ」
 貴族派を多数有する旺季は、国試組――国王派とは対立せざるをえない。国王が旺季の期待に背かぬならばもっと平和裏に事は進んだであろうに。だがすべては遅すぎる。
「鄭悠舜。あの足さえなければ御史台に招きたい人材でしたが。今となっては不可能ですが」
 国試を状元で合格したばかりではない。あの毛色の個性的すぎる同期を纏め上げる力。そして中央でこそないが命を張った現場で培われた能力。悠舜の有能さは以前より皇殻の元へと茗才が詳しく報告してきていた。できれば敵対するよりは取り込みたい人材だった。
「ああ。味方にと早くに手をうつべきだった。もしくは……。だが、それも過ぎたこと。よりよい政治のためにはぶつかり合うことも避けえまい」
 前王に似た容姿を持つ男の顔からは常に笑顔を見ることはできない。彼の望むものと現実が合致しない限りは。
 そんな折、小鬼の目撃に告ぐ第二の怪異報告がもたらされ、旺季はあわただしく退席していった。残された皇殻は先ほどの書類をもう一度取り上げながらつぶやく。
「あなたに恩はある。だが必要とあればこの御史台の真骨頂、思い知っていただく」
 だがそれはおそらくまだ先のこと。今は今日という日の収拾に当たらねばならない。
「この気に乗じてなどと思う輩には後悔だけを味わわせてやる」
 主がいないことになっているはずの御史台長官室で、いないはずの人物はそうひとりごちた。

(つづく)



ちと書きづらい二人組でした……(汗)。
『とうめいにんげん』の全貌(?)はまたもう少しあとに。
でももうわかったでしょうか。
次は少しコミカルになる予定です。

H19年11月23日

遊びに行ってきました♪
結局、大姫&小姫の出番はほとんどなかったものの
滋賀県の広さとバラエティを実感した1日となりました。
鯖街道の鯖寿司は美味しかったし、
メタセコイア並木は予想より長くてきれいだったし、
かねてから行きたいと思ってた余呉湖は静かだったし、
帰りのバッグにはひこにゃんのちびマスコットが。
……さて、ルートがわかるかな?

今年の紅葉は赤くなるというより茶色くなってしまってるものが多々見られます。
でもちょうどあちこちで銀杏がきれいでした。

帰宅してから人間用の明日の準備。
長じゅばんに半襟つけて、
着用予定の着物と羽織が今ひとつ合わないと悩んでいたら、
ひょんなところ(実は大姫用材料用……)から今の季節に丁度良さそうな紅葉柄の羽織発掘!
(本当の着物のおしゃれは「季節先取り」だけど気にしない♪)
嬉しくって思わず珊瑚パーツ使って羽織紐かわりになるものを作りました。
結構可愛く出来て、ほくほく。
ついでに同じ材料で髪飾りも作ってみた。
ああでも、やっぱり着物を変更しようかまだ迷うところ。
この羽織だったら着物は主張しすぎない方がいいような。
でも私の着物の大半は主張の激しいものが多いからなあ。
黄八丈が見つかれば半襟つけた長じゅばんの袖丈とも合うし一番いいんだろうけど、
そういえばここ数年見ていないような気も(汗)
長じゅばんが合わないと着られないしなあ。
まあぎりぎりまで悩んだり探したりしますか。
(ここで果てた)


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『君知るや南瓜の国』第二部・第十二回

 庖丁長は仁王立ちになって部下に矢継ぎ早に指示を飛ばしていた。
 ここは彩雲国王宮の庖廚である。
 王宮には数多くの人間がいる。そのため、庖廚も国王専用であるとか、後宮専用であるとか、官吏専用であるとかでいくつもに分かれている。そのうち、もっとも多数の食事を賄う官吏用庖廚が今回の舞台だ。
 高官ともなればまた別室でうやうやしく給仕されるが、一般の官吏の場合、その昼食は弁当形式が取られる。
 弁当と言っても王宮で出される限り貧相なものではない。下位の官吏たちにとってそれは楽しみのひとつだ。もちろん、自分で用意してくる者もあるがそれは全体から見れば一部でしかなかった。

 本日の菜譜は南瓜を中心にとの指示が出されている。白い上っ張りの庖丁人たちが白く長い耳を揺らしながら庖廚を飛び回っていた。――庖廚には『うさぎおおこ』が数多存在した。中には邪魔だからと長い耳を結んでしまっている者もいる。
 昼も近くなると、自部署の弁当をまとめて取りに来る姿が見られるようになる。『うさぎおとこ』の群れに現れた『きゅうけつき』、碧珀明もそういった一人であった。
 もちろん珀明であれば彩七家の名にに恥じぬ昼食を取ることもできたが、悲しいかな彼はまだ吏部の駆け出し。先輩たちを差し置いて一人豪勢な食事をするわけにはいかなかったのだ。おまけに尊敬する李絳攸が国王の執務補佐の時以外は一般官吏と同じものを食べるとあれば答えは決まっていた。
「吏部です。弁当を受け取りに来ました」
「できあがった分から必要量を持って行ってくれていいから」
 珀明にとっても初めてのおつかいではないのだから、どこでどう受け取ればいのかは判っている。彼は人数分の重箱を取ると蓋を開けて中身を検分しはじめた。――以前、ついに思考能力のなくなった修羅場の先輩たちがおかずの数で喧嘩を始めたときからの習慣だ。

「あ!」
 中を見た途端、珀明は小さく叫んだ。慌てて別の重箱の蓋を取る。更に別の……。
 厨房は戦場。しかし自分の所属も戦場。ここで怖気づくわけにはいかなかった。
「すみません! おかずがありません!」
「なにいっ!? んなわけないぞ!」
 庖丁人の一人が、この若造、何いちゃもんつけてやがるといった勢いで重箱を覗き込んで来た。
「……ないな」
「……はい」
 ご飯は入っているし、おかずも一部は残っている。しかしどの重箱にもきれいに何も入ってない部分が目に付いた。
「おい! 今日の主菜入れ忘れてるぞ!」
 庖丁人が別の男に叫ぶ。
「そんなはずはない! たしかに入れたんだ!」
「でも実際に入ってないんだ。とっとと主菜の鍋寄越せ。俺が詰めてやるから」
 どうやら重箱におかずを詰める担当だったらしい男は鍋を抱え上げて珀明の隣にいる男に渡そうとして固まった。
「どうした?」
 問いかけられた男は声も聞こえない様子で鍋の蓋を開けた。
「……なあ。今朝確かに庖丁長が山盛りに作ってたよな?」
「ああ」
「……ないんだ」
 男は途方にくれた様子で空になった鍋の内側を見せた。確かに菜の後はある。鍋のへりに残った橙色は南瓜のものだ。しかし、鍋一杯にあったおかずは見事に消えうせていた。
 徐々に庖廚に緊張が走っていった。
「すみません、他の重箱や鍋も確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
 弁当を持ち帰らないと先輩たちから益々人間らしさが失われてしまう。珀明は『うさぎおとこ』の群れに問いかけた。
「そうだな。おい、手分けして調べよう!」
 庖丁人の中では上位にいるらしい男の掛け声に、厨房では鍋や重箱の蓋が次々と開けられていった。
 結果は、先ほどと同じ。
「弁当を取りに来たのはこの兄ちゃんが始めてだよな?」
「ああ、他はまだ来てない」
「たった半刻前だぞ、こっちの鍋から重箱に移したのは」
 騒ぎは厨房全体に広がりつつあった。しかし、外に持ち出せるような量ではない。第一、わざわざ重箱に一度詰めた分を取り出していくような手間のかかる作業をする時間もなかった。
「ええい! 無いものは仕方ない! 大急ぎで作り直すぞ! 材料持って来い!」
 恰幅のよい庖丁長が一声叫び、厨房は目が覚めたように動き出す。しかし。
「大変です! 食料庫に南瓜がひとつもありません!」
「馬鹿を言うな! 昨日、山のように注文した分がまだあるはずだ!」
「でもどこにもないんです!」
 殺気立つ中、それでも珀明は勇気を出して発言した。
「行方不明の南瓜と菜は後で調査してもらいましょう。ですから、急遽、別のおかずを用意してください。うちだけじゃない、他の部署ももう来るはずです。その時おかずが足りないとあれば……」
 飢えた官吏が文句を言いに山を成す様が容易に想像できた。庖丁長はしばし熟考したが珀明に向かって深く頷く。
「たしかに。ここでおかずがないまま渡すわけにはいかない。大至急別の主菜を用意させてもらう!」
 本日の指示は南瓜菜であったが背に腹は変えられぬ。厨房では大回転で別の主菜が作られ始めた。

 多少の時間差はあれ、宮城のあちこちの厨房で同じことが起こっていた。珀明はすぐさま報告に走ったし、他の厨房でも同じだった。
 こうして王宮中からすべての南瓜が消えうせたのだった――。

(つづく)



拍手ありがとうございます!
読んでくださった方が南瓜が食べたくなるような話をめざします!?

H19年11月24日

本日は京の西にある人形の聖地へとお出かけ。
ここのお庭は紅葉の隠れた名所なんですが、
ここですらあまり綺麗な紅葉には出会えませんでした。
それでも、いくらか色づいた紅葉をバックに、
着物姿の少女人形たちの愛らしさに癒されました。

ところで、この聖地へと向かう途中、
お昼を嵯峨駅近くの料亭で予約してたのですね。
近くまで辿り着いた後、人的渋滞で進めなくなりました。
すっごい人です。

帰りも途中までJRを利用したのですが、
まるでラッシュ時の電車のように完全に満杯。
つぶされかけ、不自然な体勢を強要され、
身体が悲鳴を上げていました。
その後、和装小物屋さんで買い物したり、
インド料理の店でたらふく夕食したりして。
「辛さ選べます」
といわれ、嬉々として「なるだけ辛く!」をお願いしました。
満足な辛さになってほくほく。
しかし、食べすぎで苦しくて眠くて。
全部JRで疲れたせいだと思います。
さて、明日もおでかけだ!


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『君知るや南瓜の国』第二部・第十三回

 小鬼対策は外殿を十六衛、内殿を羽林軍に任せることとなった。だが、その報告が最終的に集結する場所――それが宰相室である。
「悠舜、今日の怪異とは小鬼のことだったのだろうか?」
 足の悪い悠舜を気遣って、国王自ら宰相室に赴いたところだ。
「そうですね。一部ではあると思います」
 鄭悠舜は労わるように劉輝に視線を送った。若き国王は優しい。その優しさを曇らせたくはなかった。窓の外は深まった秋の気配に彩られていたが彼らには届かない。
「これで終わりではないのか」
「これで終わる程度でしたら、羽羽殿があそこまで顔色は変えられなかったと思いますし、霄太師の進められたこの異装とて何らかの意味を持つはずです。今はまだ無害と言ってもいい状態ですから」
 後宮からずっと劉輝に付いてきた楸瑛が悠舜の元に届けられた報告を指差した。
「たしかに、『小鬼の姿が見られた』との報告はありますが、奴等が何かしたという報告はまだ一件もありませんね」
「宮城に入り込まれたということだけでも害がないとは言えませんが、ともかく小鬼たちの目的もまったくわかっておりませんし」
 穏かな容姿に宰相はひとつ首を振って続ける。
「星を読むことの重要性を今回は感じました。これまで無縁のことと専門の方にお任せしておりましたが、やはり無視することができないのだと。この件が片付きましたら羽羽殿にご教授願おうかと思います」
 悠舜を宰相にと決断したことを間違いだと思ったことはない。だがこの優しい人物から取り除くことのできない疲労に劉輝は心を痛めていた。
「いや、悠舜がそこまでする必要はないのだ。そのために仙洞省があるのだから」
「しかし、古来より国家の運営に欠くことができぬと言われて重視されてきたことです。それに、まだ知らぬ学べることがあるというのは心躍らせませんか?」
 最後は笑ってみせた悠舜に、反射的に劉輝は叫んでいた。
「それならば余が学べばいいのだ! 昔は国王必須であったとも聞く。それに、血筋的にもそう向いていないわけではないと思うのだ」
 悠舜と楸瑛は一瞬視線を交差させた。劉輝の発言が悠舜を思いやってのこととわかったからだ。
「残念ですが主上には他にも学んでいただかなければならないことが山積です。星読みなどは優先順位が低すぎますね。第一、仙洞省の人間はそのためにいるのですから、彼らの仕事を奪うのは関心しませんよ」
 楸瑛がやんわりと止めに入る。星読みを学ぶのはいい。だが下手に手を出して星ばかり重視されても困るのだ。かつてそうして政治を誤った王とていないわけではなかった。

「まあ、星読みを学ぶのはまだ先のこととして。お二方、これを見てくださいますか?」
 悠舜が卓上に巻いた紙を広げる。宰相の執務机は大きいが、それを覆うほどあった。
「宮中の見取り図がどうしたのだ?」
「これはまた詳しい、よくできた見取り図ですねえ」
 見取り図の四方を文鎮でおさえ、悠舜は碁笥を手にした。
「新しく作らせたものです。まず、最初の小鬼の目撃が伝えられたのが――」
 白い碁石を外殿のある場所に置く。
「次に――」
 そうして悠舜は白い碁石を次々に置いていく。
「今度は内殿です」
 碁笥をもうひとつ取り出し、黒い碁石を悠舜の骨ばった指先がまた埋めていく。
「これを見て気付かれることはありませんか?」
 先に発言したのは楸瑛だった。
「初めの報告が十六衛からのものが多かったにしろ、衛兵の目の届く場所が多いですね」
 羽林軍は武官の精鋭である。戦略、戦術についても知っていなければならない。
「ええ。まるで、わざと目につくように現れているように思います」
 もちろん、文官であっても兵法を学ぶ必要もある。特に高位になればなるほど武を知り治めることも必須とされる。
「それに反して、内殿での目撃情報は偏っているように思う」
 劉輝もまた考え込みながら発言する。
「やはりそうですよね。そもそも貴陽は――、更に王城は怪異を寄せ付けぬ場所です。異世界のこととて理(ことわり)が違うと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、ことに『禁苑』とされる場所は避けて見えます」
「つまりは、貴陽の防御それ自体は機能しているということだな。ならばこの状態を打破するためには仙洞省の協力をもっと仰ぐべきだ。彼らならばその手の知識は保有しているはずだ。多少勝手が違っても有効である可能性は高い」
 リオウは自身を無能であると言うが、あの年齢であれだけの知識があるのだ。ましてや高齢の羽羽であれば実用的な対処法を知っていて不思議ではない。
「動きますかね?」
 楸瑛の言葉に含まれるのは、仙洞省の後ろにいる縹家を指しているのだろう。
「おそらく、長官と令尹の協力は得られましょう。これはそもそも羽羽殿が読まれたことなのですから」
「では護符などを用意させるくらいはできるだろう。よし! 余がさっそくリオウに掛け合って……」
 そのまま駆け出して行きかねない国王の衿を咄嗟に楸瑛が掴む。
「……主上、執務室に仕事が残っていますよ。そういったことは悠舜殿に一筆渡して処理してもらえばよろしいのです」
「超法規的に進めた方が早いことだってあるのだ」
 早い話が『国王命令でごり押し』である。
「では、その超法規的な一筆も別にお願いいたします。今はまだこのように様子見ですが、いつ事態が急変するやもしれません。そういう時に切り札として使わせていただきますので」
 さわやかな笑顔と共に怖いことをさらりと言ってのける悠舜の言葉に、おとなしく劉輝は言われた通りに二種の書類を用意しだした。
「……悠舜」
「はい?」
 筆を進めながら劉輝はつぶやく。
「無理させてばかりですまない。これが終わったら絶対休みを取らせてやるから」
「楽しみにしておりますよ」
 実際に悠舜が素直に休みを取るかといわれれば、それは否であっただろう。しかし、国王の気持ちを無碍にはしたくなかった。
「本当に本当だからな」
「はいはい」
 書き上げた書類に判を押し、劉輝は悠舜に手渡しながら念を押した。

 各部署に仙洞省からの護符が配られるまでに数刻。
 その頃彩雲国王は南瓜消失を昼食と共に知らされることとなる。

(つづく)



実は今回の連載のパートは予定に入っていませんでした。
しかし、どうしてもこのあたりが薄かったので急遽ツッコミました。
12月も続行かな……(遠い目)


拍手ありがとうございます!
必ず埋め合わせして辻褄合わせますから!

以下拍手記名コメントに反転レス
>信乃様。
オンリー行かれたのですね、楽しまれましたでしょうか。
しかし、影香スペース無しですか!?
きっと同志がいると信じていたのですが。
確定していないCPに惹かれる方が多いのでしょうか。
冬コミでは同志がいればいいのにと思います。
ああ、こんなに萌える二人なのに。書くのも楽しいのに。
というより、そろそろ二人が書きたくて禁断症状出そうです(苦笑)
どうぞ信乃様も温かくして体調を崩されませんように。
ありがとうございました!
(&オンリー情報も)

H19年11月25日

本日のお出かけは京都の北東。
一乗寺の小さなフレンチでまずランチ。
前菜にフォアグラ入りテリーヌ。メインに鴨のコンフィ。デザートに洋梨のブリュレ。
パンと紅茶付き。
これだけなのに、しっかり2時間かけていただく。
この時点で本日の予定は変更。
金福寺、詩仙堂、曼殊院を巡りました。
所々綺麗な紅葉があります。
去年とかだったらもっと綺麗だったかも。
どこも大変な人出です。
それでもまあ、ちょろっとは撮影もしたりして。
夕方になって鞍馬に移動。
露天風呂にゆったり浸かって疲れを癒します。
夕飯は名物の山菜釜飯。
帰宅したら大方10時前でした。
そして今日もまたもう眠い……。
昨日、夜9時半に寝たのですが、朝起きたのは8時半。
おっかしいな。
早く寝たら早く目が覚めるかと思ったのに。

今日の同行者は先日彩雲国を送りつけた友人です。
よい調子で読み進んでくれているようで、
ミニキャラの影香をCGで、本気影月をアナログで描いてくれました!
スキャナがあればアップするとこなんですけど!
いつかスキャナ買ったらね。
とりあえず額に入れて……あ、軸仕立てもいいなあ、
それとも額を中華な布で作って入れたりして?
――などと顔の崩れまくってる私なのでした。

ところで明日は連休の最終日です。
(遊び)疲れを癒しつつ、二つのサイトの更新などと企んでいたのですが、
お呼びがかかってしまいました……。
ええと、私、数に入ってるの?
行かないといけないの?
そんな訳でまとめての更新もちょっと微妙な雲行きなのでした。
ごめんなさい、右目はどうやら炎症を起こしてるみたいだし、
でも右目見えないと撮影が出来ないのでコンタクトをつけたりはずしたり。
でもあまりよくならない……。
今日も早く落ちます……。


連載まとめページこちら

『君知るや南瓜の国』第二部・第十四回

 通常、後宮という場所は隔離されており、外部からの情報などほとんど届かないものである。王位を狙える公子たちが居住しているでもなく、主が訪れる寵姫がいるわけでもない現状であれば更に情報など届くべくもない。――通常であれば。
 だが現在後宮を治めていると言えるふたりの女性の前には情報統制などは無駄なことだった。
「珠翠、色々起こり始めてるみたいよ」
「そうですね。今のところ被害らしいものは出ていないようですが」
 片や、彩雲国でもっとも権勢を誇る藍家の姫。片や、人には言えない過去とツテを持つ筆頭女官は対照的な白と黒の装いで顔をつき合わせていた。
 一見、十三姫の派手さに目を奪われてしまいがちではあるが、必至の抵抗虚しく珠翠の装いもただの仮装ではなかった。女官たちが後宮一美しいといわれる女性を飾り立てずにいられるわけはなかったのである。貫頭衣や外套には同色の黒曜石が散りばめられて光を反射しているし、細い帯は銀の刺繍でびっしりと埋め尽くされている。手にした箒だとて普通のものではない。柄は一応竹製。ただし、黒の篠竹。その先には亜麻色の撚った絹糸が房をなしていたりする。
「そうかしら。ねえ、特にこの二つ目が後宮では問題だと思うのよ」
「南瓜消失事件がですか?」
 そちらをさして問題視していなかったらしい珠翠は不思議そうに年下の姫君を見やった。
「ええ。だって、今日のお茶の時間には南瓜のお菓子が色々と用意されるはずだったじゃない。もちろん、代わりのものが出されるだろうけれど楽しみにしてた宮女って多いと思うのよ」
「それは大丈夫でしょう。殿方の前でさかんにお菓子を食べるような宮女も少ないでしょうし」
「殿方が南瓜でも?」
 十三姫の追及にさすがの珠翠も押し黙る。
「一応、通達は回したのよね?」
「はい。本日のお客様方は皆、南瓜の被り物をされていると。中身は精鋭の羽林軍兵士の皆様なので丁重におもてなしするようにと」
 常の武官の装いであれば歓迎するであろう宮女たちだが、南瓜の被り物をした男たちを冷たくあしらわない保障はない。
「それじゃ弱いわね。珠翠、それとなく噂を流してちょうだい」
「噂、ですか?」
「ええ。南瓜に隠されている本質を見通すことができるのは誰か、この私が知りたがってるって」
「十三姫のお名前を出してもよろしいのですか?」
「かまわないわ。これっくらいならね」

(つづく)


すみません、後宮編2、一回で終わりませんでした。
続きます。
やっぱり12月も続行かも……。

拍手ありがとうございます!
遊んでてもどこかで気にしてます。
ですから、最後までどうぞお見捨てなきよう……。

H19年11月26日

右目、絶不調。
そのため、朝〜昼のお出かけは勘弁してもらいました。
で、その間、私はぬくぬくと目と身体を休めていたり。
うん、単に寝てるとも言う。
ここ数日よく寝てると思う。
それだけ疲れているのかとも思ったり。


さてさて、昨日いただいたイラストなのだけれど、
描いてくれた本人の前で
「スキャナーがないっ!」
と嘆いてたら、CGもアナログ(取り込み済み)も送ってきてくれました!
なんていい人なんだ!
……ということで、連載の続きを一旦置いておいて、
新しいページを作ることにしました。
『蔵』の中に「頂き物」項目追加。
よろしければおすそ分けどうぞ♪
冬コミがんばれるよう念を送っておこう(笑)


1日中、右目は裸眼で過ごし、片目(左目)コンタクト。
見え方の差が激しいので気が付けば右目を閉じてずっと過ごしています。
ということは、眼帯とかしてても同じこと?
とりあえず明日の勤務ぎりぎりまでコンタクトなしで右目を労わろうと思います。

そうして片目で別サイトのトップと日記だけ変更。
どちらかを更新するためには片方閉じないと編集できないのが面倒。
こちらで人形お嬢の可愛さを説くわけにもいかないしね?

左目も限界となってまいりました。
このツケは明日払わそう。
って、何日分だよ(汗)



『君知るや南瓜の国』第二部・第十五回

 午後になって後宮へと国王がまず現れた。
「もうっ! なんでそんなに早く来るのよ!」
 あきれたように十三姫が言うと劉輝は真剣な表情で言い訳をする。
「余の大切な仲間に楽しく過ごして欲しいのだ!」
「あのね……。仕事はどうしたのよ」
 金色の冠をつけた南瓜の被り物をした国王は胸を張って答える。
「今日はどうせ執務にならないから切り上げたのだ。あちこちの部署でもそうしているぞ」
「それって明日が大変なだけじゃないの?」
 十三姫の指摘は正しいが、こうなると祭りも同じ。じっとしていられないのだ。それはわかるのだが、十三姫としてはど派手な自分の装いをあまり見られたくない。
「なんだってお茶に招くのに今日を選ぶのよ!?」
「それはやはり、せっかく南瓜仲間になってくれている彼らを労うのは早い方がいいだろうと……」

(つづく)


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ちょっとずれていきますが、必ず正しい日にちに追いつきますので!

H19年11月27日

休み明けの出勤は辛い……。
しかし、5日いなかっただけで、あれほど忙しかったのが嘘のような通常に戻っておりました。
おや?
なので、勤務中も片目コンタクトで押し切りました。
できるだけ右目を休ませるんだ。
ただ、負担が左目にかかってるせいか、首と肩の凝りがきついです。
ええ、たぶん目のせい。
お出かけで人形姫ぶら下げていたせいでは決してないと……
言い切れないのも辛いですが。

ちなみにリクエストがあったので、職場に「おみやげ」(?)として
生八橋を持参いたしました(笑)
地元の人間が買うことってほとんどないお菓子ですが、
えらい種類が増えてて驚愕です。

いちごにバナナにチョコに抹茶、黒ゴマ、塩、芋、栗、柿など。
ごく普通のニッキではあかんのか?
ちなみに、私は普通に生八橋は好きです。
それこそ滅多に食べる機会ありませんけど。

連載のまとめページを少し変更しました。
新しいリンク先では案内扉ページに飛びます。
その先は第一部と第二部に分かれています。
これはあまりにも長くなりすぎたための処置です。
あと、第一部は日別の分け方はしていません。章ごとの区切りです。
第二部も連載終了後はこの形になります。
新しい連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第十六回

 必死に弁明する劉輝を前にしていると十三姫はなんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。
「ああもう、子供みたい! そんなに気になるんだったら会場の下見でもしてらっしゃい!」
 劉輝を叩き出そうとしているところに楚々とした風情で珠翠が現れた。
「お茶会の招待客の方が見え初めておりますが」
「いかん! 案内せねば!」
 嬉々として飛び出した劉輝の後姿を見送りながら十三姫はため息をつく。
「お客様からすれば迎えは宮女の方が嬉しいんじゃないかしら」
「いえ。主上が行ってくださってよかったと思いますよ。主上がご一緒でしたら例え南瓜相手であっても失礼はないと思いますし」
 冷静な珠翠の指摘に十三姫は納得した。仮にも国王とその連れとあっては誰も無礼は働けまい。
「で、珠翠は覗きに行く?」
「監督という意味でしたら後ほど確認に」
 十三姫も珠翠も表に顔を出すつもりはない。人目にはできるだけ触れたくはない。特に今日は。ただし、この珍妙なお茶会の模様は少しばかり興味があった。
「そうか。それじゃあその時に私も……」
 十三姫が更に言葉を続けようとした時、かき消すように遠くで悲鳴があがった。
「なにごと!?」
 途端に踵を返して走り出した筆頭女官を追って藍家の姫君もまた走り出した。

 後宮とて変事からは逃れなれないと証明する出来事だった。
 茶会の会場近くで小鬼がついに目撃された。それを発見した宮女が甲高い悲鳴をあげる。同じくその方向を見た同僚がまた叫ぶ。
「おちつくのだ! 皆、一箇所に固まるように!」
 次いで国王は客人たちに命じて守りを固めさせる。数人を小鬼の消えた方向へと向かわせその結果を聞く。
「だめです! 目の前でかき消すように姿が失われました!」
 それはこれまで報告を受けていたのと同じ現象だった。そこで劉輝は宮女たちに告げる。
「これまで小鬼による被害は報告されていない。それにこの場には余と羽林軍の勇者たちがいる。安心するがよい。だがなるべく行動するときは単独で行わぬよう」
 それが例え南瓜であっても。次々命令を下す国王も、すぐさま機敏に動いて宮女たちの安全を図った羽林軍の兵士たちも、怯えた女官たちの目にはこの上もなく頼もしく映った。
 この日、茶会は成功した。
 宮女たちの中には、これ以降南瓜を特に好むようになる者が出たりもすることになる。

(つづく)


後宮編、一応終わりです。
十三姫と珠翠はまた出るかもしれません。


拍手ありがとうございます!
甘い甘い影香も必ずお届けしますんでしばしお待ちくださいませ!

H19年11月28日

シフトの関係で休み。
「休んでるばっかりじゃない?」
と思われても困るので言い訳すると、
週休2日は取らないといけないのです。
取らないと会社が文句言われるんです。
で、連休はちょっとイレギュラーなもんで、こうなっちゃうんです。
いや、私は休みが沢山ある方が歓迎だけどね?

で、前夜も比較的早くに休みました。
負担を一挙に引き受ける形になった左目が疲れきってくれたからです。
そんなわけでぐっすり眠ってさわやかに目覚める。
ああ、いつもこれだけ(10時間余)睡眠を取れたらいいのになあ。

元気なうちにと連載を少し進めて。
でもPCはやっぱり疲れるのでと電源は早く落としました。
……連載が面倒だなんて、そんなことは少ししか思っていませんよ?

しかし結局、私の趣味って目を酷使するものが多いんですね。
夕方ころから何故かスイッチが入って、
人形姫(大姫)の着物を縫いだしてしまいました。
通常ですと1枚に4,5日はかかるんですけど、
ものすごく集中してたのと、扱ってた生地が針通りの良いものだったせいで、
さくさくさくさく進みます。
着物を作るのは半年以上ぶりで、
サイズとかやり方とか忘れてるんじゃないかとも思っていたのですが、
何の問題もなく進みます。
さすがに伊達にこれまで枚数縫ってたわけじゃあないわね。
(大姫は私の作った着物を30枚、浴衣を10枚程度は持ってます)
で、気が付けば午前4時。
工程は9割完成という状態でした。
この集中力が私の意志で自在にできさえすれば!
ちなみに翌日きっちり完成させるのですけれど。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第十七回

(この顔ぶれは何かの悪意によるものだろうか)
 内心の動揺を別の様子に変換して情けない声を上げた男は『きゅうけつき』の装束である。目の前には『みいらおとこ』と『おおかみおとこ』が彼を見下ろしている。
「それで、小鬼が出現する様子を君は見たというのだね?」
 例え包帯ぐるぐる巻きであろうと優雅な様子をかもし出す男が問いかけるのに楊修は怯えた表情を作りながらうなずいた。
(見たのは本当。しかし、よりによって居合わせたのが門下省令尹とは……)
 吏部の覆面官吏である楊修は、現在六部のとある部署に所属している。仕事は真面目、ただし田舎者で切れ者ではないという印象でやり過ごす毎日だ。現在、彼の上司にあたる人物よりの命令で、府庫に必要な書籍をとりに行く途中であった。
「これまで小鬼を見たという報告は随所で聞かれましたが、出現の瞬間を見たというのは初めて聞きます。詳しいことをお聞かせ願います」
 楊修の情けない悲鳴に駆けつけたもうひとりの人物。『おおかみおとこ』な武官は冷静かつ丁寧な口調だが、どこか有無を言わさぬところがある。
(右羽林軍の所属は確かなんだが、現在の正確な役割は明かされていなかったな)
 武官の尻尾の色は素のままの灰色。羽林軍兵士による尻尾色分け騒動を知らぬ者は宮中に少ない。それだけ目の前の男の腕が優れているということなのだろうが、問題は腕より素性である。
(シ静蘭、ねえ……)
 吏部に集まる情報量は実際莫大だ。それを取捨選択して必要なものを見極めることも優秀な吏部官吏の条件である。その中にあったこの武官の情報にはただ「黙視推奨」の札が貼り付けられていた。藪をつついて蛇を出したい者はあまりいない。楊修とてできれば関わりたくない人物のひとりであった。
 だが内心の計算を押しやって楊修はとつとつと答える。
「そこの壁なんですけど、見ていたら『ぐにゃり』って感じに歪んだんですよ。歪んだな、って思ったらそこから四、五匹ばかりの小鬼が現れたんです」
 いやあ、気味が悪くて腰が抜けましたと言い募る楊修は、実は現在も座り込んだままである。駆けつけた二人の人物の姿に、自分の素性を隠し通すためにも座っていた方が考えることに集中できるという理由で選択をしたのだ。
「ふーん? このあたりかな?」
 凌晏樹が指差す方を見て楊修は首を振る。
「いえ、もう少し右の下の方です」
「それではこのあたりですか?」
 武官が鞘ごと抜いた剣を壁に近づけると、周囲にもわかるほど剣が震えるのがわかった。
(干將……)
 その剣は破魔の剣。そうして目の前の異変を知らせてのけた。晏樹も楊修も始めて見る呪具の様子に目を離せなくなった。
「静まれ、干將」
 冷徹な主の声で静蘭が短く命じると、不服そうな余韻を残しながらも剣はうなりを止めた。

(つづく)



アミダの神様のご神託に少しだけ答えてみました。


拍手ありがとうございます!
ちょこちょこですが連載は続けていきますのでチェックお願いします。

H19年11月29日

帰路、先日描いてもらった影香イラストにSSというか
ワンシーン切り取りみたいな文章をつけようかなと
てくてく歩きながら考えておりました。
……ずいぶん寒くなってきました。
気が付けば頭の中では
「ほかほか肉まんに捧げるポエム」に変化しておりました(爆)
私、あんまんより肉まんの方が好きなんです。
そうして、冬場のあったか肉まんは幸せの象徴です。
夕飯を済ませていなかったら、絶対買って帰ってたと思います。

そう言えば少し前、コンビニのampmで、
黄色い豚の顔の肉まんが売られていて、
とてもとても気になっていたのですが、
いつのまにやらなくなってしまいました。
なんだかお金の貯まりそうな素敵な肉まんだったのに。
ネタのためにも一度は食べておくんだったぜ。

目の具合は一進一退?
どうも職場で痛くなるような?
最初に痛めたのも職場でだったし。
環境が悪いのかしら。ほこりっぽいから。
とりあえず、もう少し様子見です。

帰宅してから友人に渡す約束だった人形着物用材料を漁る。
はぎれで買うことも多いけれど、
うちの大姫サイズだとけっこう布を喰います。
なので結構反物一反とかで持ってたり。
平均4枚くらい取れます。
でも同じのばかりいらないので時々放出するわけです。
いろんな生地がざくざく出てきます。
ついでに、仕舞いこみすぎてた自分の着物を4枚・帯1本・長じゅばん1枚を発見。
1週間前にこれ(長じゅばん)が見つかっていれば
紅葉柄の着物が着られたのにっ!
でも、ちょっといい着物が出てきたので忘れず正月にでも活用することにしましょう。
あ、その前にドールイベントのお手伝いで着物を着るわね。

ストーリーにならないような細切れ影香妄想で
日々しのいでおります。
いい加減、クリスマスの煮詰めもしなきゃいけないのに。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第十八回

(この威厳はどこから来るものか)
 楊修は正確な静蘭の素性を知らない。推測はできるのだが答えてくれる者がいないため保留にしてある。晏樹の視線が好奇の色を交えながら武官へと注がれているのを意識はしていたが。
 静蘭はそのまま鞘を壁に近づけていったが、ふいに動きを止めた。
「どうしたんですか、シ武官?」
 お互いに名乗ったわけではないが、門下省令尹はやはり美貌の武官を把握していた。
「凌令尹、この壁は普通ではありません」
 通常、官吏であっても自部署の上司以外は顔まで知っていることは少ない。ましてや武官である。門下省の高官を見知っていること事態普通ではないのだが、誰もがそれは無視した。
「な、なんかあるんですか!?」
 狼狽した声を出して見上げた楊修に答えず、静蘭は手近で拾った小石を壁に向かって投げた。
 小石は何の音もたてずに消えた。
「え? 石は!?」
 楊修の声に今度は静蘭が返答する。
「見た通りですね。いえ、見た目には普通の壁ですが、この場所は壁でなくなっています」
 言いながら静蘭は今度は鞘ごとの干將を小石を投げたあたりに近づける。
「おや」
 場違いなほどに緊迫感のない声を上げた晏樹の表情が、それでも驚きをたたえる。壁の一部が丸く黒く渦を巻いているように変化したのだ。それはまるで干將を避けようとするかのようにも思えた。
「異世界と繋がっている、ということかな?」
 それでも晏樹には慌てる様子はまったくなかった。
「可能性はあります。宮中のあちこちで見出された小鬼。先ほどこちらが見たと言われるように、このような場所から出現した可能性は高いと思われます」
「それで、君はどうするんだい?」
 この場にいる中ではもっとも高官である男の関心が、妙な壁の状態よりもこの後静蘭が取る行動に向けられているのを楊修は感じ取った。
(気持ちはわかるんですけどね)
 羽林軍の兵士として現在は知られているものの、楊修の推測が正しければこの男の素性は誰もが興味を持って当たり前。ましてや曲者の門下省令尹にしてみれば今後の対策にも左右するだろう。
「この場は私が見張ります」
 静蘭はそうしてまっすぐ楊修を見つめた。
「申し訳ありませんが、右羽林軍に至急の伝言をお願いします」
 まさか晏樹に頼むわけにもいかないだろう。もっとも、楊修がいなかった場合ならば晏樹すら利用したかもしれないと思わせるだけのものが静蘭にはあった。
「わ、わかりました!」
 小鬼の出現場所と推測される場所を発見。複数名の兵を至急派遣されたしとの伝言を受けて楊修はよろよろと立ち上がり、早過ぎない、機敏に見えない程度で小走りにその場を離れた。
(もう少し観察していたかった気もするが……)
 それでも足は止めない。大物を二人同時に相手するには不適切だと指摘する楊修の中の理性の声に同意したからだった。

(つづく)



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単発も連打もどちらも嬉しいです!

H19年11月30日

朝、出社したらいきなり上司から
「今日、○○式に出て」といわれる。
社内で出してる認定をもらえるやつ。
12月入ってからって聞いてたんですけど。
ってか、この通達、一週間前に出されてるじゃないですか!
場所を聞いたら「役員会議室」と言われる。
……それ、どこ?
長年勤めてても知らない場所ってあるもんだねえ。
個人的にこの認定はどうでもいいものではあるけれど、
ここまで来るのにやたら手間かかってるので
その煩わしさもこれで解放かと思うと気は楽だけど。

しかし、どうしてお偉いさんの話っていうのはあんなにつまらないんだろう?
いっそ落語でも聞かせてくれと思う。
いや、下手な落語だったら聞きたくはありませんが。
うまい落語だったら聞きたい。
そうか!つまり上司に落語家を!
……仕事にならないな。

ということで無理矢理(?)彩雲国にこじつけてみる。
「短く的確に、なおかつおもしろく」話してくれる(訓示、朝礼など)上司になれるのは?
(学生さんであれば上司でなく校長でも可能)
……「短く的確に」コースであれば、合格になるキャラは何人もいます。
しかし、「おもしろく」が難しい。
改めて、彩雲国キャラに「話し上手」がいるかどうかで考えこんでしまいました。
……思いつきませんでした。
でもこういうのって性格の他に慣れもあるしで、
最終的に上司に櫂瑜様をお願いしますってことで――。


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『君知るや南瓜の国』第二部・第十九回

「ところで、いつまでここにいらしゃるんです?」
 風采の上がらない官吏が伝言を伝えるために姿を消した後、静蘭はその場から動く様子のない晏樹に気付いた。
「うん? だって面白そうじゃないか。そこから小鬼が出てくるんなら」
「……出てくるとは限りませんし、出てくるとしても随分待たないといけないかもしれませんが」
 静蘭としては、こんな食えない人物にはとっとと退場してもらいたいというのが本音だった。だが晏樹と言えば何処吹く風だ。
「待つのは嫌いじゃないし。君とは一度話してみたいと思っていたしね」
「……生憎、私はあなたを存じ上げませんが」
「そう? 私の顔と名前を知っていたじゃないか」
「それはあなたが目立つ方ですから。それに……」
 秀麗から桃を持って現れる妙な人がいると聞いたことがある。大切なお嬢様の近辺の妙な人物であるならば見極めるのも自分の仕事であると静蘭は思っている。
「それに?」
 一体どんな言葉が続けられるのか興味津々と訊ね返した晏樹ではあったが、その声は野太い叫び声にかき消された。

「静蘭! 変なものを見つけたんだってな!」
「……なんだってあなたがわざわざ来るんですか」
 もう少しで脱力のあまり静蘭はその場に座り込んでしまうところだった。現れたのは彼の上司、右羽林軍を率いる白雷炎である。
「それはだ。暇なのが俺くらいでな。うちの部下たちは小鬼発見の声と共に走り回ってるし、一部は南瓜被っていそいそ後宮くんだりまで出かけやがったし」
「……それでも、まだ人員はいるはずでしょう。大将軍が出てくる場合じゃないと思うんですが」
 言いながら静蘭は晏樹の姿が消えているのを確認した。どうやら白大将軍には興味がなかったらしい。
「消えてくれてよかった……」
「ああん? 俺に消えろってか!? こら、剣を抜きやがれ!」
「もう抜いてるじゃありませんか!」
 いきなり唸りを上げて打ちかかってこられた剣をなんとか咄嗟に受け止めて、静蘭は後ろへと大きく飛びのいた。
「ちっ! 受けやがったか」
「消えて欲しいと思ったのはさっきまでここにいた人物ですよ」
 次々と雷炎から繰り出される剣を紙一重で避けながら静蘭はそれでも弁明した。
「誰かいたのか?」
「門下省令尹が」
 途端に雷炎の顔がすっぱいものを食べたような表情へと変わる。
「……そいつは消えてもらって正解だな」
 どうやら相性はあまりよくないらしい。見るからに合わなさそうではあるが。
「ところで、そろそろ肝心の報告を聞く耳はお持ちですか?」
「嫌味言いながら避けるんじゃねえ! どこだって!?」
 静蘭は壁の該当場所に干將を無言で近づけてみせた。
「……そうか。さすがの異世界の悪鬼も、根性悪の縹家が作って根性悪の持ち主のいる剣は嫌と見えるな」
 滅多にないことではあるが雷炎の言葉に少しばかり腹を立てた静蘭は、自分から打ちかかっていった。――本気で。
「おおっ! いい気合入ってるじゃねえか!」
 しかしそれは大将軍を喜ばしただけに過ぎなかった。あっさりと切り替えされて内心歯噛みする。
「ちょっとはこの現象を解明しようって態度くらい取ったらどうですか」
「あのな静蘭。俺らが官吏の仕事取ってどうするよ。見張るくらいはしてやるがこんなわけのわからんことは、あいつらに押し付けるに限るからな。安心しろ。さっきちゃんと宰相室に挨拶してから来たからな」
 静蘭はこの時、心から悠舜に同情した。

 静蘭の同情だけでは悠舜には足りそうになかった。雷炎から改めての報告を受けた後、似た報告を受け取ることになったのだ。ひとつは工部から。もうひとつは戸部から。
 異変はまだその全貌を明らかにはしていなかったのである。

(つづく)


うーん、雷炎は今回出てくる予定ではなかったのに。
まあいいか。書きやすいんだ、彼は。


拍手ありがとうございます!
追いついて完成する(重要)まで見守ってください!

H19年12月1日

ついに師走突入です。
そしてこの期に及んでまだ連載が終わっていません。
まあ目の調子が悪いとか、遊びほうけていたとか、
単に面倒だったとかもあるのですが、
なかなか日記の日付けに追いつきません。
せめてそれくらいはしたい……。

そうしてよそのサイト様とか拝見していると、
「うちもがんばらねば!」
と思うのです。
「らぶらぶ影香、甘さ増量の季節だよ!」
けれど。けれど。
連載が終わらないことにはどうにもなりません。
ここは心を鬼にして、自分に鞭打って連載すすめたいと思います。
何せ、これでクリスマス話が書けなくなったりしたら
自分で自分が許せないからね?

毎日でも苦吟していたのに、
数日分まとめてとなると、更に大変です。
でもせめてもう1日分でも書いてしまおうと足掻いています。
地道に下の日記に連載が加えられておりますので
読んでいただけると嬉しいです。

ところで、前の(10月までいた)部署の人に
「痩せました?」と言われました!
これは、異動した時に必ず起こる
「異動痩せ」が出たと思われます。
慣れるとだんだん効果がなくなるんですけど。
異動して一月。
ずいぶん人の顔と名前を覚えました。
これ、重要です。
仕事そのものに関しては扱うものが変わっただけで
基本やることは同じなので、
まわりからは堂々とやってるように見えるらしい。
内心、かなりびくびくしてたりもするんだけど。
今のところトラブルもなく過ごしています。
これからもそうだといいな。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十回

 工部の管轄に、お抱えの工匠たちが所属している部署がある。さまざまな専門家がおり、生み出されるものは爪の先より小さいものからそれこそ街づくりまでと幅広い。
 その工匠たちから苦情が上がってきたのが午後も半ばを過ぎた頃だった。
「工房のあらゆるところから銀が消えました」
 鉱物は多々あれど、銀はもっとも多く使われるもののひとつだ。特にこういった部署では、金や白銀で作る前の試作品などにもよく使われる。
「泥棒か?」
 報告を受けた管飛翔はまずそう問うた。
「んな訳ないでしょう! 目の前で消えたと彼らは言ってきてるんですから。話くらいきちんと聞いていなさい!」
 今日という日が訪れたばかりの時、工部侍郎は最高に機嫌が良かった。異世界の装束とはいえ、尚書をはじめとしてむさ苦しい工部官吏たちを一斉に品良く仕上げたのだから。次々と家人の手を経て現れた官吏たちの姿を見て、欧陽玉は不覚にも喜びの涙を流すところであった。
 しかし、それも朝議に列席するまでの短い幸せだった。尊敬する黄尚書、並びに好意を抱くにやぶさかでない好人物の景侍郎。戸部のふたりの姿を見た瞬間に終わったのだ。名工の作を汚されては碧門家の誇りが泣くといきり立ってみたものの、吏部侍郎には犯人追求をかわされ、礼部侍郎には蝙蝠に飾りをつけようと提案をしただけで人でなし扱いを受けた。さらには珀明によって
「無念も不快も理解はできるが諸事情あってのこと。ここはどうかおさえて欲しい」
 などと釘を刺されてしまったのだ。
 碧家並びに碧門家は、その反骨精神でも知られるところではなかったか。もしや碧家の精神は摩滅してしまったのかと玉は嘆いた。嘆いたところで主家の命令は絶対である。
 そんなわけで、せっかく工部官吏を見栄え良くしたものの、侍郎の機嫌は悪かった。であるから、飛翔への言動も通常より棘の成分費が高い。
「だがな陽玉。普通ならここは物取りを疑うのが筋だろう」
「今日という日に普通を期待する方が間違っているんですよ!」
 おそろしく普通とかけ離れたなりをさせられている飛翔は玉の言葉に思わず納得した。
「じゃあお前はどう思う? 銀といえば普通ならまあ値打ちがある。消えたのはうちの工房からだけだと思うか?」
 今度、うならされたのは玉の方だった。
「……戸部!」
「だろうな、一番問題なのは」
 どんなに洒落めかされようが、手放さない酒の器を傾けながら、さすがに飛翔は表情を硬くしたのだった。

(つづく)


亀の歩みですが少しずつ日付けに追いつけていってると思います。
がんばりますのでよろしくお願いします。

H19年12月2日

書いてる途中のものの続きを考えるためとか、
誤字脱字の確認のためとかで、
ここ数ヶ月、自分で書いたものをプリントアウトすることが多くなりました。
インクは現在のところ確保しております。
足りないのは紙の方でした。

で、ようやく思い出して(いつも忘れる)、仕事帰りに100均へ。
……ありませんでした。品切れのようです。
そこで電機屋へと向かいます。以前、安売りしていたのを見たことがあるので。
安売りの紙はありました。
しかしそれは、500枚入り。
500枚、500枚ってアナタ、重いんですよ!
根性無しの私はそれよりは1枚あたり倍額になる250枚入りで妥協したのでした。
250枚の重さの差って大きいてばよ。
まあこれで当分、気楽に印刷ができるというものです。

ついでに憧れのB5ノートパソコンを眺めます。
いつ見ても高いです。
正直、ネットに繋げなくてもいいんです。
はっきり言ってWORDさえ入っててくれたら。
いえ、EXCELでもかまいません。
利用目的は文章打つためだけだもん。
余計なもの付けたら、きっと本末転倒になることは目に見えているんだ……。

ついでにスキャナなども眺めます。
すっごいコンパクトなスキャナにうっとり。
ただし、お値段は一番安いものの3倍。
赤くないのに。
まあこちらはすぐに必要なわけではないから。

連載がついに12月に突入して。
もうこちらはすっかり開き直り。
たぶん後、残すところ5〜6パート。
ただし、1パートを1日で書き上げられるかというとたぶん無理なわけで。
……せめて上旬のうちに目処をつけたいです。

それが終わったらということで、影香クリスマス話の妄想を育てていたわけですが。
今年のクリスマスのテーマは
「しっとりちょっぴりオトナ(もしかしたらエロもあるかも?)」でした。
しかし、今日育った方向に行くとすると
しっとりもしっぽりもどこか遠くの星の話になりそうな気がしないでもないです。
おかしいなあ。
たしか、まだ暑かった頃に生まれた構想ではちゃんと「しっとりしっぽり」系だったのに。
まあ、それでも、いざとなったら力技で(苦笑)
ああ、影香、書きたいよー。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十一回

 工部からの連絡を受けて、戸部でもすぐさま調査が行われた。宝物庫の管理も戸部の仕事のうちである。
「鳳珠、やはり銀細工のものなど一部が消えていますね」
 宝物庫を開くための特別な鍵を手に景柚梨は自身の上司に報告する。この鍵がなければ何人たりとも侵入の不可能な宝物庫である。人によるものとは思われなかった。
「ついに実害が出たというわけか」
 悪鬼の仮面を被った黄尚書はそのまま貨幣鋳造部署への通達をしたためる。と同時に立ち上がり通達を柚梨に手渡すとそのまま尚書室から出て行った。
「鳳珠、どちらに?」
「悠舜のところへ。これは単に戸部ひとつの問題ではない。下手をすれば国家的損害をもたらす」
 文官とは思えぬ優雅なかつ油断のない足取りで戸部尚書は宰相室へと急いだ。

「悠舜、入るぞ」
 案内もなく宰相室に入り込んだ同期を、それでも微笑を浮かべて悠舜は迎えた。
「銀ですか、鳳珠」
「そうだ」
 さすがに深刻な表情で悠舜は何かを取り上げる。
「いささか遅きに達しましたがすぐさまこれらを配布しますので」
 悠舜が手にしているのは紙束である。表面には何か文字が見える。
「何だそれは」
「仙洞省に急遽用意させた護符です。異世界からの異常にも対処可能であることが証明されましたので。もっとも、銀などというものが被害に合うとは夢にも思っておりませんでしたよ。南瓜で済めばまだ笑っていられたのですが」
 護符をあちこちから検分しながら鳳珠は面白くなさそうに口にした。
「仙洞省に頼る以外に方法はないのか」
「これが人的行動から来る事態であれば対処は可能ですが、あまりにも想像の埒外なものですから」
 つまりは方策はないに等しいということだ。宰相室に沈黙が落ちる。
「ある人物が本気で協力してくれるならあるいは……と思わないでもないのですが、期待するだけ無駄に近いとわかっていますからね」
「誰だ?」
「この今日の日の我々の衣装を勧めてくださった方ですよ」
 苦味をこめた悠舜の口調に、はき捨てるように鳳珠もまた同意した。
「あれは当てにするだけ無駄だ。我々はせめて出きることをしよう。悠舜、護符はどのくらいある?」
「仙洞省総動員で現在百枚といったところでしょうか。しかし、戸部への割り当ては増やします。これ以上財源に穴が開くのは放置できませんからね」
「どうせ仙洞省など普段ろくに仕事をしていないのだ。この時とばかりにこき使っておけ」
 これから先、まだどんな被害が出るかもわからないのだ。仙洞省には泣かれようが働いてもらうつもりだった悠舜はうなずいた。
「今日という日は仙洞省にとっても忘れられない日になるでしょう」
 傾きかけているとはいえまだ陽は高い。窓の外に視線を流して宰相は長い一日を思ってこめかみを押さえた。

(つづく)


悠舜、鳳珠も登場予定はなかったのですが、この流れで出ないのも変かと予定にねじ込みです。
工部と戸部からは「こういう報告があった」で済ませるつもりだったのですが。
ああ、こうしてずるずるいくんだわ……。


拍手ありがとうございます!
この連載をそれでも投げ出さずにいられる力をもらってます!

H19年12月3日

クリスマス話の構想をもう少し具体的にしてみました。
今のところ甘い気配がありません。
本タイトルはまだ悩み中ですが副題というか
裏タイトルはあります。
「ロマンティックを取り戻せ!」
……つまり、現状だとロマンティックが少ないと。
とりあえずもう少し膨らませていきたいです。

連載がどうして終わらないのか考えてみたんですが。
登場人物が多いこと。
そして例外なくそのキャラたちの会話が多いこと。
……そりゃ長引くはな。
これからラストに向けてスパートかける予定です。
ついてきてもらえるといいな。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十二回

 静かに夕暮れが宮城を染め上げようとする頃、秀麗は蘇芳と共に府庫へと急いでいた。
「この時間になってから資料が足りないことに気付くなんて! もっと早くから判っていれば良かったのに。ああ、今夜ちゃんと帰れるのかしら」
 急ぎ足の秀麗の後をたらたらとついて歩く蘇芳は幾分不満そうである。
「なあ、そんなに真面目に今日片付けなくてもいいんじゃないの? 今日は仕事にならないからって切り上げててる部署だって結構あったじゃん」
「よそはよそ! うちはうち! 第一、うちの長官にそんな理屈通用するわけないじゃない」
「そらそーかー。『とうめいにんげん』でいるけど見えない人だからなー」
 葵皇殻の御史台への指示は徹底している。見えていても見えてはいけない本日の長官は、それでも仕事の手を緩めることはない。
「それによ? こんなわけのわからない状態だからこそ――」
 秀麗は周囲を見渡して言葉を切った。目の前を『みいらおとこ』と『ふらんけんしゅたいん』が話し合いながら通過していった。黄昏を背景に悪夢のような光景が至るところで見られる。
「――こんな日だからこそ、御史としては陰謀の芽がないか目を光らせておかないといけないのよ」
 長官の意図もそのあたりにあるのだろうと思う。もっとも、こんな異常な日でなくとも御史台は常に緊迫してはいたが。
「今日みたいな日に下手なこと企んだって、変な方向にひっくり返りそうだと思うんだけどな」
「そこまで考えるようだったら下手な企みはしないだろうし、頭のいい人物だったらあえて今日にぶつけてくるかもしれないし。ほらタンタン、府庫に着いたわよ。さっさと探してしまいましょう」
 慣れた様子で府庫へと入っていく秀麗の後から、それでも面倒そうな足取りで蘇芳はため息をつきながらついていった。

「おや秀麗、この時間に来るのは珍しいね」
 府庫の主は入り口から入ってきたばかりの娘を素早く見つけて声をかけた。いつもならば秀麗が府庫に現れるのは就業する前のことが多い。
「今になって足りない資料があることに気がついたのよ。あ、父様、急ぐからお茶はいらないわ」
「そうかい? ここにいる間だけでもゆっくりすればいいんだよ」
「だめ。そんなことしてたら今夜帰れなくなっちゃう」
 勝手知ったる府庫の中。秀麗はあちこち飛び回って必要な書籍を卓上に積み上げていく。
「ちょっとお嬢さん! こんなに使わないだろう?」
 運ばされるのが誰か知っている蘇芳は思わず悲鳴をあげた。
「だって、少しずつあちこちに書かれてるんだもの。仕方ないわ。タンタン、持てる分だけ先に持って帰ってちょうだい」
 書籍の山の前でがっくりと脱力しながらも、懐から出した風呂敷に蘇芳は書籍を包みはじめた。
「じゃあ先に戻ってるけど、後でまた来るからあんまり無理して持たないように」
「ん。ほどほどにしておくわ」
 風呂敷包みを背負った蘇芳を見送って、秀麗はなおも府庫の中での物色を続けた。横目で見守っていた邵可はざっと書名を確かめると助言をする。
「秀麗、この本があるならこちらとそれはいらないよ。内容が重複してるからね」
「本当? 助かるわ」
 少しは減った本の量にあきらかに安堵しながら秀麗は父を見上げた。
「さすが父様。こんな本も読んでいるのねえ。それはそうと、どうして府庫の父様が『あくま』なの?」
 いつかは聞かれるかと覚悟していた邵可は変わらない表情のまま答える。
「うん。府庫は独立してるから。特にどこかに所属してるわけでもないし、どうしたものかと思っていたら霄太師に無理矢理押し付けられてしまったんだよ」
「ああ、霄太師と宋太傳が『あくま』だそうだけれど」
「……よく似合っていたよ」
 しみじみと実感こめて邵可はつぶやいた。何しろ、あの年寄りこそ諸悪の根源とも言える。
「ふーん? まあ今の私が太師と顔を合わせることもないだろうけど。顔を合わせることがないって言うと……」
 何かを思い出したかのように口を閉ざした娘に邵可は助け舟を出す。
「劉輝様かい?」
 こっくりとうなずく娘に向かって邵可はおだやかに微笑んでみせた。
「なかなか立派な『かぼちゃだいおう』だよ。初めのうちは嫌がってみえたけれど羽林軍の兵士の一部が南瓜を被ってくれることになってからは随分前向きになられてねえ」
「……それについても頭の痛くなるような噂を聞いたような気がするわ」
「多少は見逃しておあげ」
 苦笑しつつも秀麗は父に向かって笑顔を向ける。
「そうしておくわ。今日くらいわ。ありがとう父様」
 蘇芳と同じように取り出した風呂敷で書籍を包むと、気合と共に背中に背負う。
「大丈夫かい?」
「平気、平気。日々鍛えられてるもの」
 手を振って秀麗は府庫を後にした。もうすぐ日が暮れようとしていた。

(つづく)


御史台関係(?)がもう少し続きます。
久しぶりに秀麗を書いたような気がします(笑)

H19年12月4日

「何故、自分、こんなもの買ったんだ?」
と言うことはありませんか。
私はあります。例えば昨日も。
その名も。
『リラックスシャア・マスク』

えーと、ガンダムくじの景品だったやつですね。
くじの期間が終わったのか売ってたんです。普通に。
湯のみも手ぬぐいも心ひかれた(特に手ぬぐい3種はどれも魅力的だった)けれど、
一番笑いの取れそうなアイマスクを選ぶ自分。
確実にウケ狙い。
どこか回路が壊れている気もします。

問い:オマエはそんなにシャアが好きなのか?
答え:そこそこに。
シャアザクの充電器付き携帯に心奪われかけた私です。
身長が150cmくらいある1/8(だっけ?)ザクもいいなあと憧れた私です。
プラモデルなんぞ作ったこともないのに万超えのザクプラモ購入に悩んだ私です。
別にガンオタではないつもりですが。

まあ、最近の目の調子だと「アイマスク」というものそのものに心惹かれたというのもあるでしょう。
うん、相変わらず右目はコンタクトなしで過ごしています。
おかげで痛みはすっかりなくなりました。
しかし、負担がかかる左目が曇りやすかったりして、
眼精疲労もあって最近は少し早めに寝るようにはしてます。
それでも確実に丑三つ時は過ぎていたりはしますが。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十三回

 邵可の前では強がってみせた秀麗だったが、さすがに背中の書籍は重すぎた。
(ううっ、無茶だったかしら。後でタンタンもまた来てくれるって言ってたけど。でも、これを一度に運んでしまえばまた往復したりしなくてすむし)
 そう思えば無理でも一挙に運んでしまいたい。けれど重みは容赦なく秀麗を押しつぶす。休みながら進むことも考えたが、下手に休んでしまうと進めなくなりそうで、秀麗は足を止めることもできずによろめいていた。――客観的に見たところ、少しも進んでいるようには見えなかったのだが。
 ふいに背中の風呂敷が重みを失った。
「貸しなさい。見ていられない」
 あっさり風呂敷を取り上げられた秀麗が見つけたのは。
「……おじさん」
 口にしてからしまったと思う。それは秀麗が男の子として戸部にいた頃に許されていた呼び方で――。
「本当は秀麗、だったね。わかっているから気にしないでいい。ぜひまたおじさんと呼んでおくれ」
「すみません……」
 だが気が楽になったことも事実だった。もう嘘はつかなくていい。だいたいにおいては。
「おじさんは六部の方だったんですね」
 秀麗が苦労して持っていた荷物を苦もなく運ぶ男の姿は『きゅうけつき』であった。
「うんそうだ。君もかい?」
 そう言われるのも仕方がない。秀麗もまたこの時は『きゅうけつき』だったのだから。
「ええ、まあ……」
 あいまいに濁しながら二人並んで歩く。『きゅうけつき』の二人連れと思うとおかしみが増す。先ほどまで蘇芳と二人だった時にはまったく意識しなかったのだが。傍からは『大きいきゅうけつきと小さいきゅうけつき』に見えるのだろうか。
「どこまで運べばいいかな?」
 軽快に歩くその人は気さくに尋ねてくる。
「で、では戸部までお願いします」
 まさか御史台まで頼むわけにもいかず、秀麗は咄嗟にそう答えていた。
「君は戸部だったかな?」
「いえ、違うんですけど少し用事がありまして……」
 本当は今日でなくても良かったのだがこの際済ませておいてもかまわない。
「戸部への用事なら伝言でも受けてあげよう」
 そういえばこの“おじさん”は黄尚書の同期だと言っていたことを秀麗は思い出した。
「あ、いえ。個人的なお礼ですので」
「礼? 奇人に?」
 いぶかしげな“おじさん”に、秀麗は用事を成り行きで説明する。
「はい。先日、家族ぐるみでお夕食をご馳走になったお礼をしたいと思いまして」
 秀麗の目の前で“おじさん”は一瞬凍りついたように見えた。
「ゆ、夕食? 家族ぐるみ、で……?」
「ええ。父と家人と一緒に」
「つ、つまり、その、君の父君も一緒、に……?」
「はい」
 何かおかしなことを言っただろうかと首を傾げながら、秀麗は仮の目的地に到着したことに気付いた。
「ありがとうございました。戸部に着きましたので」
「ああ、うん……」
 秀麗に風呂敷包みを返しながら虚ろな眼差しの“おじさん”は、よろめきながら立ち去っていった。
(大丈夫かしら?)
 思いながらもとりあえず黄尚書を訊ねた秀麗は景柚梨より不在を告げられた。
「そうですか。それではまた改めて。あ、景侍郎、ひとつお願いが」
 秀麗はその場で風呂敷を開くと半分を取り出した。
「すぐに取りにきますから、少しだけ置かせてください」
 さすがに一度に運ぶのはかえって効率が悪いと秀麗は気が付かないわけにいかなかった。それに、戸部まで来てしまえばあとは随分楽でもある。
「本当にすぐですから!」
 気楽に承知してくれた戸部侍郎にそう叫ぶと、秀麗は軽くなった荷物同様、軽やかに走り出した。
 走り出してから、“おじさん”が途中の柱にすがり付いている姿を見たような気がしたが、もはや止まれなかった。
 こうして秀麗はまたもう一度戸部へと取って返すことになるのだが、そのことが彼女に幸運であったことはその後に証明されるのである。

(つづく)


次回は秀麗は出ませんが引き続き御史台です。
追いついたよ!やっと日記の日付けに追いついたよ!
よくやったよ自分!(感涙)
ハレルヤ!

そうして、連載も夜の部に入ってます。
あれ書いてこれ書いたら終わる、はず!
がんばります!
……今更ですが、日記記載の連載の色を変えてみることにしました。
本当、今更……。
あ、まとめページは普通に黒文字ですので。

H19年12月5日

夕べ、昨日の分の日記を書き上げてアップした私は、
連載が日記の日付けに追いついたことに、真夜中だったにも関わらず
すがすがしい気持ちでおりました。
「いつもの巡回を済ませたら、ちょっと明日の分も書いちゃおうかなー」
時間も、私からすれば早い時間です。
そうして機嫌よく日課の巡回をはじめたのですが
パソコン様が途中で何やら言い出しました。
「あー?何よ?」
と、何度か出るエラー文章に、つい「デバイス」を押してしまったものだから、
たちまちIEが消えてしまわれました。
急いでもう一度アクセスしようとするのですが、
いつまでもつながりません。
「ヤバイもの触ったかな」
確か、どこかが一杯になってる、とか出ていたようにも思います。
そこでネットに繋がらないものの、「お気に入り」の見ない分を整理し、
ごみ箱を空にし、ディスククリーンし、ディスクデフラグもしました。
「これだけやりゃあ大丈夫だろう」
……大丈夫じゃありませんでした。
そこでこんな時の伝家の宝刀(?)「システムの復元」を試そうと……
できません。

ここですっかりパニック。頭がフリーズ。
「落ち着こう、自分」
そうして何故か人形姫の姉妹お揃いカジュアル着物の生地を切り出しました。
かわいい赤のウール小紋です。
裏地は薄いクリーム色の正絹です。
二人分なので、途中まで生地に印はつけていたのですが、
二人分だから表と裏で8Mを超える生地との格闘です。
そんなわけで結構大変なのです。
印つけを終え、生地を切って。そうしていたら朝方になっていました。
で、ふと。
「再起動してみたらどうなのよ?」
結論。
再起動したらすべてが問題なくなりました。
システムの復元さえもあっさりできるし。
……何だったのでしょう、あの数時間の苦悩は。


ところで昨日の分の連載を書いていてふと、
「彩雲国のキャラで風呂敷背負うのが似合うのはなんと言ってもタンタンだよなあ」
とかしみじみ思ってしまいました。
いえ、影月も似合うと思います。
似合っても嬉しくないような、そこはかとなく悲しいような気もします。
それなりに克洵も似合いそうです。
茶家当主なのに。
美形の兄さん連中はきっと正しく似合わないでしょう。
いや、でもきっと静蘭なら堂々と背負ってくれるから
似合わないというのともまた別の次元の話になりそうですが。

連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十四回

 御史台で秀麗に与えられた室に重い荷物を置いてようやく蘇芳が安堵して僅か、軽やかに秀麗が戻ってきた。
「あと半分を戸部に置いてきたからすぐに取ってくるわ!」
 自分が行くと言う暇さえなく、蘇芳はとうに走り去った秀麗を見送る。
「……いってらっしゃい」
 小さくつぶやいた途端、扉から不機嫌な声がかかった。
「なんだ、あいつはまた飛び出して行ったのか。長官が朝言った書類はできてるのか?」
「セーガ君」
 蘇芳は別に清雅が苦手ではない。こういう人物なんだとそのまま受け止めている。清雅は秀麗にちょっかいはかけてもあまり蘇芳には構わない。目に入っていないのだろうと言われればそれまでだが、逆に自分を油断させた実績のある蘇芳に、清雅の方が何やら苦手意識のようなものがあるのかもしれなかった。
「その書類なら出来てる。しょーがない、俺が提出に行くか。セーガ君、一緒に行く?」
「誰が貴様と一緒に……と言いたいところだが、生憎、俺も長官には用があったか」
 こうして不服気な清雅のあとを、またしてもたらたらと蘇芳はついて行った。
 これこそが運命の別れ道。本日の不幸順位、蘇芳は五位以内入賞間違いなしとなったのだった。

「失礼します」
「失礼しまーす」
 御史台長官室に入る前、ごく当然のように二人は声をかけ、扉を開けた。いるけれども見えない長官であっても、声をかけないわけにはいかない。
「馬鹿者!扉を閉めろ!」
 向こうから声をかけてくるはずのない人物の叫び声が響いた。本日はすべて書面での指示が行われることになっている。
 反射的に開けかけた扉を閉めた清雅は蘇芳を振り返った。
「……見たか?」
「えーと、今、長官室の中に小鬼が……いた? よね?」
 蘇芳の言葉に、清雅は薄く扉を開いて中を覗き見た。
「あ。セーガ君、ずるい、自分だけ」
 清雅の上から蘇芳も覗き見る。……見なければよかったかもしれないと、この時ふたりは思った。長官室の中には、いつも通りの官服の葵皇殻の姿があった。しかし今、その本人は複数の小鬼にとりつかれ、よじ登られ、噛み付かれていた。髪もひっぱられていたりする。
「うわあ……」
 さすがに絶句した蘇芳は、真下の清雅に尋ねる。
「セーガ君、これ、どうしたらいいと思う?」
「知るか! 馬鹿!」
 あまりのことに清雅も動転しているらしい。
「えーと、武官呼んでも意味ないだろーし。あ、そーだ!」
 ごそごそと懐を探っていた蘇芳は顔をほころばせて自信満々に扉を開けた。
「おい! こら待て!」
 清雅の声を背中に聞きながら蘇芳は長官室に入って右手を高々と上げた。
「ほーら、これが怖くないかあ?」
 狸である。蘇芳が取り出したのは指先ほどの小さな狸の置物だった。
「阿呆! そんなものが効果あるはず……」
 清雅がすべてを言い終わる前に、小鬼たちは皇殻から離れて飛び退った。
「馬鹿な……」
 調子にのった蘇芳は、小鬼たちに狸を近づけていった。壁際に追い詰められた小鬼たちはふいに姿を消した。後で室中を探したが、そのあたりには亀裂のひとつもなかったという。
「長官、大丈夫そうですね」
 普段の彼からは想像もつかないほどぼろぼろになりながら、皇殻の眼光は一層厳しかった。暗に、どうにかなってくれていても構わないという清雅の内心の透ける言葉に対するためだけではない。
「逃がしたか」
 だが開かれた口から洩れた言葉は短かった。
「あれは、無理。壁、ぬけられたらどうしようもないし」
「榛蘇芳、お前の持っているそれは――」
 一転して嬉しそうに蘇芳は狸に目をやる。
「いいでしょう。何しろ特別製だから」
 種を明かしてみればなんのことはない。背中に細い穴が開いており、そこに護符が丸めて差してあったのだ。
「本日、仙洞省が発行しているという護符か?」
「え? ちがいますってば」
 広げられた護符には、確かに今日のものとは違う文字が躍っていた。今日配られているのはその大半が“悪霊退散”の類であったが、狸に差し込まれていたのはどう読んでも“家内安全”。皇殻と清雅は完全に沈黙し、冷たい視線で蘇芳を見つめた。

(つづく)

すみません、もう少しが書ききれませんでした……もう眠いアウト。


拍手ありがとうございます!
残業で疲れた身体が欲しがる甘いもののように効果絶大です!

以下、拍手記名コメントに反転レス。
>梅様。
「とうめいにんげん」は長官バージョンと御史バージョンの2パターンありまして、
完全な種明かし(?)は明日くらいにできると思います。
最後まで楽しんでいただけるようにがんばります。
ありがとうございました!
……ちなみに、この話って間違ってもシリアスではありませんので。

H19年12月6日

指輪を買いました。
高い指輪ではありません。何しろお買い得セール品ですから。
しかも、元々ファッションリングにすぎません
(てか、私の持ってる指輪なんてみんなその程度)。
……決して、他社より早く他社より安いボーナスに気が大きくなったわけでなく。
これは「めぐりあわせ」というものなのです。

はい、念願のムーンストーンの指輪です。
去年の12月、自作『約束の小枝』を書いて以来、欲しいといい続けてきたムーンストーンの指輪です。
台は希望通りのゴールド。ただし、K10だから色が薄い。
ついでにアーム(輪の部分)はなんにもない超シンプル。
でも小粒(直径約3mm)のムーンストーン(両脇に更にちいさなオパール)とアームの細さは
確実に私の希望に近い指輪です。
(『約束の小枝』に出した指輪の石は後にムーンストーンと結論しましたが、最初はオパールをイメージしていました)

そんなわけでかなり理想に近いものが手に入ってほくほくです。
難点は在庫限りの残り1点ものだったせいでサイズが大きいこと。
オパール使ってるしサイズ直しは無理かもしれない(オパールは熱に弱いです)。
まあいいです。右手の中指にならジャストサイズだから。あ、人差し指にも入った。
あと、ムーンストーンならカボッション(まあるく仕上げてあるもの)が好きなんだけど、
これはカットされてて。
でも、カットされたムーンストーンはただの透明の石と区別つきにくいけど
これは綺麗にシラー(光り)が入って見えてムーンストーンらしいのでかなり満足です。

ムーンストーンには精神を落ち着かせる効果もあるとか。
さあて、では落ち着いて連載、いってみようか。
……ギャグだけどね?

連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十五回

「馬鹿馬鹿しい。家内安全だって?」
 ようやく声を発した清雅は軽蔑を隠さない。そんな清雅に蘇芳は小さく抗議してみせた。
「でも効き目はあったんだし」
「……そうだな。効き目はあったな」
 皇殻は手櫛で髪を整えていたが、官服の乱れは手で伸ばした程度ではどうにもならないくらいであった。彼は改めてため息をつきながら蘇芳の狸を手にのせる。
「効き目があったということで、とりあえず榛蘇芳、この狸は本日没収」
「ええっ!? 俺のたぬたん!」
 取り替えそうとする蘇芳の手を邪険に長官は振り払った。
「今日限りだ。私とて不本意だがまた小鬼に襲撃されるのは避けたい。随分と仕事を邪魔されたからな」
「それですが、本日これまで、小鬼を見かけたというのはあちこちで聞きましたが、襲撃されたというのは初めてです。原因は何でしょうか?」
 皇殻にとって先ほどの失態を清雅と蘇芳に目撃されたことは矜持に抵触するらしく、その視線はまさに氷のようだった。
「そりゃあ、長官が仮装してないからじゃないの?」
 狸を取り上げられて消沈する蘇芳が何の気もなしに発言する。意外に本質をつく男、榛蘇芳である。
「――判断材料が少なすぎるが可能性はある」
 いくら部下に「見えないものとして接しろ」と命令したところで、皇殻が仮装をしていないのは事実だった。
「提案者の霄太師はこのことを予想していたのだろうか」
 皇殻の発言に同室している二名は沈黙する。蘇芳にとって霄太師などは雲の上の人間だ。だからそんなお偉いさんなら判ってても不思議はないんじゃないかと呑気に考えもしたが、この時は懸命にも口に出さなかった。何故なら、見知らぬお偉いさんよりも、皇殻に取り上げられた狸のお守りの方がよほど気にかかっていたからだ。
「……返してくださいよ、絶対」
「当たり前だ。いつまでも手元に置いておくと趣味が疑われる」
 蘇芳の手にあるとしっくりして見える愛嬌のある狸も、皇殻に掴まれている様子は戸惑っているようにも見えた。なんにしろ、似合わないことこの上もなかったが。
「とりえず一応報告はした方がよろしいですね。僕が行きましょう」
「勝手にしろ。ところでお前たちの用事は何だ」
 二人はすぐさま長官への当初の用事――提出すべき書類を取り出したのだった。この時、『みいらおとこ』の扮装をした清雅を眺めながら、蘇芳は中書省にも行かねばならないことを思い出した。
(帰ったら今度は『ふらんけんしゅたいん』にならないといけないなー)
 面倒だが長官のようになっては仕方がないと、蘇芳は秀麗の室に用意された装束に思いを馳せた。
 御史台の担当は『とうめいにんげん』。すなわち、潜入先に合わせて装束を替える必要があった。そのため御史たちは宮城のあらゆる装束を同時に作らせていたのである。こと、秀麗の場合は後宮に用が出来た時のために『まじょ』の扮装すら用意されていた。何しろ前もって用意をするのだから必要ないものも出てくる場合があったが、いざという時を考えて行動せねばならない御史にとって、転ばぬ先の杖同然だった。
(でも、今日、もうお嬢さんの『まじょ』を見ることはないかもしれないなー)
 後、蘇芳は奇妙な状態での『まじょ』扮装を目撃することになる。彼の不幸はまだ終わらないのだった。

 宮中の厨房でも、たまたま落ちそうになったうさぎの耳をはずしていた庖丁人がいた。この彼がやはり小鬼に襲撃される様を同僚が複数目撃している。門下省でも包帯を巻きなおそうと全部はずしていた官吏がやはり襲われてた。
 それらの報告に耳を傾けながら、仙洞省では年若い長官が敷布の下で唇を噛んでいた。
「霄太師の言っていたそれなりの効果とはこのことか……」
 異世界からの何らかの脅威が本日宮城を席巻することは読み取ってはいた。だが、異世界の悪鬼の装束をしていないと小鬼に襲われるなどと、そんなことは予想もできなかった。
 午前中から休む間もなく仙洞省では護符作りに追われている。こんな時、無能であることの不自由さをリオウは思わざるを得ない。異能を使って異世界からの穴さえ塞いでしまえば事態は簡単に収拾できるはずなのだ。――もっとも、宮中で異能を振るえば死が待っている。それがわかっていて力を使おうとする術者がいるかと問われればいないとしか答えられないのだが。
 改めて宮城内に通達が走る。
「日付けが変わるまで、宮城に残る者は異世界の装束をしたままでいること」
 夜は帳を下ろし、やがて終幕が近づいていた。悪夢の大盤振る舞いが開始されるのだ――。

(つづく)

えーと、伏線らしきもの(?)の回収を少し。
何しろいきあたりばったりに書いていたので伏線などと胸を張って言えるレベルのものは少ないんですけど。
さて、あと2ステージですよ?
ちゃんと終われればいいなあ。

H19年12月7日

先日、ふと耳にしたNHKみんなのうたの「しあわせだいふく」という曲が
頭から離れません。
サビが地味でも耳に残ってエンドレス。
個人的に「おしりかじり虫」よりよっぽど私の心を鷲掴みです。
でも、ただの大福より塩味の利いた豆大福が愛しいです。
しまった。出町柳まで買いにいけばよかったのにと思う休日の夜。
しかし、起きたの5時(当然夕方)では如何ともしがたいのだけれど。

ちなみに翌日「しあわせだいふく」をもう一度と願った私の耳に届いた
「なんのこれしき ふろしきマン」には魂が熱くなりました。
み、水木のアニキじゃねーか!

ええ。
昔からみんなのうたが油断できないのはよく知っているのです。
あれは、シュールな曲の宝庫です。
なぜしっぽに気持ちがあるのかとか、
なぜバナナが降ってくるのかとか、
なぜカエルに言われたら仕方ないのか、
説明は一切ありません。
そういうものなのです。
それはそれでよろしいかと。
とんでもなく予想外のアーティストの曲もあったりするし。
久々にCD出たら買うかな。
みんなのうたでは「月のワルツ」以来だよ。

さて、シュールな連載も終盤(そのつもり)ですってば。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十六回

 それは天災だと誰もが言った。正確には人災だと判断されるべきだが限りなく天災に近かった。月も星も姿を隠した暗い夜の宮城は最悪の闖入者を迎えてしまったのだ。

 ぱぽぴーぷぷぷ…………ぷぺー!

 何故そこで詰まる? 何故そこで上がる? 常人には理解できない理屈がそこにはある、らしい。藍龍蓮、嵐のようにただいま参上。
 呪われた笛の音は、意外なほど宮城に響き渡る。国王の側近である青年は、羽林軍に戻って怪異の調査と指揮を取っていた。部下に指示を与えていた手が、ぱたりと落ちる。
「藍将軍?」
 生真面目な皐武官の声が遠くなり、脂汗が流れるのを藍楸瑛は感じていた。
「すまない。私は行かなければ……。あとの指揮は直接黒大将軍より受けるように」
 なんとかそれだけ言葉を搾り出すと、楸瑛は足取りも重く、音色の出所に向かって進んでいった。

 何やら消沈して帰って来た蘇芳を迎えて、秀麗は引き続き資料と格闘していた。その手からぽろりと書籍が取り落とされる。
「どーしたのさ? さっさと片付けるんだろ?」
 たまたま風向きで聞こえなかったのか、蘇芳は平然と指摘する。
「そうなんだけど、そうなんだけど! ああ、でもやっぱり放っておくことなんかできないし!」
 耳を澄まし、どちらから聞こえてくるかを確かめる。聞きたくはない。しかし、聞かねばわからない。
「内殿の方……。どっち? 後宮?」
 そのまま飛び出すには今日という日が仇になる。秀麗はこの日のために用意されていた衣装のひとつを掴み取った。
「今頃後宮なんかに行くの?」
 呑気な蘇芳の声に尖った声で秀麗は返答した。
「時と場合によっては後宮だろうと何だろうと行かないと!」
「別に後宮に用ができたってわけじゃないんだ?」
「どこにいるか判ったら、そこに行くまでよ!」
 黒一色の『まじょ』の衣装を脇に抱えて、そうして秀麗は夜の宮城の奥へと駆け出していった。
「あ、おじょーさん、忘れ物」
 壁にかかって残された『まじょ』のとんがり帽子を手に、蘇芳は面倒そうに立ち上がる。
「やっぱ、これないとまずいだろうし」
 こうして御史台からふたりの姿が消えた。

(つづく)


クライマックス直前に登場予定だった人物がようやくお目見えです。
まだちゃんと出てきてないですけど。

H19年12月8日

昨日、「さあ連載を書こうか」という頃になって、
またしてもPC様のご機嫌が芳しくなくなりました。
すべての作業が遅い。
すぐにエラーが出る。
カーソルは動かない。
ついに怒って強制終了かけても終了しない。
結局、PCの作業すべてを終わらせて電源を落とすまでにかかった時間は1時間を超え。
……お願い、壊れないで。
君に壊れられると多大な不都合が。
頼むよ、本当。
空き容量はあるんだけど、やはりスペックに不足があるのかなあ。
メモリを増設するのも、そのためにお金を出すのもいいとして、
問題は自分でその作業をするってことで。
取り扱い説明書に書いてあるらしいんだけど、
PCの取り説なんて、どこに埋まってるかわからないんだよね(遠い目)
ばざーるでござーるのファイルに入れた記憶はあるんだけど。
これって、大掃除をしろという暗示なのか?

先日入手した指輪、やはりサイズが気になって、
その場仕上げのサイズ直しをお願いしました。
やっぱり、2号大きいのは辛いしね。
そしてメーカーに依頼したら時間かかるのはわかってるんだ。
これで普通に左手にはめられるよ。
右手にしてると色々作業の邪魔になるからね。
はめた指を眺めてうっとりしてる怪しい奴です(苦笑)
そのうち、石にまつわる話も書きたいな。
せっかくだからムーンストーンで。
ところでムーンストーンは遠距離恋愛の味方だそうです。
……影香って、思いっきり近距離恋愛だよな?
ま、いっか。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第二十七回

「いやあああああっ! どこから入って来たのよ、龍蓮兄様!」
 後宮に十三姫の悲鳴が虚しく響いた。
「どこからと? きちんと門から入って来たが」
「門番は何してるのよ! 首よ! 首!」
 門番を責めるのは酷と言うものだろう。龍蓮の笛の音の前に障害などありはしない。
「何かに道行かれるように城に来たが、今日の王城はどこもかしこも詩情に満ち溢れているではないか」
 異母妹とは対照的に藍家嫡子五男はたいそう嬉しげである。
「どこが詩情よ! これが悪夢でなくてなんなのよ!」
「特に愚妹よ、そなたの様相は特にすばらしい。今度私も翼を背負ってみようと心に誓ったぞ」
 ただでさえ意味不明かつ派手な龍蓮の頭には柿と蝙蝠(本物)が乗せられていた。どこかで、
「わ、わたしの可愛いぴーちゃんが攫われたあっ!」
 と悲痛な叫びが聞かれたが、おそらく礼部からと思われた。
「しかも、小鬼も何してるのよ! 異世界の装束でないんだから、襲ってみせるのが筋ってものじゃないのっ!?」
「……小鬼たちも仲間と認識していたのでは」
 遠慮深く同席していた珠翠が意見を述べる。否定はできない。おそらく真実であろう。
「小鬼。あまり風流ではないな」
 龍蓮はしばし眉を顰める。彼の風流認定を受けずにいられた小鬼は幸せであったかもしれない。
「龍蓮!」
「おや、これは愚兄其の四ではないか。なんだ、耳と尻尾とは風情がない。少しは愚妹を見習ったらどうだ」
「藍将軍、弟君は責任取って引き取ってください」
 駆けつけた楸瑛に龍蓮その人も筆頭女官も冷たく言い放った。

(つづく)


今日はPCは無事ですが、私がもう使えません。
おやすみなさいー。

H19年12月9日

PC危機一髪。
帰宅してPCの電源を入れ、傍らお茶の用意。
ポットに紅茶の葉とお湯を注いでティーコーゼとタオルでくるむ。
蒸せるのを待つ間に探し物開始。
その間、ポットをPCの横に置いて、探し物に熱中。
嫌な音がしたと思ったらポットの中身が零れておりました。
幸い、真下にあった不要な雑誌がほとんどを吸い込んでくれていたので
被害は最小限に留まりました。
被害・本1冊の下部が濡れる&箱ティッシュの3割壊滅。
本当に、すぐ横にPCだったのに!

幸運を喜んだ私は電源を入れただけのPCをネットにつなごうと……
繋がりません。
は?サーバーが応答しない?
そのほかにも何か文句言ってます。
しかたがないので奥義「システムの復元」を……。

さて、PCが使えるようになるのを待ちながらお裁縫です。
人形の大姫姉妹のお揃いの着物。2枚同時進行中。
(1枚ずつ作ってると1枚完成した時点で満足して飽きるから)
人形のですが、着物作りはトライアスロンに似てる気がします。
スイム・バイク・ラン。
順番は真逆ですが。
見頃はひたすら直線距離を進むマラソン。
袖はやや技巧の必要な自転車。
そして最後の衿付けは沈みかねない水泳。
まだ最初のマラソン部分ですが、
何度もPCの不調の度に縫ってきたので、
当初の思惑より快調に走っております。
いいのか、悪いのか。
折り返し地点も過ぎ、残り3/5地点を通過。
作業そのものは単調で簡単ですが、一番時間を食う所なのです。
自転車コースに入ったらスピードアップするし。
ちょこちょこ作業して、大姫たちへのクリスマスプレゼントにするのです。
がんばるぞーっと。

……影香のクリスマス話は……
今日、妄想してたシーン、入れるんだ!
其の前に連載……せめて中旬に完成……


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『君知るや南瓜の国』第二部・第二十八回

「……龍蓮、邸に戻りなさい」
 ようよう楸瑛はそれだけを口にした。心の傷は浅くはない。
「あのように風情のない邸に戻るつもりはない」
 龍蓮はきっぱりと言い切って笛に口をつける。
「待て! 龍蓮!」
「珠翠、耳栓して!」
 兄と妹の叫びが残る後宮の一室にて、龍蓮の独奏会は再び始まった。

 ぺぺぽっぷぽっぱぱぴーーーーー。

 どこをどうしたらこんなに壊滅的な音色が出せるのか。涙の滲んだ目で楸瑛は立ち尽くす。なまじ教養があるだけに、一旦龍蓮の演奏が始まると力ずくで止める力も出ない。どこかから救いの手は来ないだろうか。他力本願な願いを楸瑛は抱かずにはいられなかった。

「いい加減にしなさーいっ!」

 天も楸瑛を哀れと思ったのであろうか。救いの手は現れた。『きゅうけつき』の扮装の上から『まじょ』の黒い衣装を被った姿で。外套の上から無理に着ているので、それはもうとんでもない状態だったが。
「おお! 心の友其の一! 我が笛を聴き、駆けつけてきてくれたのだな!」
 龍蓮の表情が明るくなる。彼が秀麗に好意的なのは間違いのないこと。もう少し龍蓮に常識というものがあれば、秀麗も素直に友人として接することができるのだが。
「とにかく、笛はやめなさい! どっから来たとか何でいるかとかはもういいわよ! でも今日みたいな日にこれ以上厄介ごとを増やさないで!」
 秀麗の叫びに内心誰よりも楸瑛は同調した。そもそも『藍龍蓮』を止める手立てなどないに等しいのだ。せめて笛さえ吹かないでいてくれたら……。ささやかな楸瑛の願いは、しかし弟には届かない。
「心の友其の一、何か厄介ごとに巻き込まれているのか? それはいけない。よし、我が笛の音色でその疲れ、癒してみせよう」
 意気揚々と再開されようとする演奏を咄嗟に止めようと、秀麗は首にひっかかっているだけの『まじょ』の貫頭衣を縫いで龍蓮に被せた。袖を通さずに被せたものだからほぼ拘束状態となった龍蓮は首を傾げて秀麗を見下ろした。

(つづく)


書くことは決まっているのにそこまで進まないのはきっと龍蓮の呪いなのよ……。


拍手ありがとうございます!
いただくとほっこりします!

H19年12月10日

結局、昨日は連載を書く前にPC前で沈没。
今日は今日とて眼精疲労。
決して工作に勤しんでいたせいではないと思いたい。
溜め込むと一番苦しむのは自分なのだし。
すべてが明日につづく……。


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『君知るや南瓜の国』第二部・第二十九回

「秀麗、これをどうしろと?」
 ただ龍蓮の笛をやめさせるためだけにとった行動の理由を聞かれて、秀麗は思いついた言い訳を並べる。
「きょ、今日はね、異世界からの魔物が宮城に出るの。それを避けるために皆こうして仮装してるんだけど、龍蓮もそのままなら危ないから、とりあえずそれ着てなさい」
 秀麗が言葉を切って龍蓮を見上げると、それはそれは嬉しそうな満面の笑み。
「心の友其の一の私への優しさ、しかと受け取った!」
(別に龍蓮なら異世界がどうだって全然問題なさそうだし、笛さえやめてくれればこっちはとにかく助かるし。ああ、でもそんな風に好意的に解釈されると……)
 罪悪感に秀麗の胸は痛んだ。だが、楸瑛たちからも感謝の眼差しを送られている今、前言撤回するわけにもいかない。幸か不幸か、『まじょ』の衣装は規格を問題としない。だぶっとした貫頭衣を腰紐で結んで着るだけ。ゆったりした袖も、長身の龍蓮であっても問題はない。若干、裾丈が短いがそれくらい些細なことだった。
「やっと追いついた。お嬢さん、忘れ物だってずっと後ろから呼んでても気付いてないんだからなー」
 三角帽子を手に、蘇芳が一同の集まる後宮の一室に顔を覗かせた。

(つづく)


文章は頭にあるんですが、書き出す気力が足りません。
思わず、ドール関連工作に逃避してしまったよ。
しかも、その工作の出来が微妙っていうのがまた……。

H19年12月11日

工作は続けてはいます。
一見、できあがりは悪くないように見えます。
しかし、よく見ると中身がすべてを台無しにしていたり。
教訓。
カッターはよく切れるものを使いましょう。
切れないカッターなんて役に立ちません。
普段、チャコペンを削るには問題ないんだけど、
これほど紙を切るのに支障が出るとは思いませんでした。
今度、ちょっといいカッター買ってくるんだ。


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『君知るや南瓜の国』第二部・第三十回

「はい、これ帽子……、って、『まじょ』衣装着てないんじゃいらないか」
「そんなことないわよ、ありがとう」
 蘇芳から帽子を受け取った秀麗はそのまま龍蓮に向き合った。
「ほら、帽子も来たからこれも被って……。ちょっと! 髪につけてるこの蝙蝠、生きてるんじゃないの!?」
 よく見れば、高く無造作に結い上げた髪に飾られた蝙蝠の足に紐が結び付けられていた。
「もしかして、それ、礼部が今日連れてる蝙蝠なんじゃない? なんか、尚書の命令で無理に押し付けられたけど、夢中になってる礼部官吏続出って噂の」
 蘇芳という人間は周囲に気を遣わさないというところがあり、こうして彼は秀麗の耳にしないような噂を拾って来ることが多い。
「……龍蓮。その蝙蝠、どこでつかまえてきたの」
 秀麗の声が低く地を這う。だが龍蓮はその雷注意報にも動ぜず笑顔を向ける。
「宮中に入って通りかかった室に落ちていたのだ。柿とあいまって秋を演出するにふさわしい」
「返してらっしゃいっ! 可哀想でしょう!」
 ちなみに蝙蝠は気を失ってか、だらりと髪紐からぶらさがっていた。きっと笛の怪音のせいだろう。
「私の髪を飾るほうが蝙蝠にも幸せだと思うのだが」
「人様のとこから無理矢理つれて来られて幸せなものですかっ! ほら、こっちの帽子被りなさいよ。今日の宮城に合わせるなら断然こっちなんだから!」
 その装束が後宮の女官に指定されたものだとは秀麗は言わなかった。周囲にいた誰も言わなかった。これで誤魔化されて笛を忘れてくれるといい。誰もがただそう思っていた。……ただひとり、その脅威を知らない蘇芳を除いては。
「え、その装束って……」
 秀麗がつま先でさりげなく蘇芳の足を蹴る。龍蓮はようやく奇抜衣装の上から『まじょ』の黒服を着なおした。そうして渋々髪を解き、柿と蝙蝠を卓上に置いた。長い髪をおろして、三角帽子を被った龍蓮は、室の壁にある鏡と向き合う。
「これは……いささか質素にすぎるな。心の友其の一の気持ちゆえ無碍にもできぬが」
 そう言うと、裾をめくってこれまで自分がつけていた装飾をあれこれ引き出す。たちまち三角帽子にも貫頭衣にも多数の紐やら鎖やらがじゃらじゃらと飾られる。常ならば目を疑うところだが、本日の宮城は常にない混沌。おまけに本来ならば飾り気のない『まじょ』の衣装は、意外にも龍蓮の飾り物に違和感を感じさせなかった。極彩『まじょ』誕生である。
「蝙蝠つけてるより、そっちの方がずっといいわよ」
 秀麗は解放された蝙蝠に痛ましげな視線を流した。
「この蝙蝠は私から礼部に返しておこう」
「あ、お願いします、藍将軍」
 端正な国王側近の頭には通常の冠の両横に狼の耳が並ぶ。宮城を走り回って過ごす秀麗は、本日多くの部署で様々な扮装をした人物を目にしている。この程度であればかえって仮装のうちに入らないくらいだった。

「秀麗様、ならびにそちらの方。申し訳ございませんが、藍家のご兄弟をお連れ願えませんでしょうか。ここ、後宮は主上以外の男性がいらっしゃっていい場所ではございません」
 凛とした珠翠の声に、改めて秀麗は室内を見渡した。自分を入れて、女性三名男性三名。
「そうね。珠翠の言う通りだわ。龍蓮、タンタン、行くわよ。藍将軍もご一緒いたしましょう」
 男たちの背を押して、秀麗は戸口へと押しやる。だが、室を出る前にどうしても言わないではいられなかった。
「今日見た中でも十三姫の装束が一番印象的だったわ」
「やめて! 忘れて!」
 叫んで背を向けた十三姫だったが、ほとんど背中を覆う白い翼を見せ付ける結果となった。
「うむ。あの翼はよい」
「わかった、わかった。今日終わったらもらってあげる。……いいわよね?」
 翼に執着しているらしい龍蓮をあしらうために秀麗は子供をあやすように言い、十三姫に確認した。
「もちろんあげても構わないけど……」
 いつも元気な十三姫の力のない語尾に、今後この『てんし』の翼を背負った龍蓮の姿を見ることになるかもしれないと、その時秀麗ははじめて気が付いた。
(しまったわ。適当なこと言い過ぎたかしら)
「約束だぞ、我が愚妹よ」
 機嫌を直したらしい龍蓮の様子に、せめて邵可邸か藍家の邸内だけにとどめておいてもらうように説得しようと秀麗は誓った。犠牲者は少ない方がいい。自分と藍家は仕方がないと諦めるしかなかった。

(つづく)

もう少しで連載の最終章に入ります。
PCも本人も疲れ気味ですが、とりあえずもう少しあがきます。
しかし、第二部に入ってからでももう一月連載してることになるのねと、
遠い目になる私でした。

H19年12月12日

家を出る際、携帯を忘れてきてしまいました。
1日携帯のない生活。
ものすごく頼りない。
それほど携帯に依存しているわけじゃないはずなのに、
この不安感はなんだろう。
ふと通勤の電車を見回してみると、乗客の大半が携帯に向かっていたりする。
この人たちも携帯忘れたらパニックになるかな。なるんだろうな。
そんなことを考えてしまいました。
こんな私ですが、携帯の最大使用目的は
休憩時間に爆睡する自分を起こすためのアラームだったり。
起きられなかったら洒落になりませんから。

工作用アイテムを追加購入。
まだやるつもりなのか自分。
他にやることあるだろう。
自分ツッコミは常時しておりますが、それでも自分相手でもボケ倒す。
材料、集まっちゃったからねー。


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『君知るや南瓜の国』第二部・第三十一回

「んで、この兄さん何者?」
 後宮の門を出たあたりで、思い出したように蘇芳が秀麗を見た。さすがの蘇芳も後宮は居心地が悪かったのかもしれない。それでも入っていったのは好奇心かはたまた何も考えていなかったのか。
「あー、タンタンははじめてだっけ。これが藍龍蓮。私の同期でこちらの将軍の弟さん」
「へー。あんたが。ふーん」
 何やらしきりと感心したような声を出しながら蘇芳はまじまじと龍蓮を眺めた。
「それで、こっちがタンタ……榛蘇芳、私の同僚」
 流れで二人を紹介することになった秀麗は改めて目の前の友人二人を見比べる。
(すっごい違和感)
 蘇芳はどちらかと言えば見た目は普通。中身も普通に近い。もっとも本日現在の彼は『きゅうけつき』。あまり似合っているとは言い難い。対して龍蓮。黙って普通の格好をしていれば美形のはず。しかし、美形であるなどということを周囲にきれいに忘れさせるだけの奇行を得意とする男。現在は極彩色『まじょ』。
「我が心の友其の一が世話になっているということか。では近づきの印に一曲」

 ぺぺろぴひゃらぱー。

 今度は秀麗も止めることができなかった。至近距離でこの怪音を浴びせられた蘇芳は目を丸くし、やがて床に崩れた。
「こ、これを止めるため、だったんだな……」
 御史台から秀麗が駆け出していった理由を蘇芳は悟った。そうして非凡とは無縁の彼は、素直に意識を失う道を選んだ。ある意味、懸命であった。
「……タンタン! 龍蓮、やめなさい」
「龍蓮、やめないか」
 さすがに幾分かは免疫のある秀麗と楸瑛はその場に踏みとどまることができた。しかし、それだけである。止めようとする言葉だけでこの藍家の異端児を止めることなどできない。床に倒れた蘇芳を横目に笛はますます龍蓮節の調子を上げた。
「やめ……」
 秀麗は柱にしがみつき、楸瑛は唇を噛んで立ち尽くしているばかり。

 ぺっぺろぷぴっぽぱっぱらぷぴゅー。

 このまま自分も意識を失うのかもしれない。しかし、このままでは被害は広がるばかり。何とか龍蓮を止めるために自分は後宮まで駆けつけたのではなかったか。秀麗はそう自問しながらも手足の先が冷たくなっていく感触に耐えていた。そう、地響きと叫び声がこの悪夢の独奏会を打ち破るまで。

「どこだーっ! 化け物はこっちかーっ!」
 霞む視界で秀麗が認めたのは、剣を抜いて勇ましい黒白二大将軍の姿だった。

(つづく)


拍手ありがとうございます!
一人で更新してると淋しくて。温かさがしみます!

H19年12月13日

休日です。
昼に起きて、夕べできなかったサイト巡回。
ああ、私もがんばろうと、11日分を更新。
疲れたので工作に走る。
工作に飽きたので12日分を更新。
気力が失われたので工作の仕上げ。
今度の日曜に着る予定の着物の風通し。
13日分の連載をとりあえず書く。
……なんかこんな休日でした。
下手なカスタネットのようです。

人様のパラレル作品読んで、その連想で
「白衣で眼鏡な医者」の影月を妄想。
影月なら視力悪くなってもコンタクトじゃなくて眼鏡の気がするし!
激しくそれってツボだわと、胸を熱くしてうっとり。
しかし、現代影香パラレル妄想は危険物(戻ってこられなくなる)なので
程ほどにしないといけません。
ええ、程ほどで?


連載ですが、明日の分からいよいよ最終シーンに入ります。
現在たむろってるメンバーに後数名が合流。
「……いろいろあった」
でフィナーレの予定。
この「いろいろあった」の部分が大まかにしか考えてないので
果たしてうまく文章にできますやら。
ともかくもう少しおつきあいください。
そうしたら。
そうしたら影香に全力投球だ!
……いや、この連載だって結果的に全力投球のハメに陥っておりますが。
ええ、こんな話でも。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第三十二回

「人外の音を出しやがってるのはどんな化け物だ!」
 白雷炎が吼えると、不思議そうに龍蓮は笛を吹くのを止めた。
「はて。そんな物音は聞かなかったが」
 どうして、どうして横笛だけが人と解釈が違うのか。頭痛を堪えながらも楸瑛は自分の上司に向き合う。少なくとも笛が止んだのはありがたい。
「せっかくお越しいただいて申し訳ありませんが、こちらには異世界からの被害は現在ありません」
「馬鹿を言うな! ちゃんとこの耳で聞いたんだからな。な、燿世?」
 いがみ合っている割につるんでいることの多い左羽林軍の将へ雷炎は同意を求める。無言でうなずく燿世はしかし、楸瑛の隣に立つ龍蓮の姿を認めたらしかった。
「藍龍蓮か」
 部下である楸瑛でさえも滅多に聞けない黒大将軍の声に含まれていたのは、『藍龍蓮』の意味を知っていたためか、はたまた国試の際の龍蓮の奇行伝説を知っているためか。どちらにしろ燿世の声からは納得の色が見えた。
「ああん? 楸瑛の弟か? しょーがねーなあ」
 雷炎の答えもまた、ある意味で龍蓮を知っているならば当然のものだった。
「白大将軍!」
 そこに駆けつける『おおかみおとこ』一名。
「いきなり仕事放り出して消えないで下さい! ただでさえ今日は多忙なんですから!」
「あ、静蘭」
 この日、秀麗が静蘭を見たのは初めてだった。矜持の高い彼は、『おおかみおとこ』な姿を秀麗には見せたくなかったらしいのだが、楸瑛の姿同様に秀麗の目には普通に映った。もちろん二人の大将軍もである。
「今日はくだらん報告ばっかりで身体がなまってんだ。丁度いい、楸瑛もいることだし一丁仕合してみるか?」
 確かに、本日の羽林軍は鍛錬どころでなく、異世界からの小鬼情報だとか警備を増やせだとか大将軍の好みそうなことからかなりはずれてはいた。そんなこんなでかなり鬱憤が貯まっていたのだろう。剣を振り回す姿は幼い子供が遊びに誘われたかのように無邪気でさえあった。
「馬鹿を言ってるんじゃありません。あと数刻待てばこんな厄介から解放されるんですから」
 静蘭の指摘は正しい。あと数刻。されどまだ数刻ある。雷炎はそこに爆弾を投下する。
「そのことだが。日付けが変わったらいつも通りって、そんな通達はなかったよな?」
「通達にはありませんが、仙洞省の見込みでは日付けが変わるまでと」
 国王側近も兼ねる楸瑛にはただの武人には入手し辛い情報が集まってくる。
「あと数刻? いけない! 仕事がまだ終わってないのに! タンタン、起きて! 戻らなきゃ!」
 ここで放心していたとしても仕事は残るばかり。秀麗は慌てて床に転がったままの蘇芳を揺さぶり始めた。
「居残りも泊り込みも持ち帰りもしたくないのよ!」
 本日の不幸番付堂々上位の蘇芳の不幸はまだ終わってはいなかった。何故なら、秀麗に揺さぶられて意識を取り戻したはずなのに、すぐさままた意識を失うことになったからだった。起き上がりかけた蘇芳の後頭部に固いものがぶちあたった。
 南瓜である。

(つづく)


拍手ありがとうございます!
どれほど励みになってるかわかりません!

H19年12月14日

ちょっと調べてみたんですが、昨日までの分で
連載の第一部:114.8枚・35748字。第二部:132.4枚・41213字。
堂々の原稿用紙200枚超え&7万字超え。
それ、オフ用の原稿(手付かず)で目論んでいたのになあ。
本当にオフ進出できるか疑問になってきたよ。
にしても、やっぱり少量ずつとはいえ、日々の蓄積って馬鹿にならないものですねえ。

影香妄想もぼちぼち。
パラレル系Ifなシチュエーション。
日記のネタにしようかと思ったけれど、
場所さえ変えれば彩雲国でもいけるネタだったため見送り。
あとは結婚して1年後くらいの二人の妄想とか。
いくつであろうと影香は可愛いのが基本です。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第三十三回

 ちなみに南瓜が飛んで来た際、武官四名と龍蓮は当然のように避けた。蘇芳を揺さぶっている秀麗の頭の位置は起き上がりかけた蘇芳のものより低かった。これは秀麗の運の良さの一例かもしれず、本日の蘇芳の不幸の一例かもしれなかった。
「どっから飛んできやがった!?」
 いち早く身構えた二大将軍に楸瑛が指摘する。
「そもそも宮中のすべての南瓜は昼前に消えたはずですが」
 こんな場所に南瓜があること事態がおかしい。この南瓜は本物だった。以前、劉輝が転がした偽者でもない。
「皆様、あちらを!」
 激しく反応を繰り返す干將を片手に静蘭が指差す。その方向を見てみれば、昼でもないのに橙色の光が強く周囲を照らしているらしかった。
「まさか、火事!?」
「火事とは色が違うような気がします」
 楸瑛と静蘭が冷静に判断しようとしているうちに大将軍二人は既に駆け出している。
「宮中の奥……彩八仙の高楼あたりか?」
「おそらくは。藍将軍、我々も参りましょう。お嬢様は危険ですのでお戻りを」
 静蘭はそれだけ言うと楸瑛と共にたちまち大将軍を追って行った。
「戻るって、気になるじゃない。でもタンタンも放っておけないし……」
 逡巡していた秀麗だったが判断は早かった。
「私だって原因が知りたい。知っておいた方がいいと思うの」
 そっと意識のない蘇芳に自分の『きゅうけつき』の外套を着せ掛ける。
「ごめんねタンタン」
 そうしてしっかりと蘇芳にぶち当たった南瓜を手に秀麗も武人たちの後に続いた。可食物を無視することは彼女にとって不可能だったのだ。
「心の友其の一、私も加勢しようぞ」
 現状を理解しているのかしていないのか。龍蓮もまた秀麗と共に姿を消した。この翌日より蘇芳は風邪で寝込むことになる。

 さて、宮中の一角にとある集団がいた。『現王政権転覆計画』なる文字が躍る紙面を数名の男が取り囲んでいた。彼らの目的はその文字の通り。ただし、能力不足で閑職に回されている身分の低い貴族たちである。彼らが望むのは高待遇。あわよくば彩七家に成り代わるだけの力を持ちたいと思っていた。――何の努力も無しに。
 本当ならば今日という日の混乱を利用して政権転覆を計りたかった。しかし生憎、頭脳となるべき人材と行動力のある人材に欠けていた。すなわち、題目を唱えながら何もしていない宮中でのお荷物集団であった。よくぞこれまで罷免されなかったものだ。
 その彼らは、内殿のとある一室が空き部屋であることに目をつけ、たまたまその室への抜け道を発見したこともあり、秘密の陰謀を企むに相応しいと悦にいっていた。陰謀に参加するという言葉に酔っていたのかもしれない。
 蝋燭の灯りがゆらめく中、頭をつき合わせていた彼らの話の内容は、将来の自分たちの姿である。早い話、根拠のない妄想とも言う。いつの日か陰謀により政権を手中にし、贅沢三昧……。虫のいい夢である。そうして、そんな夢は打ち破られると相場が決まっていた。
 がこん!
 いきなり抜け道の扉が開いて大男が現れる。黒燿世であった。続いて白雷炎。
「おい、燿世、何突っ立ってやがる?」
 抜き身の剣を構えた武人二人の登場に、陰謀家(自称)の男たちは凍りついた。宮中にいてこの二人を知らないでは済まない。
「大将軍! 何もこんな抜け道を使わなくても」
 楸瑛と静蘭も室内に飛び込んで来た。若き二人の武人は、いるはずのない男たちの存在に眉を顰める。楸瑛は厳しい声で詰問する。
「おまえたち。ここは王族並びにその信頼された者しか踏み入ることを許されない場所。そうと知ってここにいるのか」
 王宮内には無数の抜け道がある。その一部ならば知る者もいくらかはいたが、すべてを知っているのは王のみと言われていた。実際に劉輝がこの抜け道を知っているかどうかは怪しかったが。何しろ前王が臥していた当時、王位を継ぐのを嫌がって王宮からの逃走を繰り返していたから、抜け道を教えるなどという危険を前王と霄太師が犯したとは思えないからだった。
「藍将軍!」
 静蘭が卓上の紙面を取り上げて見せる。その時の静蘭には見たものの背筋を凍らせるような迫力があった。
(そりゃ、しかたねーな)
 雷炎の内心のつぶやきはその場にいた武人たちに共通のものだった。干將をわざわざ鞘に収め、無言で静蘭は男たちをそれぞれ一撃で打ち倒していく。たちまち立っているものは武人たちのみになる。
「今は火急の用事のため去るが、後で必ず捕縛に戻ってくる。もしこの場を逃げたとしてもおまえたちの顔は覚えた。どこに逃げようと必ず引きずり出してやるから覚えておけ」
(本気だ……)
 今の静蘭に逆らってはいけない。誰もが本能でそう思った。
「さあ大将軍、先を急ぎましょう! この室の窓からなら高楼はすぐです」
 率先して窓から身を翻した静蘭を武人たちは慌てて追う。これでは立場が逆だ。それでも、そのようなことに頓着している場合では少しもなかったので誰もが無言で従った。

「ちょっと! 静蘭! いるの?」
 それから僅か後、秀麗が抜け道から這い出して来た。
「ちょっと龍蓮! 自信満々にこっちだって言うからこの変な道通ってきたけど、静蘭たちいないみたいよ?」
「既に先に進んでいるだけのこと。心の友其の一はいささか短気に過ぎるな」
「悪かったわね! ……きゃあ!」
 室内にあったのは元々蝋燭の光だけであったが、先ほど静蘭が鞘付きの干將を振るった剣圧で消えたあと。暗闇の中、秀麗は打ち倒された男の一人を踏みつけたのだ。
「うぎゃ!」
 意識を失っていた男は、踏まれた痛みに覚醒する。
「え!? 誰かいるの?」
 よろめいた秀麗は一歩後ずさり、別の男を踏みつけた。
「ぐえっ!」
「ちょっと! 一人じゃないの!? 何人いるのよ!」
 男を踏みつけたことで安定の悪い秀麗は、なんとかまっすぐ立とうと片足を――。
「ぎゃあ!」
 またしても別の男の腹に着地したらしかった。
「いや! もうなんなのよ!」
 秀麗は人を踏んだ感触にすっかり怯んでいた。どこに足を置いても誰かを踏みそうな気がする。気だけではなかった。四人目の男の膝が足の下にあった。
「うーむ。見事だ秀麗。わざととしか思えぬ」
 心底感心したらしい龍蓮の声に秀麗はいきり立つ。
「わざとなわけないでしょう! 何よ! なんでこんな暗闇で寝てる人が何人もいるのよ! 絶対変なんだから!」
「おそらく眠りの足りない者たちかと。せめて我が笛でやすらかに眠らせてやろう」
 秀麗に踏まれて目覚めた男たちは、とどめの笛に再び意識を失った。そうして静蘭が後にまたこの室を訪ねるまで、そのまま気絶していたという。
「龍蓮、やめなさい!」
 笛の音を追って、秀麗もまた窓から姿を消した。
 こうして、このささやかな陰謀未満は完膚なきまでに叩き潰されることとなったのだった。

(つづく)

昨日、途中まで書いていたのでだいぶ楽でした。
この調子で明日はメンバー合流編だ!?
ちなみに本日の後半部分は旺季の懸念は当たってなくもなかったのよ、
というお話でしたとさ。


拍手ありがとうございます!
よっしゃ、書くぞ!とか思います。
どうぞこの先もおつきあいを。

H19年12月15日

あまりの寒さにけだものを連れて帰ってきてしまいました。
残念ながら生きてはいません。
いわゆるファーチョーカーというもの、すなわち襟巻き。
本当の本当ならチンチラが欲しい。
もんのすごいふわっふわなんですよ、手触りが。
しかしチンチラ様はあまりにも高価でいらっしゃって、
わたくしには高値の花。
次点候補はフォックス君。
お値段と色の折り合いがつきませんでした。
そうして連れ帰ったのはレッキスさんです。
うさぎの変種らしいですが、なかなか手触りが素敵。
この冬には目一杯活躍していただこうじゃありませんか。
でも、いつの日かチンチラ様をお迎えしたら。
その時は。
迷わず布団に引きずりこむ予定です。
一緒に眠ればきっと幸せ。
ふっかふかにぬっくぬくな夢が見られそうです。

本物のチンチラが飼えたらそれも素敵だと思うのですが、
体長30センチ以下のげっ歯類では一緒には寝るのは難しかろう。
しかも我が家の環境ではきっと快適さと程遠いから、
やっぱり夢見ているだけにしておこう。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第三十四回

 伝説の彩八仙。いつの日か彼らが集うまで閉ざされたままという高楼――の裏に神泉があった。常に透き通った水を湧き出させるその泉は決して大きくはない。しかし霊験ありの噂も高く、仙洞省では行事の際に使用する水は必ずここから汲み出すこととなっている。しかし今、ほとんど人の訪れることのないこの静かな泉に異変が起こっていた。

 昊さえ染める橙色の光はその水面から発されていた。光は明滅を繰り返している。それはまるで鼓動のような間隔で。
「どうなってんだ!?」
 泉に辿り着いた四名の武人はその光景に息をのんだ。
「只事ではありませんね」
 静蘭の干將はなおも騒ぎ続けている。金属音が周囲にも響くほどに。
「干將、少しもなりやまないな。むしろ益々強くなっているような」
 楸瑛がそういったのも無理はない。何故なら傍らの静蘭から、そしてもう一方からも同じような響きが届いていたからだ。
「ほら! 絳攸、やはりこちらで正しかったのだ」
「俺だってこっちに来るつもりだったんだ!」
 国王とその側近が騒ぎながら泉のほとりに近づいてきていた。そう、劉輝の莫邪と共に。
「主上! 絳攸!」
 楸瑛が二人の傍に駆け寄っていく。どんな危険が振りかかるかもわからぬ状態だ。そこが自分のいるべき場所。
「楸瑛! 兄……静蘭も」
 劉輝の表情がたちまち明るくなる。自分が好かれていることがわかるのは気恥ずかしくも嬉しいものだ。きっとだからこそ静蘭もずっと劉輝を可愛がってきたのだろうと楸瑛は同じように走り寄った静蘭を横目で見た。
「こらこら、俺らだっているんだぞ?」
「大将軍が二人ともいてくれるとは心強いのだ」
 結局、全員が劉輝の傍に揃った。まだまだ成長してもらわねばならないが、それでも彼こそがこの彩雲国の王なのだから。

「何!? 光ってんのって泉!? なんで?」
「少々毒々しく情緒に欠けるな」
「それは同感。……いやあっ! 龍蓮と意見が一致するなんて!」
 賑やかに秀麗と龍蓮が泉のほとりに到着した。
「お嬢様! お戻りくださいと申し上げたはずですが」
 美貌の家人に睨まれて、上目遣いで秀麗は反論する。
「だって、やっぱり気になるんだもの! 大丈夫よ、危なくなったら逃げるから」
「秀麗は余が守るから大丈夫なのだ!」
 それはそれは嬉しそうに劉輝が胸を張る。だが格好がいけなかった。
「そ、それが『かぼちゃだいおう』……」
 秀麗が噴出すのを懸命にこらえているのがわかる。美形の国王の被り物、それが南瓜 ともなれば、これは不整合による笑いを誘うためのようにしか思えない。もちろん、別の意見の者だって存在した。
「ふむ。被り物か。一考の価値ありかもしれぬ」
 まじまじと南瓜の被り物を眺める龍蓮の姿に、楸瑛と秀麗は硬直する。
(もし、龍蓮が被り物つきで登場したりなんかしたら。絶対横を歩くのなんて嫌なんだからね!)
 例え龍蓮がどれほど大切に思ってくれているか知っていても、譲れない一線はあるのだと秀麗はその時強く思った。

「見ろ! あそこだ、着いたぞ」
 そこに幼さの残る声が響いた。いささか息切れしているようだ。全員が注目した先には悠舜の車椅子を押しながら羽羽を背負ったリオウの姿があった。
「ありがとうございました、リオウ殿。おかげでひとりで来るよりも早くに着けました」
 悠舜が丁寧に銀髪の少年に頭を下げる。
「別に。ついでだったから」
「長官はいつもお優しくていらっしゃる」
 そっけなく返事するリオウの背から、やや湿った声と共に羽羽が地面に降り立った。
「おや、皆様お揃いですね」
 温和な雰囲気を湛えて悠舜がそこに集まった面子を眺める。だが彼は最後ではなかった。
「おおっ! よく光って! こら霄! さっそく飲むぞ!」
「待たんかこの体力馬鹿め! こんな光景つまみにしたら腹を壊すぞ!」
 霄太師と宋太傳のふたりも酒を両手に抱えて参入してきた。宋は既に集まった一同を見やってため息をつく。
「見ろ霄。これだけいたら酒が足りないわ。だから樽ごと持ってこようと言ったんだ」
「阿呆。樽ごとでもこの面子では一瞬でなくなるのは同じじゃ」
(この変事をつまみに飲むつもりだったのか……)
 誰もがこの元気なふたりの老人の余裕ぶりに言葉を失っていた。

(つづく)

ようやく最終シーンに登場人物が揃いました。
自分ではわりと妥当なメンバーかと思うのですがいかがでしょう?
しかし、これでも13人もいるのは何故なんだ……。


拍手ありがとうございます!
まだ見捨てないでいてくださると嬉しいです。

H19年12月16日

某提督の命日。……それはもういい。
しかし、魂に刻まれちゃってるからもうどうしようもないの。
彩雲国キャラの誕生日とかわかるんだったら、
やっぱり魂に刻まれると思います。
もちろん、私が知りたいのは影月だけど。

個人主催の小さなドールイベントが本日、神戸でありまして。
出典する友人の手伝いに遠征。
イベントそのものはまったり。
大姫サイズのものがあまりなくってちょっと不満。

ブースでブース主の友人が持ち込んだコミケカタログを横から見せてもらう。
「ほら、このへんが彩雲国」
双花。双花。双花。双花。
やはりこのジャンルの王道は双花なのか。
当たり前だけど、ノーマルだとヒロインは秀麗。
お相手は割りとバラエティ?
彩雲国のあたりをざっと見回しても影香がありません。
でも、実際に行ってみないとどんな本があるかわからない。
……行けるわけありません、こんな年末にさ。
行く人は偉いと思います。がんばって!

お客もいなくなってきたので3時前に撤収。
友人の車に同乗して三宮界隈を目指す。
行きたいお店(人形関係)があり、また昼食抜きだったので食事にありつきたくて。
しかし、三宮に近づくにつれ、車も人も多くなる。
「あれ?なんであんなとこに屋台があるの?お祭り?」
しばし車中で考え込むふたり。
「ああ!ルミナリエ!」
この時期、この場所。
そう、神戸の12月を彩る光の祭典。
ただし、我々ふたりはとことん関心がなかった。
「どこでやるんだろう?」
「さあ?」
そしてもちろん、ルミナリエ見学にまわるつもりはまったくなかった。
危険なので南京町でのご飯は諦めたよ……。

駐車場ももう入れないかと思ったけれど無事、時間はかかったけれど入庫。
目的のドールショップに一目散。
そして何故か、ふたりして食玩におちる。
ああ、「ご褒美ケーキ」はいいなあ。
それよりも、初めて実物を見た「ぷちハウジング」が欲しくてたまらない!
あと、電気がつくと完璧なんだけど。

生地屋に寄ったりもしたあと、目に付いたお店で念願のご飯。
無言でかきこむ。
巨大でほかほかの出し巻き玉子が幸せでした。
食事のあと本屋へ。
しばらく趣味・実用のあたりを眺めていて。
「神戸のケーキの本ないの?」
それ以上の言葉は必要なく、雑誌に確認に走る。
現在地に近い場所をいくつかチェック。
しかし、目的とした店は閉店間際。
ケーキ屋兼ティールーム、7時でしまるなよ……。
もう一軒チェックしていたお店に向かう途中、ぶつかる茶店やらを検討。
「ちょっと……」
「うん、違うよねえ」
ハンドメイドな素朴なケーキも美味しいけれど。
カフェにありがちなケーキだって悪くはないんだけど。
「こう、『いかにもケーキ!』みたいなのがね、いいんだよね」
「そうそう」
ふたりの意見は一致していた。もしかしたら先ほど見た食玩のせいかもしれないが。
結局、マリアージュ・フレールで美味な紅茶とケーキらしいケーキにありつくのだが。
見た目もお味もたいそうよろしゅうございました。


さて、連載は明日に期待(おいっ)

そうして振られた翌日に、途中で力尽きたりもしてます。


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第三十五回

「でも、よくこれだけの人数が集まったものねえ」
 妙に感心した様子の秀麗に悠舜が答える。
「いえ、少ない方だと思いますよ。ここは宮中と言っても内殿のさらに奥、入れる者は限られていますから」
 実際、抜け道を使ったからこそ入り込めた秀麗と龍蓮と大将軍の同行でお咎めなしの静蘭を除けば、いずれも高位のものばかり。言い換えれば確実に秀麗と龍蓮こそが闖入者である。
「だろうな。あの光は昊にも映ってるから宮中の外からでも見えるかもしれん。何が起こってるかやきもきしてる奴も多いだろうよ」
 雷炎はじめ、そこにいた者たちはあえて秀麗と龍蓮がこの場にいることに触れなかった。理由をこじつけることなら可能な二人であったせいもある。
「しかし、この場にいたところで原因は解明しておりません」
 鳴り止まない干將を見下ろして静蘭がつぶやくと、劉輝がその隣に移動する。そうして莫邪を近づけた。元々が夫婦剣といわれるだけあって、二本の剣は揃うとうなりを潜めた。
「あにう……静蘭、ここは専門家に聞くべきだ。というわけで霄太師、説明を頼む」
 劉輝に話を振られた霄は泉のほとりの石に座ってすでに宋と酒盛りを始めている。
「んなもん、できるわけがあるか。こいつは確かに色々知ってるが当てにしたい時に当てにならん男だぞ?」
 答えたのは本人ではなく、宋の方だった。その言われようにさすがに眉間に皺を寄せた霄が文句を言う。
「皆が被害に会わぬよう心を砕いた年寄りに、なんと冷たい」
 泣きまねをしようが、この場で霄を素直に信じられる者は少なかった。

(つづく)

タイムアウト来ました。
またがんばります。

H19年12月17日

「もう12月も後半になろうってのに、連載もほっといて何してんだ!?」

と他人事ながら心配してくださってるかもしれない皆様。
「俺にまかせておけって。大丈夫だから」
と、燕青のように言えればいいのですが、
そこまで大船に乗った気分はお約束できません。
どちらかというと欠便の多い連絡船、はしけのようなものです。
筏じゃないだけいいじゃない?
連絡船と言うからにはそれなりに定期的にお届けすることは
たとえ私の睡眠を削ってでもお約束いたします。
……削らないで済めばもっといいのになあ。

ちなみに、現在進行中の最終パートですが。
「ここがこうなって、あれがああなる」
というのを数日前に決めました。
ですので、私の中ではこの連載は既に終了したような気にちょっとなってたり。
実際に書くのと構想(正しくは私の場合、妄想)は違うのだと、
それは別の話でさんざん経験済みのはずなんですが、
喉元過ぎると熱さを忘れる鳥アタマが全部悪いのかもしれません。

ともかく、今夜はがんばるぞっと、自分を追い込んでみたりもして。
少しずつ上げていきますのでチェックよろしく!


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第三十六回

「宋も好き勝手言いおって。……助言は有効じゃったろう? 儂が異世界の扮装をするように勧めたからこそ、小鬼に襲われんで済んだんじゃから」
 霄はそれでも恨みがましく一同を眺めた。
「それには感謝しておりますぞ。……して、この神泉の様子、霄殿はどのように?」
 羽羽がそのあたりは素直に反応し、更なる見解を求めた。しかし、霄の返事はそっけないものである。
「何か起きるじゃろうなあ」
(そんな事は分かっている)
 その場の誰もが思った。
「ま、大詰めというものが近付いておるんじゃ。ほれ、露払いが来とるぞ」
 武道の達人たちにも、仙洞省の二人にも気配を感じさせることなく、小鬼たちが泉を取り巻いていた。――多い。
「こ、これはどうしたらいのだ!?」
「放っとけばいいんじゃ。攻撃はしてこん」
 狼狽した劉輝を手を振って気軽に老人はあしらう。
「気持ち悪い……かも」
 秀麗はこの時、噂の小鬼を始めて目にした。小さくとも異形である。目ばかり大きくて頭髪はなく、頭上に二本の短い角。それが数えるのも嫌なくらい集まっているのだ。まともな人間なら嫌悪しても当然だった。
「しゅ、秀麗、余の後ろに!」
「……そうさせて」
 ささやかな幸せに劉輝は酔った。秀麗を守れるならばと王の顔はやに崩れる。ただし、背に庇われた秀麗には見えなかったが。もちろん周囲には丸判りである。おかげで小鬼がひしめいていようと、場の空気は若干なごやかなものになった。

 この夜の異変はもちろんまだ終わらない。一旦、泉の瞬きが止まったかとみると三拍ほど置いてぽーん! という音と共に無数の南瓜が泉から吐き出され、宮城のあちこちへと飛んで行った。蘇芳にぶち当たったのはこうして飛ばされた南瓜のひとつだったのだろう。未だしっかりとその時の南瓜を秀麗は抱えていた。
「南瓜にはどういった意味が……?」
 現宰相の悠舜が元宰相の霄へと訊ねる。だがその答えもそっけなかった。
「お約束、と言う奴らしいの。由来までは知らん」
 時々、泉は光をおさめ南瓜を噴出する。その時以外は静かに瞬いているだけ――いや、光は先程よりも強くなっている。そうして神泉から音が響き出してきた。どーん、どーん、とそれは徐々に近付いてきているようだった。
(まるで巨人の足音のような……)
 誰もがそう思い、同時に即刻否定する。それが事実ならばおそろしすぎるではないか。
 一際大きな地響きが辺りを揺るがした。
「――来たぞ、真打ちがな」
 霄の一言を合図にしたかのように泉から強烈な光が射した。目も開けていられぬ閃光に誰もが顔を背ける。それがどのくらい続いたであろう。唐突に光は消え、光のかわりに泉の上空に浮いた巨大な姿があった。
 ――南瓜大王の降臨である。

(つづく)

拍手ありがとうございます!
躍らせていただきます!

H19年12月18日

誰も予想していなかったかもしれませんが。
一挙にスパートかけて連載を完結させました。
全体の見直し、誤字脱字は明日確認いたします。

ということで今夜はがんばったよ?
自分で言うなって(苦笑)


連載まとめページはこちらです。

『君知るや南瓜の国』第二部・第三十七回(最終回)


 ついに現れた南瓜大王には、背後の高楼に匹敵するほど巨大と言うだけでなく辺りを睥睨する威圧感があった。基本的には劉輝と変わらない様相であるにもかかわらず、一目で邪悪と知れる。頭部は南瓜なのだが、劉輝や羽林軍の兵士が漂わせる微笑ましさとは無縁の冷徹さが言葉もなくとも伝わってきた。かつて対面したこともないこの異世界の悪鬼の首領を前に誰の足も舌も凍り付いたのだ。
 いや、それでもただひとりが飄々と劉輝の背中をどやしつけた。
「ほれ!主上の出番ですぞ」
「えっ!余なのか!?」
 いきなり役割を押し付けられた劉輝は霄太師を見下ろしながら驚きを隠せない。
「主上が行かんでどうされますかの」
 どこ吹く風の霄は涼しい顔で決め付ける。
「し、しかし、どうすればいいのだ!?」
「偉そうに踏ん反り返って、去るよう言いなされ。はっきり言えば縄張り争いと同じですな」
「縄張り争い……やってみよう」
 何か劉輝の思考に引っかかったのだろう。国王は一同よりも前へと進み出て、裏返った声を張り上げた。
「そ、そこな異世界からの来訪者よ!」
 南瓜大王は頭をぐるりと回すと、劉輝に視線を固定した。言葉が通じるかどうかも定かではないが言うだけは言わねばならない。
「ぜ、是非ともおとなしく帰って欲しいのだ。こ、この世界の、彩雲国は余のシマなのだ!」
(もっと言いようはないのか……)
 おそらく親分衆との出会いを思い出しての発言であろう。いささか、いやかなり頼りない。それでも劉輝は退かなかった。南瓜大王を見上げる視線は揺るがない。人間としては出来る事が少し多いくらい。兇悪な招かれざる来訪者の前では彼はあまりにも無力にすぎた。腰に履いた剣で打ちかかったとしても、蚊がさしたくらいの効果でさえ期待できるかどうかあやしい。
「こ、この国に余以外の支配者はいらぬのだ!」
 もしもこんなものが彩雲国に居座られたら、一体どういうことになるのか想像もつかない。だがきっと普通の人間に住みやすい国でなくなることだけは確実と思われた。
「ほれ、人事ではないのじゃ。若造ども、主上を応援でもしてやらんか」
 応援と言われても何をしてよいのかがわからない。戸惑う一行の中から一人が進み出る。
「ふっ。それでは私が」
 いきなり龍蓮が笛を構えた。

 ぷぴょーぴょろろんぱぱぺぽぺー。

 龍蓮なりに心をこめた応援だったのかもしれない。だが誰もこの状態で龍蓮の行動が読めなかった。しかも、確実に味方の士気は低下するばかり。その場にいたほとんどの人物の膝から力が抜けた。実際に膝をついた者がいなかったのは、それでも流石の精神力とと言わねばなるまい。

 ぴょろぺぺれってれぴーぱぴゅう。

 しかし止めるだけの力は誰にも残ってはいなかった。龍蓮は調子に乗って吹きまくる。
 劉輝はやはり龍蓮の笛に心への打撃を受けた。しかしこの未曾有の危機に自分が倒れることはできないと気力を振り絞る。音の衝撃に逸らしてしまった視線を南瓜大王に向けて、国王は味方以外の被害に気がついた。泉のほとりに群れていた小鬼たちはただ一匹の例外もなく地面に倒れてもがき苦しんでいる。それだけではない。当の親玉である南瓜大王さえも気のせいでなく小さくなっていた。龍蓮の笛が鳴る度に少しずつ。今や一階の屋根よりも低い。
「藍龍蓮! そのまま笛を続けるのだ!」
 部下たち全てが劉輝が壊れたとこの時に思ったことは後に確認されている。
 心得た、とばかりに笛の音は勢いを増した。これはもう耳と心への暴力でしかなかった。

 ぺぺろんぺぺろんぽっぽぺぴー。

「よ、よいかそなた! わが国にはこのような笛の名手が大勢いるのだ! それでも良いと言うのか!? それとももっと聞かせて欲しいと言うならば、そちらの世界に送りつけるよう手配してもいいのだぞ!」

 ぷらっぱーぴろろぺれれぱー。

 調子はずれというものをとうに超えた次元の音を背景に劉輝はなおも南瓜大王を睨みつけ、音色と共に更に南瓜大王は縮む。人と同じくらいとなり、ついにはこの場で一番小さい仙洞省の二人よりも小さくなった。
 すっかり見下ろす形になった劉輝ではあったが、決して気は抜かなかった。悪夢のような化け物の首領である。例え小さくともその力は変わらないかもしれない。
「どうだ? どうするか決めたら教えて欲しいのだ」

 ぷぴゃぷぱっぴぽーぽーててれー。

 劉輝を後押しするように龍蓮の笛が響く。背後の部下たちの顔からはとうに血の気が引いている。本当のところ、劉輝だってこれは辛い。どさくさに紛れて秀麗に膝枕してもらって気絶できたらどれほど幸せだろう。頭の片隅に浮かぶそんな誘惑と戦う。この国を、人々を守るのは国王である劉輝の役割なのだから。

 輝きを再び泉が取り戻した。南瓜大王の外套が翻り蜘蛛の糸のようなものが吐き出されて小鬼たちに触れていくと、龍蓮の笛に痛手を受けて転がっていた小鬼たちの姿が泉に吸い込まれていった。
 南瓜大王は最後に劉輝と龍蓮に目をやると、ついに一言も発することなく橙色の光に溶け込んでいった。泉の水が膨らむようなうねりを見せ、そうしてすべてが消えた。光も、小鬼も、南瓜大王その人も。
 鐘の音がどこからか聞こえた。あれは古い一日が終わり、新しい一日が始まったことを知らせる鐘。
「お、終わったのか?」
 安堵のあまりついに劉輝は膝をついた。
「――いい加減笛をやめなさい!」
 秀麗の龍蓮への怒声がこの上もなく心地よく感じられる。
「一応、危機は脱しましたのう」
「おい霄、酒がなくなった。お前、飲みすぎだろう」
(待て。あの状態でも飲んでいたのか!?)
 二人の老人がいたのは一同の後方であった上に、南瓜大王だの龍蓮の怪音だのの影響で誰もが注意をしていなかった。どう考えても飲めるような状態ではなかったはずなのに。
「わかったわかった。儂の室で飲みなおすとしよう。羽羽殿もいかがですかな?」
「いえ、私は仙洞省が大変なことになっておりますゆえ」
 もこもこと髪と髭を揺らしながら羽羽はすぐに霄太師の誘いを辞退した。
「ではまたの機会に。それでは皆様、大変楽しい一日でしたな」

 からからと笑いながら朝廷三師の二人はさっさと泉を離れていった。なんとはなしに見送ってしまった人々の胸にも、終わったという実感が沸いて来る。
「なんだか、長い長い一日だったような気がするよ」 
 楸瑛が傍らの絳攸に聞こえるくらいの大きさでつぶやく。
「まったくだ。ずいぶん早くから今日という日が始まっていたような気さえするな」
 異世界の扮装をすることが決まって、吏部ではどこよりも早くその装束着用が義務づけられた。絳攸の感想ももっともであろう。

「リオウ殿も羽羽殿も今日はお疲れ様でした」
 悠舜の労いにリオウは首を振った。
「いや、俺はたいして役に立たなかった。あの爺のように星を読み、あしらえたわけでもない」
「長官はよくやってくださいましたとも! 今日という日を乗り切れたのは長官あってこそです!」
 羽羽の主張に悠舜も乗ってみる。
「そうですとも。今日、リオウ殿が護符を短時間で作り出せるよう指示を出してくださいましたでしょう? おかげであの後、護符を貼った工部と戸部から失われた銀が戻ってきたと報告も受けましたし。感謝しておりますよ」
 護符がなければ宮中どころか彩雲国の経済基盤すら揺るがす事態になっていたかもしれないのだ。
「それに、霄殿は今も昔も特別な方でして。私とて年齢を重ねてまいりましたが少しも追いつくことができませんで」
 羽羽の言葉には憧憬のようなものが含まれていた。その歳になっても叶わない。無能の自分が比較するべき相手ではないのかもしれない。それにやはりあの爺は苦手だと、リオウはなるべく関わらないでいようと心に誓った。

「ともかく戻るか。おい静蘭、さっきの馬鹿どもをひっ捕らえにいかんと」
 雷炎が静蘭の肩に腕をかけて思い出させる。
「忘れるところでした。お嬢様、お早くお戻りくださいね。では私はこれで」
 邪険に雷炎の腕を払いのけて、静蘭は方向を変えた。
「待たんか! さっきもお前ひとりで暴れやがって!」
「あれが暴れるうちに入るものですか」
 静蘭にとっても、ましてや雷炎にとっても物の数に入らない相手ではあった。だがそんなものはただの口実にすぎなかった。
「こら! 若作り! 今夜は徹底的に話し合おうじゃねえか」
「……酒ですか」
「おうよ! 誰が一番の酒豪か今度こそ決めないといけないからな! おい、燿世てめえも参加させてやらんこともねえぞ?」
 無言のまま燿世は雷炎に並ぶ。そうして三名の武人も国王に軽く一礼すると無駄のない動きで立ち去っていった。

「うーん、静蘭も気の毒に。夜通し飲むことになるんじゃないかな」
 わずかばかり同情を湛えた瞳で去り行く武人たちを眺めるだけの楸瑛に絳攸が問う。
「おまえはいかなくてもいいのか?」
「指名されてないから許してもらおう。それに君を送り届けたり、主上をお守りするのも私の役割だからね」
「送られなくともかまわん!」
「でもねえ。ここは宮城の最奥だから、ここにいる人たちとはぐれたら、たぶん数日は誰も通りもしないよ?下手したら一月くらい誰も来なかったりする可能性もあるし」
 想像をめぐらせたらしい絳攸は小さく、
「仕方ない。送られてやる」
 それだけを呟き、楸瑛の含み笑いを誘った。

「藍龍蓮、今宵の働きに感謝する。そなたの、その、応援……がなければ南瓜大王を追い払うことはできなかったであろう。何か望むことがあれば余にできる限りの礼をしたい」
 劉輝は丁寧に頭を下げる。国王に頭を下げられるなどと通常ではありえないこと。しかし龍蓮は平然としたままだ。
「礼はよい。何しろ嬉しい言葉をもらったからな」
「嬉しい言葉?」
 心当たりのない劉輝は少し考え込む。
「私を笛の名手と言ってくれた。なかなか理解を得ることは難しいが、実に耳に心地よい言葉であった。もしも私の笛が聞きたくなったらいつでも言ってくれてよいぞ」
 そう言えば勢いでそんな風に言ってしまったかもしれないと劉輝は青ざめる。しかし一度発した言葉は取り消すこともできない。
「そ、そうだな。聞きたくなったら、ぜひ頼もう」
 そんな日は来ないかもしれない。いやきっと来ないだろう。それでも今夜の功労者は間違いなく藍龍蓮である。劉輝はあえて否定の言葉を封じ込めた。
「ではなかなか楽しい日であった」
 龍蓮は愛用の笛を懐にしまうとふらふらと歩き始めた。
「龍蓮、寝るなら邸に戻るんだよ」
 楸瑛の言葉は聞こえているだろうが素直に従うかどうかまでは誰にも保障はできなかった。

「さてと、私もまだ仕事が残ってるのよね。帰らなきゃ。タンタンも連れて帰らないといけないし」
 ひとつ伸びをして南瓜を抱えた秀麗もまた立ち去ろうとしていた。
「その、秀麗。今夜の余は……やはり情けなかっただろうか」
 結局、南瓜大王が帰ったのは龍蓮のおかげで、自分はたいした役割も果たせなかったことが劉輝の気持ちを暗くしていた。だが秀麗なら。いつだって秀麗は劉輝が本当に欲しい言葉をくれるのだ。
「……ちゃんとね、国を、私たちを守ろうとしてくれたのは伝わったから。あの化け物相手に一歩も引かなかったし。偉かったわよ。ご褒美に、この南瓜で何か作ってまた府庫にでも持っていってあげる。劉輝、南瓜好きでしょう?」
「もちろんなのだ! 秀麗が作ってくれるならばもっと好きなのだ! 秀麗のことはもっと好きなのだ!」
 機会をのがさない劉輝に苦笑いしながら、それでも秀麗は邪険にはしなかった。劉輝ががんばったのは確かだ。自分は南瓜大王を前に声さえ出せなかったのだから。
「はいはい。じゃあ早く仕事終わらせてくるからね」
「秀麗、送って……」
「馬鹿。御史台に国王連れて行くなんてできるはずないでしょ? おやすみなさい」
 劉輝の提案を一蹴して、それでも笑って秀麗は手を振った。
「おやすみ秀麗」
 劉輝も一生懸命に手を振った。秀麗の姿が見えなくなるまで。

「さて、明日も忙しい一日になりますよ」
 悠舜が厳粛な表情で予言した。
「しかし、明日からは新しい月で、それも普通の日のはずなのだが」
 秀麗を見送った劉輝が悠舜に疑問を返す。
「今日という日にまともな仕事をしていた官吏は少ないはず。明日は今日の分も決済に追われることになるでしょう。吏部でも、おそらく黎深がまた仕事をしなくなると予想されていますし。そうそう! 朝一番に宮中に撒き散らされた南瓜を回収しないといけませんねえ。そんなわけで主上、今夜は早くおやすみくださいね」
「悠舜も、ちゃんと休んでくれるな?」
 気遣ってくれる気持ちが嬉しくて、悠舜は軽く一礼した。優しい心を殺伐とした宮城で育ちながら失わなかった使えるべき相手に。
「……そういたしましょう」
 悠舜が車椅子の向きを変えるとリオウが慌てて飛んできた。
「待て。俺が押すから。ああ、羽羽は背中に」
 来た時と同じ形でリオウは奮闘する。ここで手伝うのは簡単だが、リオウの年頃の少年には逆効果かと誰もがあえて名乗り出ない。車椅子の軋む音が徐々に遠くなっていった。


「それでは主上、我々も退散いたしましょう」
「そうだな。こんなところ、いつまでも俺はいたくないぞ」
 楸瑛がそっと提案すると少し震えて絳攸も同意する。秋の日は深まり風が冷たく頬をなでる。『きゅうけつき』の衣装には外套もあるのだが飾り同然の防寒を意識しない作りのもの。文官の彼は今頃になって寒さを実感しはじめていた。
「うむ。楸瑛、絳攸。今夜これから少しでいいから余と酒につきあってくれ。なんだかこのままでは眠れそうな気がしないのだ」
「仕方ありませんね。それではご相伴にあずかりましょうか。絳攸、君もね」
「少しだけだぞ。悠舜殿の言う通り、明日はまた大変な一日になるんだからな」
 そうして国王と側近はゆっくりと劉輝の居室に向かって進み始めた。劉輝は最後にもう一度泉を見やる。今はもうその水面はただ暗く静かだ。まるで最初から何事もなかったかのように。


   終章

「それでだ。結局今日の出来事は何だったんだ。あの南瓜大王とかいう輩がなんでまた現れたりしたんだ?」
 霄の器に宋が酒を注ぐ。なみなみと注がれた液体はすぐに消えてしまう。
「知るか。推測するとすれば異世界とどうやら律でも同調して繋がりでもしたんだろうよ」
 霄にとってはもう終わったこと。自分の知覚の外にあるものなど知ったことではない。
「また同じことが起こる可能性はあるのか」
「ないとは言えん。だが安心しろ。後数十年はまずないだろうからな」
「……そうか」
 もし再び南瓜大王が現れるとしても、その時にはもう宋がそれを見ることはないだろう。どことなくしんみりした酒は明け方まで酌み帰された。

 翌日に回収された南瓜の数は月末に消えた十倍の数があった。当然のように厨房で選ばれるのは前日出されるはずだった南瓜菜。材料があれば南瓜菜は更に続く。
「劉輝、何よ全然食べないじゃない! せっかく作ってきたのに!」
 早朝の府庫で秀麗持参の弁当を広げながら、劉輝は無言でその中身を凝視するばかりだった。
「いやその、秀麗の菜は食べたいのだが、余はここのところ毎日南瓜菜ばっかりで……」
「だってまだたくさん南瓜あるんでしょ? うちも分けてもらって家計が助かってるの。だからうちでも毎日南瓜菜だけど父様も静蘭も文句言わずに食べてくれてるわよ。ほら! 贅沢言ってないで食べなさい! 食べられるだけでもありがたいんだからね!」
 渋々と劉輝は箸を手にした。同じ苦行に耐えているであろう兄を思いながら。

 翌年から宮中ではこの時期、あちこちで南瓜が飾られるようになった。何故か怖ろしげな顔を描いた南瓜が。
 この南瓜には願いがこめられている。もう二度と南瓜大王なんてものが降臨したりしないように。もう変な格好をしなくて済むように。ここにはもうたくさんいるのだから――と。


 君知るや南瓜の国。
 誰も、異形の世界を知らない。もしかしたら星は知っているかもしれない。けれど知らなければそれはそれで幸せなことなのだ。この世には知らなくていいことも確かにある。時折、国王の居室のあたりから怪音が聞こえるようになったことであるとかと同じように。もしも知ることがあったなら、夜の夢ということにしてしまおう。人の身には重すぎる悪夢は目覚めてしまえばはかなく消えていくもの。
 君知るや南瓜の国。
 それは秋の盛り。彩雲国の王城を季節風のように通り過ぎた一夜の、極彩色の悪夢の故郷だから――。

 『君知るや南瓜の国』 (完)



本人も予想もしなかった二ヶ月にもわたる連載にお付き合いいただきましてありがとうございました。
しかもいきあたりばったりに毎日書くだなんて、何度やめときゃよかったと思ったことでしょう。
本人的にもかなりプレッシャーになっておりまして、よっぽど封印しようかとも。
でも、連載ってのは完結してこそ意味があると思います。
ええ、今なら心からそう言えますとも!

そうして、いきあたりばったりの危険さを身を持って体験いたしました。
ラストに来るのが「劉輝、南瓜」としか考えていなかったくらいでした。
一寸先は闇。
闇を照らす光がやっぱり欲しい。せめて道標が。

とか言いつつ、曖昧な点をまだまだ含む影香のクリスマス話に邁進したいと思います。
懲りてないかもしれません。

連載は初書きキャラのオンパレードで、主に記憶に頼って書いていたので修正が怖い。
でも、色々なキャラが出せて楽しかったです。
もうこんなに大勢を書くことはたぶんないと思われますし、
今後一切書くことのないキャラだっていると思います。
魅力的な原作キャラたちに感謝。
愛してるよ、みんな。
……影香はじめとする琥lメンバーの次に(苦笑)

連載に関して感想などいただけましたら幸せです。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。


拍手ありがとうございます!
連載も無理矢理(?)終了できたのは押してくださった方のおかげもあったと間違いなく思っています。
次は念願の影香。
クリスマスに間に合うかどうか、またもやスリルとサスペンスな日々が幕開けエンドレス。
どうぞおつきあい願えますように。

H19年12月19日

昨日というか明け方までがんばったせいか。
そして寝たと思ったら電話に叩き起こされたせいか、
本日眠くてたまりません。
連載の第二部をまとめて、誤字脱字チェック(ボロボロあるよ、もう)をしながら、
途中でうつらううつら。
とりあえず眠気覚まし兼身体を温めるため、しょうが湯を起用。
しょうが湯は好きです。夏のひやしあめも好き。そしてジンジャーエールも好き。
単なる生姜好きかもしれません。

それで思い出しましたが誤解を生んでいる(既に)かもしれないので一言。
私、格別に南瓜が好きなわけではありません。
煮付けもお菓子も。食べれば美味しいと思います。
しかしその隣に他の辛めのおかずであるとか、チョコ系やらブリュレやらのお菓子があると
迷わずそちらにまいります。其の程度です。
子供の頃はもっと好きだったんだけどなー。

連載の見なおしですが、とりあえず誤字脱字はましになったはず。
口調などの訂正はおいおいしていきます。
いつまでも関わっていたら影香に本格的に響きますから。
しかし、第一部と第二部の合計出したら原稿用紙換算で280枚、約9万字でした。
どうせなら300枚超えるとかしたかったかも?
本気で加筆したら20枚分くらいなら増やせるとは思いますが。
何しろ、いくらでも会話続くんだもん、手綱取らないと。

影香のクリスマス話は仮題を『霜夜の鐘声』(そうやのしょうせい)。
基本、去年書いた『約束の小枝』の設定を踏襲しています。
……って、まだ5行くらいしか書いてないけど(苦笑)
今日はすすめられないのです。
構想ノート、会社に忘れてきてしまったので。
あ、ロッカーの中なので人に見られる心配はありません。


拍手ありがとうございます!
これは連載への労いととっていいかな?いいですよね!
さあ次もがんばるぞっと。

>16時台に拍手コメントくださった方
すごく報われました。またそう思っていただけるようがんばります。
ありがとうございました!

>22時台に拍手コメントくださった方
どの言葉にもすべて「ありがとう」と言わせていただきます。
また楽しんでいただけるようなものが書きたいと思います。
ありがとうございました!

H19年12月20日

連載の後遺症を引きずりつつ、影香を……
影香には違いない。
けれど、それは禁断の現代パラレルじゃないかっ!

影月くん中学3年受験生の冬。
香鈴からクリスマスプレゼントに貰ったのは
出入りの外商が持ってきた高級ブランドのカシミアのマフラー。
ちなみに香鈴は小遣いから購入。
値段も知らずに愛用する影月。

お正月。
ふたりで初詣。もちろん影月の合格祈願。
カジュアルな影月(マフラー付き)と振袖の香鈴。
はぐれないよう手を繋いでいるのをクラスメイトに目撃されたり。
こっそり影月合格の絵馬を奉納する香鈴。
かわいい小さなお守りを見つけて香鈴の手に乗せる影月。

はい、おわかりでしょうか。
何故現代パラレル妄想が禁断なのか。
それは、その時ふたりが着ているものまでいちいち細かく想定してしまうから。
なので短いシーンのはずでも考えてる時間が異様に長い。
例えば、上記のプレゼントのマフラー。
色は何色なのか。
グレイッシュ・グリーンが有力候補。ただし明度の高いの。無地。
あ、でも影月ならチェックも似合う。
チェックならベージュ地にブルーとグレイの……
といった感じで、いつまでもあれこれ考える。
ええ。
香鈴の振袖のことなんか終わりません(苦笑)
あと、何を食べるかとかももちろんきっちりと。
さて、妄想を振りきって、彩雲国のクリスマスを進めなければね?


連載も終わってハロウィンからようやく解放されたので
目次ページをクリスマス風に。
あと、使いたかった影香アイコンをぺたぺた。
キャラアイコンって好きなんですが、使いどころに悩みます。
やっぱりトップか目次。
でもうち、トップはいじる気ないので結局目次に。
新規のキャラアイコンは『(仮)かっこかり』様よりお借りしました。
まさか影香アイコンがあろうとはっ!(感涙)
これは気合を入れてクリスマス話を……明日から書こう。
今夜は連載第一部の誤字脱字チェックだけで目がアウトです。
うん?
素材サイト様でクリスマス素材を凝視していたせいだなんてそんな……(汗)
さあ、明日がんばるぞ。


拍手ありがとうございます。
連載はお気に召していただけましたか?
それともクリスマス話への期待?
両方にうけとらせていただきます。
ありがとうございました!

H19年12月21日

クリスマス話を書くために、まず去年書いた『約束の小枝』を読み返す。
……かなりの確率で、私はこの話を読み返すと眠くなる。理由は不明。
そこで、がーがーと印刷。
うちのプリンター、半分の確率で紙に皺寄せるのはやめて欲しい……。

ああ、小説作法を守りたいというのと、文字フォントを小さくしているので、
話が長くなればなるほど読みにくいと思うので(変えるつもりはない)
個人で楽しむ場合に限り、うちの話はプリントアウトしていただいてかまいません。
そのあたりの報告も無用。
ただし、あくまで個人ひとりのこと。
誰かに見られたり見せたりの危険のないようお願いします。

で、プリントアウトして。
あああああああ読点へらしたいーっ!
この日記の文章のように、本来の私の書き方だと読点が非常に多いのです。
最近は意識して減らしているのですが、
だいぶ書きなれたはずの『約束の小枝』でさえもまだこんなに多い。
それ以前のものの読み返しは正直怖いですね。
気力があれば過去作にも手を入れたいとこですが。
で、正直なところ、
自分でも『約束の小枝』は「ここで終わり!?」って思うので、
読まれる方は
『櫂瑜様にはかないません』『夢のつづき』『魔法がとけたそのあとも』
フルコースをおすすめいたします。


私のいくらかはチョコレートでできてるんじゃないかと思います。
年中、チョコは手放せません。
真夏のチョコベビービッグは悲しかった。
溶けて容器に張り付いてとれなくなったんだもん。
暑いからね、夏の我が家は。
もちろん新作目白押しの冬ともなれば「新発売」の文字に躍らされるわけです。
そんなわけで、ただいまのお供はLOTTEのV.I.Pミルク。
夕べ買ってきたMeijiのMelty Kiss3味入りカップがもう空なのはどうしてなんだ。

というわけで、チョコレートを傍らにクリスマス話を進めてみる。
あれ?
完全に香鈴視点のはずだったのに、ナチュラルに影月視点になってるよ。
『約束の小枝』を読み返したせいかな?
まあ、もう少ししたら交代せざるを得ないけど。
だいたいの流れは決めてあるものの、長さはさっぱり不明です。
もしかしたら案外短くまとまるかもしれません。
『約束の小枝』よりも短いのではないかと予測はしていますが、
どのみち書きあがるまではわからないんだし。
目標。クリスマスまでに書き上げる。
次点目標。本年中に書き上げる。
……今から逃げ道作ってどうするんだと自分でも思いますので、
ぎりぎりまで粘ります。

ではまたのちほど。


夕食のあと、コタツでころりん。
極楽です。
ただし、目覚めたのが7時間後ってのは色々色々問題だと思います。
今日はクリスマス話強化日だったのに!
7時間あったら、ネットしたり遊んだりしながらでもちょっとは進められたはずなのに!
ともかくぎりぎりまで格闘してきます。
念願の影香だろ?何やってんだ自分……


拍手ありがとうございます!
ひさしぶりに10連打いただきました。ひゃっほー♪
一押しも連打も励みです。大好きです。

>14時台に拍手コメントくださった方

了解です!みててください!
ありがとうございます!

H19年12月22日

「まずったな……」
というのが正直な感想。
クリスマス話の書いていない部分の構想を練っていて。
どうしても避けられない点が出てきました。
ある話を書いてないせいで、「何で?」と思われるかもしれない設定があるんです。
どうしても避けられないんです。
もちろん作中で軽く説明は入れるつもりですが。
だからさっさと書いておけばよかったんだよ、自分。
でも今から書いてたらクリスマス話は間に合う可能性すらなくなってしまいます。
だから。
そういうシーンが出てきたら、流してください。
たぶん来年の早いうちに書けるんじゃないかな……(弱気)

クリスマス話は香鈴ががんばる話の予定です。
で、甘く仕上げるにはどうしたらいいかを日々悩み中。
いや、シチュエーションを整えたら影月ならどうにかしてくれるだろう!と。
それにきっと櫂瑜様も
「女性の期待を裏切ってはいけませんよ」
とか影月には教えてるはず。
……影月、女性は香鈴だけじゃないって、知ってるかな?
知識としては知っていても、実際には他の女性は「個人」としては見ても
「女性」として捕らえてない気がする。
いや、そこがいいんだけど。
なので、書く私の期待ではなく、当の香鈴の期待を裏切らないようがんばってくれたまへ。
頼んだぞ影月!
はい。がんばってシチュエーション整えますんで。
さて今日もぎりぎりまで書いてみます。
まだ最初の方、しかも思いつくままで文章にもなっていないような書き方なんで
未ださっぱり全体の見通しがつきません。
せめて長いか短いかくらいわかれば。
……わかったからと言って、書くのが楽になるわけではありませんし、
長かろうが短かろうが苦労するのは同じなんですけどね。


拍手ありがとうございます!
クリスマス話を進めるためのエネルギーに変換させていただきます!

H19年12月23日

これを書いている時点で本当は日付けも変わって24日です。
仕方ないじゃないか。帰宅したらもう午前様なんだもん。
そして24日はクリスマスではなく、イヴすなわち前夜。
そうして25日こそクリスマス当日なんです!
……といったところで限りなく見通しは暗い。
もちろん今夜はがんばる。
しかし今夜に完成するわけがない。
で、明日(24日)は宗教活動に従事せねばならない身なので、帰宅は丑三つ時。
そして25日は大残業。やはり帰宅は午前様。
こんな私にいつクリスマス話を書く時間がありますか。
教えて神様プリーズ!

クリスマス話の進行状況は、進んではいます。
自分としちゃ穴だらけだが割りと真面目に取り組んでもいる。
でもまだ1/3程度。
今夜、穴だらけだろうがなんだろうが流れをできるだけ最後に近づける予定。
とか書いてる午前2時。
すみません、お風呂が私を呼んでいるの。
でも色々持ち込んで進めてみるから!

正直に告白します。
わたし的なクリスマス話の完結見積もりですが。
早くて26日夜と出ました。ちーん。
だって、26日にようやくお休みなんだもん!
世間が連休でも連続勤務なんだもん!
努力はする。でも努力だけではどうしようもないこと(=時間がない)も確かにあるんだ。
影月。
私も、お金も時間もないよ(苦笑)
とりあえず今夜の目標は風呂で寝ない。
……それは違うだろ! とツッコむあなたの感覚は正しい。

ちなみに。
クリスマス話をアップするまでうち、クリスマス仕様のままなんで。
だって、ハロウィンって終わったのこの間じゃないかー。
あ、皆様、冬至には南瓜を食べないといけませんね。
……冬至、いつ終わったんだ。
仕事で毎日バタバタしてたら日の感覚ありません。
あれ?イヴ明日じゃん。
……。
明日が24日なのは理解してるんだ。
でも何か切れてる気がするんだ。
ケーキは25日の売れ残りじゃだめかなあ。

見苦しい言い訳の数々、お目汚し。
でもね、影香だから書いてるのは幸せなんだ。


拍手ありがとうございます!
今夜書くための気力を充電です!

拍手記名コメントに反転レス

>梅様。

なんとか完結できました!
実は連載中、けっこう南瓜のお菓子を食べてました。
プリンだのクレープだのシュークリームだのパイだの。
……食べすぎです。
きっと南瓜が南瓜を呼んだのでしょう。
連載中は局地的ハロウィン続行指定地域となっておりましたから
やはり食べ物は南瓜推奨です?
少しでもお楽しみいただけたなら幸せです。
ありがとうございました!

H19年12月24日

仕事が終わってロッカーで同趣味(人形)の先輩と久々に顔を合わす。
高瀬 「クリスマスの(人形の)撮影ができなくてー」
先輩 「クリスマスより問題は新年よ。新しい晴れ着(人形用着物。それぞれいつも自分で縫っている)がなかったら許されないでしょう(=出来てない)」
高瀬 「許されない……でしょうねえ。新年まで一ヶ月くらいあればいいんですが」
先輩 「……いいことに気が付いたわ。旧正月にすればいいのよね」
先輩はそう呟いて去っていきました。

その台詞に「いいかも」と同意した私。
いやもういっそ、想月楼では旧暦で日時の換算をするということに!
つまり、実は本当のクリスマスは一ヵ月後だったんだ!
……だめ?それじゃだめ?
まだハロウィン終わって1週間もたってないよ。
ああ、つまりまだ11月中旬だったんだね!
……それもだめ?

クリスマス話、書いてないことはないんです。
ちょこちょこでも書いてます。
ただ進行速度が気に食わないだけ。


拍手ありがとうございます!
なえうべこお待たせしない方法でいきたいと思ってlます。

あ、限界……

H19年12月25日

ああ、恐れていたことが実現してしまいました。
先ほど帰宅して、無言で食事をし、ようやくPCに向き合った26日午前1時半。
……50000HITありがとうございます。
たどりつく前にクリスマス話をアップしたかったのにー、にー、にーっ!
ごめんなさい。ごめんなさい。

夕べ、日記の途中でうたた寝してしまったんですが。
あまりにも眠すぎてそのまま沈没したんですが。
先ほど昨日の日記に目を通してあまりのひどい打ち間違いに。
「面白いからこれはこれで置いておこう」
シラフじゃこんな間違いは無理だ(苦笑)

ところで、いくらかは書きましたが今日はもうアウトのようです。
すみませんおやすみなさい。
明日に期待ー。

H19年12月26日

待望のお休み。
ともかく8時間は寝た。でもまだ眠いんだ。
避けられない用事のため銀行へ。
普段ならここであれやこれやと買い物したりして帰宅は数時間後になる私ですが。
今日は違った。
ええ。
ふたばの豆もちGETしてきただけ!
やっぱりコンビニの和菓子と味が違う。
そうして舌と胃が満たされた私は、またも睡魔と闘うのでした。

以下続行。

えー、やっぱりPC前で意識を失いました。やはり寝たりなかったのか。
夕食後にも船を漕いでしまいましたし。
肝心のお話ですが、進んでるっちゃー進んでます。
しかし今書いてる部分が影香色が薄いんでちょっと書いては飽きる、を繰り返していたり。
ここを乗り越えたら影香なんだと自分に言い聞かせてみてもすぐ飽きる。
うん。
やはり本年中アップに目標切り替えです。
ちなみにこの間までの連載と違って構成はもっとしっかりしてるし方向性も定まってる。
ただし、ラストの章に関してはそこまで行ってから流れにまかせようというハラ。
だって全部がちがちに決めてしまったら自分が楽しくないから。
それでもおまけの構想もあるんでなるべく早く仕上げたいのは本当なんだ。
叱咤激励歓迎。
とりあえず今夜は自分で叱って持ち上げてもう少し進めようと思う。
懸案の脇役キャラの「ないと不便」程度のキャラの名前も決めたことだし。


そんなわけで、街はあっさりとクリスマス色を脱ぎ捨ててて物足りないけれど、
自分の中ではクリスマス真っ盛り。
やっぱり気分は盛り上げて一気にいきたいし。

ところでクリスマス時期によく流れる曲にワム!の「Last Christmas」があるけど、
英語力、ヒアリング能力のまったくない私は鼻歌を歌う程度。
今年、有線で流れるのを耳にしたら単語を聞き取れたような気がした。
そこで正解かどうかを確認しに歌詞を検索。
ヒアリングは間違ってました(苦笑)
で、もちろん翻訳能力にも欠けるのですが、原詩を見て
「これ、幸せなクリスマスの歌じゃなかったんだ……」
そりゃ「ラスト」なんだから当然だろう自分。
で、訳が知りたくなって翻訳してある歌詞も眺めてみた。
……意味、よくわかんない。
振られた相手を思い続けてる詩だとは思う。
しかし、相手に未練たらたらなのか、吹っ切って新しい相手を探すのか
今ひとつ理解できない。
じっと考えていたら、振られた当人に問題はなかったのだろうかとか
いらないことまで想像する始末。
たぶんサビを繰り返すからよく意味が通らないんだと思うんだけどね。
とりあえず、幼少時より刷り込まれた聖歌のたぐいを歌って乗り切ったほうがいいのだろう。
アンハッピーエンドの曲だったら今書いてる話には合わないし。
もっとも、聖歌が合うかと言われたらやっぱり合わないんだけど(苦笑)
でも個人的に「ハレルヤ!」って歌ってても許されると思うんだ。
影香欠乏症、長かったからねえ。
うん、完成して心から早く「ハレルヤ!」って歌いたいね。


拍手ありがとうございます!
期待拍手として受け取らせていただきます。
だから。もう少しお待ちいただけると嬉しいです。

H19年12月27日

眼精疲労がきつくてどうにもなりません。
養潤水(目薬)さして今晩は落ちます。
ごめんなさい……。

H19年12月28日

昨日は結局、きちんと夜間に8時間眠るという快挙をなしとげました。
たまたま27日が早番、28日が超遅番だったからこそできた時間です。
普通に人が眠る時間に寝てることはあまりないので
罪悪感すらありました。
文字を読むどころかPC画面すら見られない状態で何言ってるんだか。

で、本日は眼精疲労はないんですが、
ネットにまったく繋がりません。
繋がったと思ってもすぐに切れます。
「そうか!今日も早く(この時点で3時)寝ろってことだね!」
……その解釈はどうかとも思いますが、
本日は禁断の影香現代妄想にとり憑かれているので
どのみち使い物にならない私の脳でした。
明日の休み(年内最後)にすべてをかけるぜ!

H19年12月29日

年内最後の休日。
うん、あとは大晦日まで連続勤務。
元旦だけ休んでまた2日から働きます。
そんなわけで、年賀状の用意はありません。
運が良ければ松の内に返事が出せるかもとか思うのですが。
学生時代の1枚に1日かけたりした頃が懐かしい。
無駄にエネルギー余ってたよな……。

学生はとうに冬休み。
社会人の方もぼちぼち仕事おさめかと。
そうして有明での3日間かけての祭典が幕開いてたりするわけですね。
彩雲国は2日目になるのかな。明日?
サークル参加される方、形になった萌えが溢れる本が見られず残念ですが、
お疲れ様です。晴れ舞台がすばらしい時間になりますように。
一般入場される方にもよい出会いがありますように。
彩雲国ジャンルレポートも歓迎いたします。

昼起床の本日は2日ほどできなかったネット巡回から始まります。
たまると大変……。

で、肝心のクリスマス話ですが。
タイトルは仮題のまま『霜夜の鐘音』(そうやのしょうせい)。
影月→香鈴→第三者視点→影月視点となります。
なんとか流れだけを最後までもって行きました。
これから飛ばしたところの穴埋め作業です。
でもって、ラストの大幅加筆が待っています。
今夜中は……無理。
ちなみに年齢制限はありません。
なくてものた打ち回れるくらいのものが目標。
ふうっ。
目指す山は高いわね。

それではまた後ほど。


今日中というだけでなく、本年中の完成も微妙な感じです。
思いつかなかったり面倒だったところの穴埋めですから、当然楽しくさくさく書けるわけもなく。
たださすがに長さの予想はついたり。
去年の『約束の小枝』に少し足りないくらいかと思います。
で、あっちの穴を少し埋め、こっちの穴を少し埋め。
集中力が全然足りないんですけどー?
でも少しずつでも埋めていけば確実に穴はなくなるわけで。
だから穴埋め自体は心配してないんです。時間かかるとしても。
問題は甘さが足りないこと。
駄目だ、こんなもんじゃ駄目だ。
私が読み手だったら納得しない。
書き手でも納得してないけど。
スウィート甘々にするにはどうしたらいいんだろう。
とりあえずこの話では活躍の機会の少なかった影月だから最後はしっかりと締めてもらわないとね。
そう。
今年最後の大盤振る舞いを目指すんだ!
歳末大セールだ!
ロマンティック増量!糖度アップ!
目指せダイエットの星!
……あれ?

とりあえずプリントアウトして通勤などの時間に(起きてたら)進めたいと思います。


拍手ありがとうございます!
あまーい話をお届けできるようがんばります!

H19年12月30日

年末も押し迫った本日に起こったノンフィクションでございます。

わたくしは本日は早番。
「今日は残業なしで帰っていいよ」
と言われ嬉々として挨拶をしてさっさと職場を辞しました。
時刻は午後7時前。
会社は制服なので着替えないといけません。
さて。ロッカーに行く途中に休憩室がありまして。
仕事が終わったらとりあえずそこで一服するのが常でございます。
本日もそのつもりの私、友人からのメールに返信しつつ休憩室に向かいます。

ところで休憩室の手前1メートルくらいのところにゆるく短い傾斜がありまして。
ずるっ。
傾斜には滑り止めが施されているにもかかわらず、わたくしは勢いよく滑ったのでした。
そうしてしたたかに強打いたしました。
……臀部を。尾てい骨のあたりを。

休憩室の前ということは当然行きかう人も多く。
「大丈夫ですか?」
ご心配ありがとうございます。言葉にならないまま苦笑いで答える。
でも見守っていただかなくても結構です。
どうか、そっとしておいて欲しいの。
というか、さっさと立ち去ってください、お願いします。
そんな私の心の叫びはあまり通じませんでした。
うちの会社って善人が多いんだ。
しかし、何より当人が恥ずかしいんだよ!
普通だったら、転んでも恥ずかしさが痛さに勝って、そそくさと立ち去る私なのですが。
見事な強打でございまして、痛みにすぐには動けませんでした。
動けるようになってよろよろと休憩室に逃げ込み、しばし安静。
痛みを紛らわせるためにも、返信相手の友人にリアルタイムレポートを送ったりして。

もう大丈夫かと立ち上がった途端に走る痛み。
(こりゃだめだ)
痛いけれども歩くことには問題ありません。よろめいてるけど。
着替えを後回しに薬局に走る(気持ちは)ことに決定。
幸い、薬局は遠くありません。
「シップくださいー」
「肩こりですか?」
「いえ、打ち身です」
「どこですか?」
「お尻です」
「……」
絶対、ここであった沈黙は笑いを含むものであったと思う。
ええ。打ったのが腰だったらもっと大事になってたと思うの。
場所が場所だけに笑いを誘うのは仕方ないと思う。
問題は。
笑えるけどそれでも痛いってこと。
痛みも取ってくれるというシップを購入してから着替えがてらぺたり。
ああ、今更蒙古班ができたらどうしよう。
一応、飲み薬の痛み止めのサンプルももらったけど、
それはいざという時のためにとっておくことにして。

シップは偉大だった。
完全に痛みは取れないけれどマシにはなったので
予定していた買い物に出かける。
……まっすぐ帰ればいいのにね。
目当てのものはまずまず買えて。
いつもは通らないショッピングビルを歩く。
――今、私の目に入ったのは、何?
思わず足を止めたのは、これまでプラチナメインだからと覗くこともしなかったアクセサリーの店。
そのウィンドウに、輝く月のペンダント。
(プラチナ?いや、この値段だとシルバーだな。こっちはホワイトゴールドか)
素早く品定めをする。
銀色のアクセはあまり似合わない上にプラチナアレルギーのわたくし。
(惜しい。惜しいけどなー)
大振りすぎるアクセももうひとつ好みでない。
しかし、いくつかの月モチーフ郡の中で目に留まったのが比較的小振りのピアス。
(サイズよし、値段よし。しかし銀じゃあなー)
そこにショップのおねえさん登場。駄目もとで聞いてみる。
「このピアス、金色のあります?」
ないだろうと思ってたんだよ。しかし答えは
「ありますよー」
とにこやかに商品を出されてしまった。
こうなると後には引けない。
いや、月アイテムを前にして引く気はない。
素材を聞いたら銀にK18メッキ。
鉛やら錫系はやっぱりアレルギーで駄目なんだけど、
私、金と銀だけは大丈夫なのよね。
その鉄壁の組み合わせ。
もちろん、躊躇わずに購入いたしましたとさ。
いや、ちょっと厄除けになればな、と。
きっとしばらく私の耳を飾っていることでしょう。


そんなわけで。
実は座ってるのも痛いので、本日のクリスマス話の続きを書くのは絶望的となりました。
ちなみに、空気椅子状態でここまで書いた(笑)
ええと。
お年玉、福袋、年明けセール。
なんかそんなものを目指すことにしたいと思います。
……天災(?)なんだ、大目に見てくださいませ。
さて、明日には痛みが引いてるといいな。


拍手ありがとうございます!
またも遅れてはしまうんですが、今日思いついたシチュエーションも加えて
甘々増量を読んでいただけるようがんばります!

H19年12月31日

ついに大晦日でございます。
普通なら、大掃除したり、家族で紅白見たり、カウントダウンに出かけたり、
早めの初詣に出発したりと、まあ色々でしょう。
コミケの3日目を堪能した人もいらっしゃるかも。
出勤、らららー。残業、らららー。
素晴らしきかな人生(ちょっとヤケ)

夕べは日記書いて、すぐPCの電源を落とし、
眠る前に取り出したとっておき。
曼殊院で先月GETした
「厄除開運 祈祷済 滋養 しょうが湯(天然カルシウム入)」
をいただきましたとさ。
身体を中から温めつつぐっすり眠って。
えーと、随分痛みはマシになりました。
早めのシップが良かったのかも。
でもまだ走るのは無理なんだー。

地元の駅についたならば、冷たい風と、それにのっていい匂い。
つい、ふらふらと年越しそば(にしんそば)をいただいてしまいました。
一杯1200円は結構高いと思う(さすがに少し悩んだ)んだけど、匂いに負けたのさ。
うちの近所は有名観光地なもので、
深夜近くだというのにさすが大晦日。かなりの人出。
巻き込まれないよう裏通りを通って帰ってきました。
紅白の結果が出るところでした。
もう何年、まともに紅白見てないだろう……。

帰宅したならさっそく、明日のお出かけ準備です。
お出かけ前はたいてい「ないないの神様」との戦いです。
自分の着物はさくっと決めて問題なし。
いつもペアで見つからない足袋も、新しいの買ってきたし。
大変なのは人形姫の方です。
唯一袖を通させていない着物(先月製作)を着せたらあまりにも地味で。
他の時ならばいいのですがお正月対応では淋しいので
せめても……と帯を新しく作るはめに。
ええ、たった今まで(苦笑)
すべての力を使い果たした気もいたしますし
今夜はきっぱり色々あきらめたいと思います。


今年、想月楼にお越しいただいた皆様、
ご縁ができて大変幸せでした。
結構いい加減な管理人ですが、どうぞ来年もよろしくお願いいたします。
それでは皆様よいお年を。


拍手ありがとうございます!
更新期待、お見舞い、激励?叱咤?あいさつ?
何でも好きなように解釈させていただいてます。
どうぞ来年もおつきあい願えますように。

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